亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第十三節 最終歌 屍山血河舞台・厭離穢土(序)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
これは復讐ではない。報復である。
これは怨恨ではない。制裁である。
全て殺された。
何もかもが死んだ。
いや、たった一人を除いては。
あの炎の海で呪った。■■■を全てを呪った。
だから、一切鏖殺。その宿業を持って、世界に知らしめる。
全ては、あの、炎の海で。
襲撃から一夜。
おぬいと田助を風呂に入れ、寝かしつけ、そして遅めの朝餉の準備。
真っ暗で真っ赤だったら夜空は、真っ青な青空に変わっていた。
ふと庭を見て、田助を抱えた武蔵ちゃんを見つけた。
武蔵ちゃん!朝ご飯だよ!帰っておいで!
また、空を見てたの?
闇が迫る。
闇が迫る。
血染めの月が真っ赤に昇る。
照らす士気城も赤く、赤く、禍々しく。
闇が、迫る。
そして悪夢が始まる。
人々は赤い月に照らされて、その姿を変える。
まるで感染するように。
まるで増殖するように。
一人、また一人と化物に姿を変え、ヒトがヒトを襲い始める。
大人も、子供も、男も、女も、老人も、赤子も、みんな、喰われてしまった。
昼間だというのに昇る月。
平和だった城下町で絶えず悲鳴がこだまする。
ずぷり。異形の手が左近の腹をえぐる。
がふ、と血を吐き倒れる左近。
その刹那、こちらを見ている男を見た。
妖術師は笑う。狂ったように笑う。いや、
彼は、とっくに狂っていたのだ。
彼は、英霊・天草四郎時貞。
飛び交う血飛沫が、どこもかしこも真っ赤に染め上げる。
ここに救いなどない。
彼の目には真っ赤な絶望しかない。
それは怨念となって彼を突き動かす。
止めるものなどない。
ここはかつて、彼が死ぬ間際に見た、炎の海の再現。
島原の、終焉を、彼は見せつけてみせた。
異常はすぐにわかった。
真っ赤になった空を見る。
しかし、近くに魔力の反応は感じない。
警戒しておこう。英霊剣豪がいつ出てきてもおかしくない。
そ、そうだね。。
そう、真っ赤な月は英霊剣豪が力を発揮した証。だが、近場で魔力の反応は感じない。
ばしゅっと音を立てて、段蔵は右手の手首を折って、中の空洞部分から小型の物体を射出した。
え、じゃあ、あれってロケット!?
しかもGPSと遠隔カメラ付きなの!?
何にせよ、このまま放ってはおけない。
すぐに行こう!
え、あ、まぁ・・・・。
うん、託されたからには、果たしてみせる
おぬいちゃん、元気だね。もう怪異ぐらいじゃ怯えなくなった。
ありがとう!村正さん。
小太郎は笑った。
彼女を止めるため、彼女を、守るため。