亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第十一節 第四歌 黒縄衆合地獄(破)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
英霊剣豪2体の襲撃を受け、おぬいと田助が裏山に拉致されてしまった。
指定した期限が迫る中、武蔵たちはおぬいと田助を救うべく準備を進めていた。
少女はびくびく震えている。逃げ出すこともできず、ただただ、怯えている。
にたぁと笑って酒天童子はその爪をぬいに向けた。
ぴた。
少女は混乱している。今、目の前にいる鬼は自分を喰らうと言っていたのに、もうひとりがそれを止めたのだから。
身を挺して赤子を守るその姿を、母として生きた自分と重ねたのか、頼光は静かに涙を浮かべて少女に語りかけた。
鬼が爪を立てる。
向けられた先は・・・。
カァン!
カァン!
カァン!
跳ねる火花と錬鉄。
鍛冶場でその夜、火が灯る。
カァン!カァン!
村正は無言で鉄を打つ。
村正さーん!
とりあえず、轟々と燃える炉の炎と打ち付ける鉄の音に負けないくらいの大声で、村正を呼んだ。
裏山っていうのはすぐに登れるものなの?
いや、あれはもう別人。それはわかってる。
それに、おぬいちゃんとの約束を果たさないと。
・・・うん。わかってる、つもり。
ありがとう段蔵ちゃん。あと、さっきから気になることでもあった?
そうか。
冷静を保ちつつ、一番焦っているのは村正さんだとこの時気付いた。
一行は、庵の裏手からそのまま裏山に入る。道案内は村正に任せ、道中何が来てもいいように武蔵ちゃんと小太郎が守備につく。
まぁ、そりゃ、馬も車もない時代をずーっと歩いてきたからね。
すっと竹林の間から段蔵ちゃんが現れた。先に先行してもらって、斥候役を任せていたのだ。
あ、まずい!おいてかれる!
ふと、段蔵ちゃんが話を切り出してきた。
一行は歩みを緩めずにそのまま耳を傾けた。
(やっぱり小太郎くん緊張してる・・・?)
(野暮はだめだよ武蔵ちゃん)
鬼か。確かに二人共鬼として逸話を持っているからね。
巴御前、強いひとだった。
本当の彼女にまた逢えたら・・・。
スパルタクスやブーディカもある意味では後者かなぁ
ざっくりしてる・・・・!
おぬいちゃんと田助君を助けたい。
そして、この下総の人々を救いたい。
それが、自分だと思う。
そりゃあもう。
彼女はその言葉を何度も何度も反芻した。
それこそ、同じ言葉を繰り返す、機械(からくり)のように。
林を抜けて、景色が一変した。
山の中枢、既に麓がかなり小さくなっている。
時間が惜しい。多少の無理なら慣れてる!
どういう事?
孫に似ているとかそういう?
ん?どうしてこっちを見て、、、
。
平凡な、一般人だよ。
(あ、こら)
そうだったんだ。
こんなところで時間を無駄にはできない。速攻で片をつける!
ありがとう小太郎。でも、退かないよ。
大丈夫、いつもこうして戦ってる!みんながいるから、自分だけ退けないよ!
しかし、油断した。
大蛇の尻尾が武蔵の剣をすり抜けて、こっちに向かってくるー!
ぐあぁ!
ずしりと横っ腹に重い衝撃。
バキバキっと骨の音。
あ―――――。
いててててて・・・・・。
なんとか倒れた体を起こす。どうやら10メートルぐらいの高さを滑落したようだ。
こっちは大丈夫だからーーーーー!
そう言いつつも、体のあらゆるところが痛い。
あちゃ、これは、久しぶりに、やばい、かも。