【毎日更新】line walker ゲームプレイ日記

毎日欠かさず更新して約11年目・・・・・。FGOとホロライブ・ホロスターズ中心のブログです。

スマイルプリキュア!第41話「私がマンガ家!?やよいがえがく将来の夢!!」








 私の名前は黄瀬やよい


 ちょっぴり泣き虫だけど、小さい頃から絵を描くことが大好き。


 人に見せるのは、ちょっと恥ずかしいけどね、、、











みゆき「やよいちゃん何描いてるの?」


やよい「ひゃああ!見ちゃだめ〜〜〜!」




 いつものクラス。いつもの光景。


 最近、絵を描く調子がいいやよいは、朝の休み時間のうちからスケッチブックを広げて絵を描いていました。


あかね「めっちゃ上手いやん!」


 やよいはみゆきが目の前にいることに気がつかずに、突然話しかけられて慌ててスケッチブックを抱えて描いていた絵を隠しました。


なお「ほんとだー。」

あかね「なんで隠すん?」

なお「すごく上手だと思うよ?」


 後ろの席に寄りかかってやよいの絵を覗き込んでいた二人は、素直に絵の感想を言いました。


やよい「え……?」


れいか「もう少し、良く見せて貰ってもよろしいですか?」


 れいかもやよいの絵が気になるのか、歩み寄ってきました。


やよい「――――――うん。」


 やよいは4人の素直な気持ちに答えて、抱えていたスケッチブックを机の上に開き直しました。



「「「「おぉーーーー!!(まぁ。)」」」」


みゆき「すごい!すごい!」


あかね「さすがやなぁ。これ何描いてんの?」


 やよいが広げたページには、ウィンクしてピースをしている可愛らしい女の子がラフで描かれていました。


やよい「えーと。私が考えた正義のスーパーヒロインなんだけど……。」


 やよいは照れくさそうにもじもじごにょごにょと説明します。


なお「えー! これ自分で考えたの? 」

れいか「まるで、プロの漫画家さんが描いたみたいです。」


やよい「え、そ、そうかな……?」


 れいかがマンガを読んだことがあるのかは怪しいですが、それでも素直に褒められてやよいもまんざらではなさそうでした。


みゆき「うん!やよいちゃんスゴい!将来マンガ家になれるかも!」


やよい「え!私がマンガ家!?」





 人生は自由。可能性は無限大。


 絵を描くのが好き。絵が上手いのに憧れる。


 だから、マンガ家になれたら……。


 そんな少女の夢の葛藤を描く、ちょっぴり儚い物語。









やよい「マンガ家かぁ……。」

あかね「マンガ家ってめっちゃ人気の職業なんやろ!?」

みゆき「面白いマンガはテレビや映画になったり……」

なお「先生とか呼ばれちゃったりするんだよね?」

やよい「え?でもぉわたしにはムリだよぉ……。」


 若干苦笑いしつつも、内心友だちからそう勧められてはしゃぐ様子のやよい。


やよい「マンガ家になるのって凄く難しいんだよ?プロになれるのは、ほんのひと握りの一なんだから」

あかね「そらぁ、そうかもしれへんけど……」


野川「黄瀬、マンガ描くの? だったらマンガコンクールに応募すればいいじゃん。」


 すると話を聞いていた隣の席の野川けんじ(マンガ好き)が読んでいた週間連載雑誌(少年スマイル)を手に持ってあるページを開きました。


やよい「コンクー……ル?」

野川「そうそう!黄瀬なら、良いところまでいけるんじゃない?」


 やよいが野川から手渡されたページmには、「マンガコンクール新人賞応募」の広告が描かれていました。ていうか、青木生徒会長、学校に雑誌が……。


野川「なぁ?腕試しにやってみろよ!」

井上「そうだ!プロになったらサインくれよ!」

野川「お、いいねぇ!俺も俺も!」


 自分の絵に自身が持てなかったやよいは、みんなの後押しでこの時決意しました。


やよい「わたし……、やってみようかな」


「「「「えぇ!?」」」」



やよい「コンクール、応募してみる!」























スマイルプリキュア!第41話「私がマンガ家!?やよいがえがく将来の夢!!」






 Gペン、ベタ、ホワイト、トーン、定規、ねり消し、原稿紙その他マンガ家帽まで被って、机に向かうやよい。


やよい「よし!がんばるぞー!…………と、何を描こうかな……。」


 大好きなヒーロー物にするか、それともまったく違う新しいものにしようか、昔自分が好きだったマンガをモデルにしてみようか、それとも友達に意見を聞いて決めようか。色々テーマで思い悩むやよい。


やよい「ん〜〜〜……。」




 ふとスケッチブックをめくるやよい。今朝みんなに絶賛されたスーパーヒロインのイラストをぼーっと見つめます。



やよい「……。」





 「がんばってね☆やよいちゃん!」




 じーっと見つめていると、絵の女の子がそう応援してくれてるみたいで、やよいはやる気が出てきました。


やよい「よし! 決めた! がんばるぞー!」







・・・・・・




 そうして翌日、昨日のイラストを元にマンガ「ミラクルピース」の表紙の下書きをやよいは学校に持ってきてみんなに披露しました。



「「「「おぉーーーーー!!!(まぁ。)」」」」


みゆき「さすがやよいちゃん!」

あかね「めっちゃウマいやん!」


やよい「あんまり大きい声出さないで、―――――恥ずかしいから。」


なお「一晩で良く描いたね!」

れいか「完成が楽しみです。」


やよい「あ――――それほどでも……。」


 みんなの喜ぶ顔を見て、やよいは自分も楽しくなってきました。



みゆき「で、中身は!?」


やよい「え、あ、まだ、今日は表紙だけ……。」


野川「なぁんだよー、それっぽっちかー……。」

井上「楽しみにしてたのにぃー」


 すると横で見ていた昨日の二人が、残念そうにやよいに言います。


やよい「うん、ちゃんと描くからちょっと待ってて」


あかね「締切、間に合うんか?」


やよい「うん……。なんとかなるよ、大丈夫」(定型句)


 若干厳しそうな表情を隠しながら、やよいは笑ってそう答えました。


みゆき「やよいちゃんなら、きっと大丈夫! ガンバってね!」


やよい「うん!ありがとう!」









・・・・・・・














「ハァ―――――ッハァ!――――――ハァ―――――!」




 気がつけば辺りには誰もいなかった。


 それは何気ない日常が突如非日常と化した事を意味していた。



 さっきまで楽しく遊んでいた子供たち。それを脇目に談笑するお母さんたち。


 電話の相手に忙しそうなサラリーマンに袋いっぱいに荷物を抱えたお兄さん。



 しかし、今世界には自分一人だけ。そう断言できるくらい、世界は静かで、“無”だった。



 だが、その平穏も終わりでない。



 それは突然現れた。赤い衣を身に纏った男だ。一見正義のヒーローのコスプレでもしているのかと思った。


 だが男は空を飛んでいた。比喩でも妄想でもなく空を飛んでいるのだ。


 そしてギラリと怪しく光る牙を剥き出しにして私に襲いかかってきた。


 私には逃げた。息を切らせて走った。だけど男は空を飛んで追いつこうとした。まるで悪を追いかける正義のヒーローだ。


 しかし、不気味に尖った口先とマスクの下から光る眼の輝きは誰がどう見てもダークヒーローさながらであった。


「ハハ―――――――。オレ様から逃げられると思っているのか?」


 私はさらに走った。しかし、廃墟と化した街は男の意志で動くかのように、私の行き先を次々と塞いでいく。


 私はついに行き止まりで男に追い詰められた。


「そこまでだ。」


 私は真後ろまできた男の声に振り向いた。私はこの男を知っている。この男を倒すために、私はここにいる。


「あなたの世界征服の企み、この耳で確かに聞いたわ!」


「フフフフフ―――――――やはり知ってしまったか。良い覚悟だ」


 男はナイフで切り裂いたような鋭利な笑みを浮かべた。それだけで邪悪な感情が溢れているのがわかる。男はすっと指先を私に向ける。私はそれが男の攻撃の合図だと知っていた。


 男が指先に意識を集中させた。その手から放出された光線は、一直線に私目掛けて飛んでくる。



 光線が出たと同時に私は真上に高く跳んだ。真下で金属の溶ける臭いがした。


「何!?」


 そして私は契約を解き放つ。この世の理との約束。はみ出した奴らから街を、世界を守るために私は世界との契約で姿を変える、平和を謳う奇跡のヒロイン、「ミラクルピース」に。




「歪んだ悪は逃さない!正義の戦士ミラクルピース参上!!」











やよい「ふぅ…。」


 やよいはそこで一旦集中を切りました。時計を見ると針が真上で重なって少し経っているところでした。


やよい「もうこんな時間か……。」


 学校から帰って夕飯と風呂を済ませ、マンガ作業に取り掛かったのはもう4時間も前。既に日付は今日から明日になっていました。


やよい「今日もたったこれだけ……」


 やよいは下書きにペン入れした2ページ分の原稿を見ました。作業としては、下書きの修正とペン入れ、それと効果トーンを少し貼った程度です。


 集中を切った瞬間に眠気が迫ってきたのを感じて、やよいはそこで原稿を締まって明日に備えて寝ることにしました。




・・・・・・





 翌日、学校「英語」。




やよい「どうしよう、わたし一人じゃやっぱりムリかも……。わたし……ちょっと浮かれてたのかな……。でも、やるって決めた以上やり抜かなくちゃ!」


先生「黄瀬さん?」


やよい「は、はい!」


 やよいは反射的に立ち上がって先生の方を見ました。授業が全然頭に入ってなかったので、何を聞かれたのかもわかりません。


先生「教科書読んで。82ページ」



やよい「は、はい〜〜……!すみません!」


 クスクスと笑うクラスメイトの声を後ろ手に、やよいは慌てて教科書をめくりました。



みゆき「?」







・・・・・・



 その日は早く帰ってマンガの続きをするために、やよいはすぐに学校を出て家に向かいました。

 イチョウの葉が色付いて地面に黄色のカーペットを敷いた道を歩いていると、やよいは背中から声をかけられ、呼び止められました。



みゆき「やよいちゃ〜〜〜ん!」


やよい「みんな……。」

みゆき「マンガ描くのわたし達も手伝うよ!」


やよい「え……?」


あかね「困った時は、お互い様や」


 みゆきの肩に寄りかかりながら、あかねはにこっとやよいに笑いかけました。


なお「プロのマンガ家だってアシスタントがいるもんね」

れいか「力になれる事があったら、言ってください」

キャンディ「キャンディもてつだうクル!」(本日初台詞


 今朝から様子がおかしかったやよいを心配して、マンガ制作が順調じゃないのかと察した4人は、それとなくやよいを支えるためにこうして集まったのです。


やよい「ありがとう。―――――でも、わたし、一人でやってみようと思う」

みゆき「え? でも――――。」



やよい「大丈夫。大変だけど……。でも、“ミラクルピース”だったら、きっとそう言うと思うから」


 原稿に描いた「ミラクルピース」の登場シーンを思い出して、やよいがみんなに言います。


れいか「やよいさんの、あのキャラクターですか?」


やよい「うん。わたし、小さい頃からずっと泣き虫だったから、カッコイイスーパーヒロインに憧れて絵を描いていたの。」

みゆき「それが“ミラクルピース”?」

やよい「うん。」

れいか「“ミラクルピース”は、やよいさんにとって理想の自分なんですね」

やよい「うん、わたし、マンガを描くのがすごい大変ってわかった。みんなの気持ちも嬉しい。でも、このマンガはわたしにしか描けないと思うから、ちゃんと一人でがんばろうと思う。」



 自分にしか描けない世界。だからこそ、最後まで自分の力だけでやりたい。友だちに助けてもらっても、いずれは一人でやっていく事だから。だから、諦めずに必ずやり遂げてみせる。それが、やよいが“ミラクルピース”に注いだ想いの形なのかもしれません。



みゆき「やよいちゃん……。」

れいか「わかりました。時には見守る事も友情ですね。」

やよい「みんな、ありがとう!」






・・・・・・


 一方。暗い暗い闇の深淵。


 世界を終末へ導く世界。



アカオーニ「ジョーカー、オレ様を呼び出すとは何の用オニ?」


ジョーカー「アカオーニさん。アナタ、プリキュアの一人も倒せない癖に、よく平然としていられますねぇ……?」

アカオーニ「な、なんだとオニ!!」

ジョーカー「ピエーロ様がお怒りです」

アカオーニ「ピ、ピエーロ様が!?」


ジョーカー「……。いくらドジのアナタでも、一番泣き虫のキュアピースくらいなら、倒せるでしょう?」


 スコーン。とアカオーニの足元にキュアピースが写ったカードが突き刺さります。


アカオーニ「あ……。」

ジョーカー「わかっていますね? 次が最後のチャンスです」

アカオーニ「最後の……(ごくり)。わ、わかったオニ!」


 ドスン。その手に持っていた金棒を足元に刺さったカードに振り下ろします。


アカオーニ「キュアピース!絶対に倒してやるオニ」


ジョーカー「期待していますよ」



 感情の見えない道化師の眼光が鋭くアカオーニがいなくなったところを一別しました。







・・・・・・


 しかし、やよいのマンガ作業は順調にはいきませんでした。



 ゴミ箱にはぐしゃぐしゃになった原稿用紙があふれるまで詰め込まれ、壁掛けのカレンダーに書かれた×マークは、締切の○マークまであと1週間を切っています。


やよい「あ――――」


 滑らすGペンは、もうただの作業でしかありません。作品を完成させようとする意欲より先に、早く終わらせたい、その気持ちが日を追う毎に増している自分に嫌気がさしながら、それでもやよいは周りの期待を背負った分まで必死にマンガを描いていました。


 そうして部屋に篭る生活は続き…………。













ある夜、イチョウ並木を歩いていると、目の前から女の子が自分の後ろへ向けて倒れ込んできました。


やよい「え、なに!?」


「ウッハハハハハハハハ!やはり、お前一人ではオレ様に叶わなかったようだな。」


やよい「え―――――。」


 男の姿には見覚えがありました。世界征服を企む悪の組織の幹部。そして、自分の後ろに倒れているのは他でもない、正義の戦士“ミラクルピース”です。


やよい「ミラクルピース!!?」


「次はお前だ」


やよい「え……?」


「お前本気でマンガ家になれると思っているのか?」


 見慣れた男の姿は、やよいの知らない声でやよいにそう言いました。


やよい「――――」


「本当は気づいているハズだ。お前は本当は泣き虫で、一人じゃ何もできない。どうせ、途中で投げ出すに決まっているとな。“現実はマンガみたいに上手くいかない”んだ!」


 自分では考えたことなかった酷い言葉。それでも、男の言っていることは今やよい自身が感じている不安そのものでした。

 男が指先を構えます。やよいは知っています。あの指から悪の光線が放たれることを。


「さっさと諦めろ!!!」


 一瞬、視界が明るくなったと思った途端、急に真っ暗に光が収束し、闇の光を放ってやよいに襲いかかってきました。



やよい「――――!!?」




 しかしその光線はやよいの眼前で拡散します。目の前には、自分が憧れたスーパーヒロインの姿がありました。



やよい「ミラクルピース!!」


ミラクルピース「まだ……終わりじゃない!!」


「ふん。所詮お前は、そこの泣き虫に作られた存在。」


やよい「――――!」


「強いミラクルピースなど、存在しないのだ!!!」


ミラクルピース「私は絶対に諦めない!!!」


やよい「ミラクルピース!!」


ミラクルピース「たああ!!」

「ぬぅああ!!!」


 男が急降下し、ミラクルピースが急ジャンプし、二人の拳がぶつかり合い、激しい閃光が辺りを照らします。あまりのまぶしさにやよいを目を覆って、そして―――――。



「わあああああああああああああああああああああああああああああああああ」



やよい「――――は!」




 顔を上げたやよいは、自分が夢から覚めたことに気がつきました。







やよい「あぁ!!」



 しかし、起きた拍子にインクの瓶を倒してしまい、黒いインクが作業途中の原稿を真っ黒に塗り潰してしまいます。


 急いで拭き取ろうとするものの、インクは滲んで広がるばかり、自分の手も真っ黒に汚れて、ヒロインの顔も黒く潰れてしまいました。


やよい「あ……。」




 お前、本気でマンガ家になれると思っているのか?




 夢の中での出来事が鮮明にやよいの頭の中で繰り返されます。その度に、やよいは目から溢れる涙を堪え、必死でインクを拭き取っていました。



 マンガ家って、めっちゃ人気の職業なんやろ!?

 先生とか呼ばれちゃったりするんだよね?

 やよいちゃんならきっと大丈夫、がんばってね!




 一瞬、みんなの顔が浮かんで消えました。


 期待されている自分、答えたい自分。


 夢を叶えたい自分、うまくいかない自分。


 自分が好きな自分、自分が嫌いな自分。



 気づけば、今まで書き上げた原稿を持ってやよいは駆け出していました。














みゆき「やよいちゃん!」


あかね「差し入れ、持ってきたでー!」


やよい「みんな……」


 部屋を出て、マンションから出たところで、やよいは4人に会いました。


なお「どうしたの?」


みゆき「もしかして、マンガ完成したの!!?」


 まっすぐで、どこまでも自分を信じてくれる友だち。


 でも、その期待に答えることができない歯がゆい自分に、やよいはまた涙が溢れてきました。


やよい「ごめんなさい……。」

みゆき「え?」

やよい「わたし……やっぱり……。――――やっぱりムリだった!!!」



れいか「―――やよいさん!」

みゆき「やよいちゃん!!!」





 みんなの横を抜けて、やよいは一人走り去りました。まるで全てから逃げるように、もう自分は友だちの資格すらないのだと思っていました。


 イチョウの並木道で、やよいは足を止めました。みんなは追ってきません。自分がどこへ向かったのかわからないでいるのか、それとももう呆れてみんなで帰ってしまったのか……。


 悪いのはマンガだ。こんなことになるくらいなら、マンガなんて……。


 ベンチの横のゴミ箱の前に立って、最後に原稿をもう一度見つめます。黒く塗り潰れたヒロインの顔が、まっすぐな目でやよいを見つめ返していました。




やよい「――――――――。」


アカオーニ「見つけたオニ。キュアピース!!」

やよい「え―――!」

アカオーニ「今日こそお前をひねり潰してやるオニ!」

やよい「あ―――――。」




 何も告げずにただ、バッドエナジーを吸収するアカオーニ。前回のウルフルンの時と同様、その様子はいつもと違って切羽詰ったように変な緊張感がありました。


やよい「(どうしよう、わたし一人じゃムリかも……。)」


アカオーニ「ん?なにを持ってるオニ!!」


 ぶん。と金棒をひと振りするアカオーニ。その威力で巻き起こった突風はやよいの周りに暴風を起こし、その拍子でやよいは原稿を空に舞い上げてしまいます。


やよい「あ!!」


アカオーニ「ん?」


 舞い上がった原稿は、風の流れでアカオーニの手元に。


やよい「やめて!わたしのマンガ返して!」

アカオーニ「オレ様に勝ったら返してやるオニ」


やよい「(怖い…。でも、こんな時ミラクルピースなら―――――!!)」


 意を決してやよいはスマイルパクトを取り出します。






『Ledy?』



プリキュア・スマイル・チャージ!!!」


『Go!Go!Let’s go! peace!』







「ピカピカピカリン、じゃんけんぽん!キュアピース!」




「出てよ、ハイパーアカンベェ!!!」


 取り出した黒っ鼻が取り込んだのは、やよいのマンガに描かれた悪役の男。悪役アカンベェです。


『ハイパーアカンベェ!!!』


ピース「わたしのマンガが……!」

アカオーニ「さぁ、勝負オニ!」



ピース「――――!」

アカオーニ「今日こそは絶対に勝つオニ!!」


ピース「うあ!!」


 元々の悪役も相まってか、いつも以上に動きにキレがあるアカンベェ。手足のリーチも作用してキュアピースは確実に追い詰められていきます。


『アッカンベェ!!』


アカオーニ「ウハハハハ! やはりお前一人ではオレ様に敵わないオニ! こんなマンガと現実は違うんだオニ!! 何がミラクルピースオニ! くだらないオニ!!」


 アカオーニは、アカンベェの内側に張り巡らされた原稿を冷めた目で見ながら言いました。


ピース「くだらなくなんかない! ミラクルピースは、わたしの理想のヒロインなんだから!」


アカオーニ「あ?」



ピース「わたしの憧れなんだから!!」


『アッカンベェ!!』


ピース「うわぁ!! きゃあああああああああああ!!」




アカオーニ「自分が作ったマンガに憧れるなんてどうかしてるオニ! そんなもの、所詮弱虫なお前の幻オニ!!」


ピース「ぐ―――――!」


アカオーニ「これで、終わりオニ!!」


 アカンベェが指先を構えます。そのポーズは、やよいが何度も描いたあの技のポーズでした。


ピース「う――――――」


 両手でアカンベェの光線を弾き返すピース。


アカオーニ「ヌ?」


ピース「まだ……終わりじゃない! ミラクルピースは、幻なんかじゃない! わたしが最後までちゃんと描き上げて、ミラクルピースの物語を完成させるんだから……。」


アカオーニ「お前さっきこのマンガを捨てようとしていたオニ? 本当は気づいているオニ! お前は泣き虫で一人じゃ何もできないオニ! どうせ途中で投げ出すに決まっているオニ!!」


ピース「―――――あなたの言う通り」


アカオーニ「ン?」


ピース「わたしは泣き虫で、一人じゃ何もできないって思ってた。だから強いヒロインに憧れて、ミラクルピースを作り出したんだって。」


アカオーニ「その通りオニ!!だからそんなもの、幻だと言っているオニ!!」



ピース「違う!!! ミラクルピースは、わたしの中にちゃんといる!!!」


アカオーニ「オニ?」


ピース「わたしの中に、ほんの少しだけあるわたしの強い心が、ミラクルピースなの!!! わたし、マンガを描くのが好き。その強い気持ちがある限り、わたしは絶対に諦めない!!!」




アカオーニ「ヌ!?」



 少女はまた一人決意する。確かな信念の元。ハッピーは憧れの力。サニーは宝物の想い。そして、ピースには夢を叶える強い気持ち。


 その想いに答えるように、ウルトラキュアデコルが奇跡の力をピースに宿します。



アカオーニ「オニィ!!?」



 それは天高く昇るイカヅチ。舞い上がるエネルギーは誰にも劣らない輝き。覚醒されたそれは、奇跡の力を纏って、眩い電撃の力をピースに授けました。



『アッカ……?』


アカオーニ「泣き虫の癖に生意気オニ! オレ様の方が強いことを思い知らせてやるオニ!!」



ピース「―――!!!!」

『アッガガガァ!!???』


 繰り出される拳のぶつかり合い。しかし、アカンベェのその巨体は、雷を纏ったパンチで吹き飛ばされてしまいます。


アカオーニ「オニッ!!!?」





ピース「ハァァァ!!!!」


 その威力はまさに雷撃、その速さはまさにイカヅチ。それはアカンベェの巨体ですら押し負けるほどの猛烈なエネルギーです。




ジョーカー『次が最後のチャンスです』



 アカオーニの脳内でジョーカーの冷たい声が響きます。


アカオーニ「ぬぁ!!?」



ピース「“プリキュア”―――――」




 天に掲げるVサイン。ピースに落ちる極大の雷。


ピース「“ピース・サンダー”―――――――」




 帯電した体を一気に回転させ、巨大なカミナリエネルギーを指先に全て集めます。



ピース「“ハリケエエェェェェェェン”!!!!!!!!!!!」





アカオーニ「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 打ち出されたピースサンダーは今までの威力とは比にならないくらいの大きさで黒っ鼻のアカンベェを吹き飛ばします。







ピース「ハァ……ハァ……もういいでしょ、わたしのマンガ返して……。」


アカオーニ「ヌアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 しかし、倒れ込んだアカンベェは再び立ち上がり、怒鳴るように雄叫びを上げます。





アカオーニ「オレ様には、もう後が無いオニイイイイイイイ!!!!」


『アッカンベエエエエ!!!!』


 ピースに振り下ろされた拳。



 しかし、それを打ち崩すように、シャワー、ファイヤー、シュート、ブリザードがアカンベェにクリーンヒットします。


ピース「あ―――! みんな!!」


 ピースが振り向くと、いつもの笑顔でハッピーたちがそこにいました。


ハッピー「お待たせ、ピース!」




ビューティ「ピースなら一人で乗り越えられると信じていました。」




サニー「アカオーニ、ピースはアンタなんかよりよっぽど強いで!」



マーチ「それに、誰よりも根性がある!」





ピース「――――――わたし、これからもくじけそうになるかもしれない。けど、一度決めたことは絶対最後までやり抜く!」


ハッピー「ピース―――!!」


ピース「みんな!」


「「「「オッケー!!!」」」」




「開け!ロイヤルクロック!!」


 奏でるリズムと共にキャンディのひと押しで、時計の針がひとつ、進みます。


「みんなの力を一つにするクル!!」


「届け!!希望の光。」


「はばたけ!!光輝く未来へ!!」


 描く星の繋がりは鳳凰の星座に。その聖なる力を宿して。


 新たな力、何度でも諦めずに、立ち向かう、不死鳥の燃え上がる力をその翼に。



「“プリキュア・ロイヤル・レインボー・バースト”!!!!!」


『アカンベェ〜〜〜……!?』


「輝け!」



「「「「「ハッピースマイル!!!!」」」」」


『アカ〜〜〜〜〜ンベェ!?』


・・・・・・


アカオーニ「敗けたオニ……。オレ様、これからどうなっちゃうオニ〜!?」



・・・・・・









 なに事もなかったかのように、イチョウ並木に風が吹きます。




みゆき「やったねやよいちゃん!」

やよい「みんな、待っててね! わたし、絶対最後まで描き上げるから!」


「「「「うん!!!!!」」」」


みゆき「やよいちゃんなら絶対大丈夫!」






・・・・・・・





そして、6日が過ぎ―――――。




・・・・・・



『Let’s Go!! H・O・S・I!!』


みゆき「やよいちゃん、マンガ完成おめでとう!!」


 みんなで買った花をホシデコルで彩って、みゆきはやよいに手渡しました。


やよい「ありがとう!」



野川「喰らえ!ミラクル・ピース・サンダー・ハリケーン!!!」


井上「「ぎゃーーー!!おのれミラクルピース!!」」



 やよいが描いたマンガ、ミラクルピースは締切に間に合い見事完成。一部アカオーニとの実体験を交えつつも、リアルに描けた戦闘描写は男子諸君にも見事に受けた様子。


あかね「やよいスゴいやん!」

なお「まっすぐでやよいちゃんらしいマンガだね!」

れいか「心の篭ったいい作品だと思います。」

みゆき「一人で良く頑張ったねー!」


やよい「ありがとう! みんなのおかげだよ!!」


 やよいはそう言って心の底から笑いました。それと同時に、初めて本当に自分の絵でこんなにも人を笑顔にできるんだと知った瞬間でもありました。









 わたしの名前は黄瀬やよい。ちょっぴり泣き虫だけど、決めたことは最後までやり抜く、がんばり屋さんなんだから!





 夢に向かってがんばれるとわかった。その時、ミラクルピースが、自分にだけウィンクしてくれたようにやよいには見えました。

















次回は直球なおの話。


緑川家に生まれる新たな命!


 しかしそこに現れたマジョリーナが家族の絆を引き裂こうとする!?




次回、「守りぬけ!なおと家族のたいせつな絆!!」








 

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