亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第十二節 第四歌 黒縄衆合地獄(急)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
突然目の前に大蛇が現れて
自分はその一撃をもろに受けてそのまま山から・・・・。
なんで、ここに・・・。しかもわざわざ焚き火を起こして・・・。
確かに、この状況は、彼女に介抱されている。のだろうか。
・・・・・・遠慮しておきます。
どうして、敵を介抱するようなことを?
気まぐれ・・・。
おぬいちゃんと田助は、無事なのか?
あ、よく見ると足首に包帯が巻いてある。包帯というか、彼女の着物の・・・布?
・・・・・・・・・ありがとう。
真意はわからないけど、今浮かべたその笑顔は、自分が知ってるカルデアの酒天童子と同じ笑顔だ。
それは、あと少ししたら食べるって意味?
人質を取るような人達が、約束を守ると言われても、その・・・・。
え?
か弱い?酒呑が?
・・・なるほど。どっちもろくでもなさそうだ。
不思議と、いつの間にか普通に会話をしている。
それも、敵に関する情報を、彼女は教えてくれている。
別の酒呑童子を知ってるから。かな。
え、ちょ、なに?
ずいっと酒呑が顔を近づける。その顔にはこれから悪さをするとはっきり書かれていた。
うわ、確かに冷たい!
・・・・・・。おぬいちゃんと田助を返して欲しい
ズプ。
ぐ、あ。
爪が、彼女の爪が腹に。
があ、、あ、、、ああああ!!!
激痛に視界が霞む。血こそそこまで出ていないものの、酒呑の手は内臓を弄っている。
あぐ、、、ぐあ、、、あ
がぐああああ!!、う、あ!
激痛を感じなくなったのは意識が保てなかったからだ。
酒呑にされるがまま、意識はそこで力尽きた。
黒縄地獄は、静かに自分の涙を拭って、ぬいを見つめた。
黒縄地獄の歌に合わせ、ぬいが寝ぼけ半分で歌の続きを歌う。
歌い終わると黒縄地獄は、ぬいの髪をそっとたくし上げた。
ぬいはゆっくり目を覚ました。
微笑みかける黒縄地獄を見て、ぬいは不安そうにそう訪ねた。
黒縄地獄は視線をぬいから田助に移した。
田助は黒縄地獄に笑いかける。
この状況など何も知らず、ただ、目の前の黒縄地獄に笑い返す。
ぬいには黒縄地獄の言葉の意味がわからなかった。ただ、とても悲しそうだということだけは子供ながらに感じていた。
スーーーーー。
それは一瞬で、二つに、切断された。
あれ、小太郎?・・・生きてる。今、時間は、どのくらい・・・?
ああ、ええと、しゅて・・・衆合地獄は?
お腹、めちゃくちゃにかき回されて・・・・
鬼と遭った。一応介抱してもらった。
約束は守るって。でも、、、
考えがうまくまとまらない。ただ、月が次第に赤く染まって行くのをこの目で見ていた。
二人を返せ
・・・。
・・・。
段蔵が自分の代わりに叫んでくれた。自分は逆にそれで冷静になれた。
・・・なんだろう。この違和感。何か、誤魔化しているような・・・。
よしまずは大蛇からだ!
既に大蛇対策は万全。
攻撃の隙きをついて全員で一気に畳み掛ける。
ひゅん!
武蔵ちゃんの太刀筋を笑って軽く交わす酒呑童子。
誤魔化して力押しなんかせずに、子供達を返せ!
一番厄介なのは、全体宝具を使う黒縄地獄。
ここは、カルデアのアサシン勢力で一気に攻める!
勝負は長期戦に及んだ。
乱れ打ちの宝具合戦。最後に立っていたのは、こちらの一騎のみ。それでもなんとかこの勝負乗り越えた!
その時、こらえていた感情を零すように、口から血を流しつつ、
弱々しくも、何かにすがるように、酒呑童子はそう言い残して、消滅した。
頼光さん。。。やっぱり。
わかった、別のどこかで、また会おう。
眩い光と共に、頼光の霊基は砕け散った。
でも、あれ?酒呑童子の時は、砕けずに座に還っていった。。。。
そういえば、胤舜も、巴午前も、望月千代女も、霊基は砕けたはずなのに、酒呑童子だけ、あのままだった・・・。
そうか、彼女はずっと、彼女だったんだ。バーサーカーなだけで、僕らの知ってる酒呑童子だったんだ。
真実を伝えるにはおぬいちゃんは余りに幼い。
それに恐らくキャスター・リンボの命令でおぬいちゃん達を人質にとっていた彼女たちにとっては、秘密にしておいたほうが救われるだろう。
そうだね「本当は」悪い人じゃないよ
その言葉は、まるで、頼光さんを庇っているようで・・・。
全部わかって・・・。
その言葉の真意は恐らく、おぬいちゃんにも伝わったのだろう。
自分を縛っていたはずのその縄を、おぬいちゃんは、とても大切そうに握りしめていた。
気丈なお姉さんだよね、おぬいちゃん。
え、なにそれ聞きたい。
まぁ、でも大丈夫。
・・・・・。
まだ、やることが残ってるし、熨斗を付けて返せていないから。
そうして、最後の序幕が上がろうとしていた。
狂ったように笑うキャスター。
残る英霊剣豪はあと二騎。
狂った歯車が、最後の舞台を彩る。