【FGO】第五の聖杯 イ・プルーリバス・ウナム【第十一節 ザ・ロック】
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1783年。アメリカ。
独立戦争の終戦年。
当時、イギリス本国とアメリカ植民地との長い戦争が続いた。
この戦争を経て、元々数多の植民地でしかなかったこの国は、アメリカとして独立することに成功する。
魔術的な神秘は西洋に比べて少ないが、現実世界の基盤としてアメリカ無くしては人類史は成立しない。
また、先住民族による呪術、霊術は独自に発展しており、今なおその文化を残す地域も存在する。
歴史的大国アメリカ。
これは、時代の変革における、異質な戦いの序幕に過ぎない。
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・前回まで
ラーマの怪我を治すために、ラーマと所縁の深い英霊であるシータを探す事になった一行。
シータ姫はアルカトラズ島に幽閉されているとの情報から一行は、暗殺計画を立てたジェロニモ達と別行動で、シータ奪還のためアルカトラズ島に向かった。
アルカトラズ島は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンフランシスコ湾内に浮かぶ小島である。
軍事要塞、軍事監獄、そして1963年まで連邦刑務所として使用され、脱獄不可能の監獄、ザ・ロック、監獄島とも呼ばれている。
今、肌の心配をしている場合じゃないが言ったら殺されそうなので黙っておく。
趣味だったのね。
一方、島内ではマシュ達の動きをいち早く察知していた。
看守の指揮を取っているのは、アメリカ側のバーサーカーのサーヴァントだった。
島内にいる竜種に呼びかける。竜たちは呼び声に反応して、雄叫びを上げた。
監獄の中で一人の少女が天を見上げた。
少なくとも執刀許可権を持っている人は、この時代にはいないと思う。
先に行った暴走看護士を追って、一行は島へ上陸した。
戦闘が続く中、一番傷ついているのはクー・フーリンによって深い傷を負ったラーマだが、その次に深手を負っていたのはナイチンゲールだった。
バーサーカークラスである彼女は、その狂化により、自身へのダメージを顧みるような事はしない。
他人の傷を誰よりも労るのに、自分への傷は「治療のための代償」として受け入れている。
彼女はただ治すことそれだけのために全てを犠牲にしていた。
それは誰にも譲らない彼女の信念のカタチだった。
雑木林を抜けていよいよ獄門を前にする。そこには、多数の竜種と巨躯のサーヴァントが待ち構えていた。
剣を手にしているが彼は間違いなくバーサーカーだ。全身から放たれた殺気と視線がそれを物語っていた。
男の名はベオウルフ。その別名を「ベルセルク(Berserk)」と書き、バーサーカーの語源にもなった古い叙事詩の英雄である。
男は試すように言い放った。戦いたくてしょうがない、そんな感情が言葉の節々からあふれていた。
竜種と揃って、ベオウルフの激しい猛攻をなんとか凌いだものの、決め手に攻めあぐねている状態で突破口を見いだせなかった。
ナイチンゲールは体の隅々が出血していた。常人ならとっくに出血多量で意識を失っているだろう。
突然、ラーマが繰り出したのは、天下を切断する「羅刹の王ラーヴァナ」を打ち破った光輪の剣。
それは、ベオウルフにとっては不意打ちに等しい攻撃だった。
ベオウルフは、全身の血筋が浮かび上がらせて言った。
満身創痍のラーマは、背後に膝をついたナイチンゲールを抱え、その剣を振るった。
ベオウルフも先の戦闘で消耗していたのか、戦いはそこまで長続きしなかった。
そういうとベオウルフは、監獄の扉を開いた。罠、という可能性もあるが、すっきりした顔で立ち去った彼の言っている事には真実味があった。
何段も下っていく石階段を辿り、一番奥の監獄に彼女はいた。
シータの声を聞いた途端ラーマは視界を奪われ、体力の限界に達した。
倒れたラーマに寄り添い、シータは彼の体に触れた。
!?
心底辛そうな顔でシータは言った。
それはなんていうか――――。
シータは誇らしげにそう言った。にこりと微笑んでさえいた。
そんなシータの気持ちを汲みとったのか、ナイチンゲールも優しい笑みを浮かべ、それを促した。
声が聞こえた。
最愛の人が遠くで呼んでいる。
死後の世界、英雄の座においても二人は交わらない。それがラーマの呪い。
ラーマが目を覚ますとそこにいたシータの姿は既に無かった。
想いを新たに。
犠牲の上で治療するそのカタチは過酷で、辛いものだが、ラーマーヤナの伝説は確かにここに蘇った。
・・・長い。