タッグフォース日誌その34.5
何度目かの夜。
思えば初めてあったWTGPのセレモニーで気にはなっていた。
その容姿で
その身のこなしで
なんでそんな寂しそうに歩くのか。
彼女は強い。
だがそれは勝負の話。辛い人生を歩んだからといって誰しも強い人間になるわけではない。
孤独、それが彼女の弱さ。
自由でありながら自分の人生を縛り、気高くありながら誰も寄せ付けない。
そんな彼女になぜ俺は付き合っているのか。
単に美人の誘いだったから?スリルを求めていたから?タッグパートナーが欲しかっただけ?
恐らくそのどれどもなくて、それ全部なのだろう。
セキュリティに侵入した後、彼女の後を追ったが結局追いつけなかった。マンションも失った彼女には安らかに眠れる場所なんてないはずだ。それが心配で気が気じゃない。
それとも、俺のことなんかさっさと忘れて、新しいパートナーと一緒にまたイリアステルを追っているのかもしれない。
ミゾグチという頼りになる知り合いもいると前に彼女から聞いた。
街の危機とか、そんなもの自分には関係ない。ましてこれはシェリーの問題だ。彼女の両親のカタキは何も俺がとることはない。ここがいい引き際だったのだろう。それを彼女の優しさと勘違いして眠る。
結局、くまのぬいぐるみは、ここに。
その夜、街のほうからとてつもない衝撃と音がした。