スマイルプリキュア!第27話「夏のふしぎ!?おばあちゃんのたからもの」
夏。
青く緑が茂る山々から、幾重にも重なった蝉の声が、村中を覆いました。
遠くの川辺では、カッコウも鳴いています。
やよい「みゆきちゃ〜〜ん。まだ着かないの〜〜……?」
遮るものがほとんど無く、都会と違って往来も少ない車道を歩く5人。既にやよいは暑さでバテバテです。
みゆき「もうちょっとだよ〜…。」
あかね「バスもタクシーも無いなんてありえへん…。」
みゆき「大丈夫あかねちゃん?」
あかね「あかん…。ちょっと休憩させて〜〜…」
あかねはふらふらっと道路を外れて、横を流れる色の澄んだ川へ降ります。
なお「珍しいね、あかねがへばるなんて。」
あかね「最近食欲無いねん…。せやから力が出えへん。」
なお「夏バテか〜?」
みゆき「ごめんね〜、たくさん歩かせちゃって」
あかね「あぁ、ええ、ええ。気にせんといて〜。すぐ復活するからな。」
れいか「毎日暑いですものね。」
そういってふわりと帽子の下から太陽を見上げるれいか。手で光を遮りますが、指の間から夏の光が差し込みます。
夏。
「むやみに川に近づくと、カッパに引っ張られるよ。」
なお「へ?」
あかね「ひゃ〜〜〜、生き返るうううう」
川の水をペッドボトルで組み上げ、そのまま首元に流すあかねの背後で声がしました。
「おかえり、みゆき。」
みゆき「おばあちゃん!」
そこに立っていたのは、友達を連れて田舎まで遊びに来た孫を迎えに来た、みゆきのおばあちゃん星空タエさんでした。
何も無い、がそこにある。
暑さ満点、虫もいっぱい。
決して便利じゃない。決して楽じゃない。
だけど、確かに大切なものがここにある。
今日はそんな、たからもののお話。
飛び交うとんぼが映す水面。
隣の家まで何百mという場所に、星空タエさんの住まいはあった。
回りを囲むのは林と山と森と田んぼ。緑、緑、緑。マーチ、緑。
横を流れる小川の和流(せせらぎ)を聞きながら、5人は縁側でその光景を眺めていました。
なお「うわ〜!家からこんな良い景色が見えるなんてスゴイねー」
れいか「本当に素敵なところですね。」
あかね「えぇか?キャンディ、約束守らなあかんで?」
キャンディ「くる…。」
やよい「人前では、ぬいぐるみのフリをするって言うから連れてきたんだよ。」
キャンディ「わかってるクル!!」
あかね「しー!声が大きい!!」
キャンディ「ごめん...クル。」
タエ「長旅ご苦労さま。」
なお「え。あ、すみませんやります!」
5人分淹れた麦茶をお盆に乗せたタエさんをなおが手伝います。
タエ「あら、ありがとう。」
すかさずれいかがその麦茶を取り分けて氷の音を立てながらテーブルに並べます。
タエ「少し休んで。暑かったでしょう?」
あかね&やよい「「はーい。」」
みゆき「今年もいっぱい野菜作ったんだね!美味しそう!」
タエ「下の川で冷やしてあるよ。食べる?」
みゆき「――――うん!!」
5人がやってきたのは、みゆきの実家。七色ヶ丘町から遠い遠い山々が囲む田舎だった。
普段の生活とはまた違った自然に囲まれたそこで、5人が出会ったものとは・・・。
第27話「夏のふしぎ!?おばあちゃんのたからもの」
あかね「うんまーー!!!めっちゃ美味しい!!」
カリっと瑞瑞(みずみず)しいきゅうりを一口食べてあかねが声を張り上げます。木陰のひっそりとした川辺で、川の水で冷やした野菜をみんなで食べます。
みゆき「でしょでしょー!おばあちゃんが作った野菜は、とっても美味しいの!」
やよい「川でこんなに冷えるんだ」
れいか「天然の冷蔵庫ですね。」
あかね「ほんま美味しい!むっちゃ美味しい!」
みゆき「夏バテ治った?」
あかね「治った!元気モリモリや!」
なおは、ガッツポーズを取るあかねの後ろに視線を外し、そこにぽつんと立っていた祠に気がつきます。
みゆき「なおちゃん、どうしたの?」
なお「あ、いや…その。カッパって本当にいるのかな…?」
あかね「怖いんや?」
なお「そんな事!?」
あかねが茶化すとびくっと驚いてなおが反論します。
タエ「それなら――――みゆき。」
みゆき「うん。」
おばあちゃんは、籠の中のきゅうりを一本取り出してみゆきに渡しました。みゆきはそれを持って川べりに行き、すとん、ときゅうりを川に流します。
みゆき「カッパさーん!きゅうり上げるから、悪さしないでねー!」
きゅうりが流れて見えなくなる下流に向かって、呼びかけるみゆき。
みゆき「大好物のきゅうりをあげれば、カッパさんは悪さしないんだって。ね!おばあちゃん。」
タエ「うんうん。」
なお「へ…へぇ……。」
あかね「で……それはつまり、“おる”って言うこと?」
やよい「まさか……」
若干、河童生存説が浮上して引き攣る3人。
みゆき「ちっちゃい頃おばあちゃんに色んなお話を聞かせてもらったんだ。カッパがこどもを助ける話でしょ、天狗に助けられる話、座敷わらしに助けられる話―――。」
なお「なんだ、お話かぁ…」
あかね「助けられてばっかりやん。」
やよい「でも、優しい妖怪さんばかりなんだね。」
みゆき「うん。優しくしたら、贈り物をくれたりとかね。」
やよい「贈り物?」
みゆき「そう。魚とかお酒とか、お餅とか持ってきてくれるんだって。」
ぽん、とみゆきはキャンディの頭に手を置きます。必死で人形のフリをするキャンディは、若干汗をかきながらも、微動だにせずに頑張っています。
みゆき「とにかく、おばあちゃんはそういう話をたっくさん知ってて、こどもの頃から私に聞かせてくれてたんだ。」
れいか「みゆきさんの物語好きは、お婆さまの影響なんですね。」
みゆき「えへへへーー。」
日も陰り、緑の山々も夕陽で赤く染まります。
そうして、外灯もまばらになり、月明かりだけが残る世界で、居間の明かりの下で5人は夕食の料理を並べます。子豚の蚊取り線香に、青い羽の扇風機。夏の風物詩ですね。
みゆき「あれ?おばあちゃんー!一人分多いよ…?」
タエ「あぁ、ほら。その子も食べるでしょ?」
そういっておばあちゃんは、テーブルの向こうに置かれたぬいぐるみ(キャンディ)に言いました。
キャンディ「キ……。」
なお「は!」
みゆき「え!」
やよい「ひ!」
れいか「ま!」
あかね「お!」
キャンディ「キャンディもたべるクルーーー!!!」
「「「「「うわああああああああ!!!!」」」」」
ドタタタタターー。いつもの調子で飛び上がるキャンディに飛びかかる5人。
みゆき「いやだなぁ、おばあちゃん。ぬいぐるみは食べないよ…あははははは。」
タエ「そう?うふふ」
「賑やかだねぇ、タエちゃん。」
タエ「あら?」
薄暗い月明かりの下から、丸いシルエットの袋を下げた男の人が縁側から声をかけてきました。
「これ、冷やしといたから、お孫さん達と食べて」
タエ「あらぁ、いつもありがとう。良かったらそこの野菜持ってって」
「おぉー、こりゃたくさんだなぁ。」
タエ「今年がまた豊作なの。」
「おぉー、そうかい。」
今では少なくなった近隣同士の何気ないやり取り。人が少ない村だからこそ、お互い助け合って生きている。だけど、みゆきは改めて、おばあちゃんがここに一人だけで住んでいることを思い出し―――。
キャンディ「みゆきぃぃ、オモい…くる。」
みゆき「ふわああ!ご、ごめ―――」
・・・
みんなで(キャンディはテーブルの下でこっそり)夕食を食べた後は貰ったスイカを切って、庭で花火をして遊びました。
みゆき「ねぇ、おばあちゃん?私たちと一緒に暮らさない?」
あかね「―――。」
れいか「―――。」
みゆき「お父さんもお母さんも、おばあちゃんの体が心配だって言ってたよ…。私も―――おばあちゃんといつも一緒にいれたら、嬉しいなー。とか思ってるんだけど…。」
そんなみゆきの言葉に、二人も助け舟を出します。
あかね「せやなぁ。ここはメッチャええとこやけど、交通が不便やもんなぁ。」
れいか「毎日暑いですし、もしも何かあった時に心配ですよね。」
みゆき「ね、おばあちゃん。」
みゆきの問いかけに笑顔で答えるおばあちゃん。ですが…。
タエ「ありがとう。でも、あたしはここがいいの。」
みゆき「どうして?」
タエ「ここには、あたしにとってのたからものがあるからね。」
みゆき「たからもの……?おばあちゃんのたからものって何?」
なお「ねぇ!無くなっちゃうよ」
やよい「みんなもやろー」
タエ「あら、大変。いこっか。」
すると話をそこで終わらせるかのように、おばあちゃんは縁側から立ち上がって、なお達の方へ。
あかね「みゆきがおばあちゃん家に行きたいって言ってたのは、そういう訳やったんか。」
みゆき「ごめん。付き合わせる感じになっちゃって。」
あかね「ええねん。山に行きたいーって言うたのはウチらの方やし…。なー?」
れいか「えぇ。本当にいいところ…。」
あかね「よっしゃ!行こ?」
励ますようにみゆきを誘うあかね。こういう時にあかねの元気は、見ているこっちにも元気が出ますね。
あかね「よっしゃー、そろそろあかねちゃんも暴れるでー!」
れいか「あかねさん、危ない事したらダメですよー」
あかね「まぁ、固いこと言わんとー」
なお「だめったらだめー!」
あかね「えー……。」
見上げた空は満天の星空。自分の名前にもなっている、キラキラ輝く星空。
便利な都会じゃ絶対に見られない景色がそこにありました。
一方、すっかり忘れていたバッドエンド王国。
悪の世界だって、夜は熱帯夜です。
ウルフルン「あぁ……暑い。夜なのに、何でこんなに蒸しあちぃんだ……。立派な毛並みが恨めしいぜ……。」
犬のようにテーブルの下の影で汗まみれになりながら、ぼやくウルフルン。
ウルフルン「ちょっと、切ってみるか……。」
散髪したら清々しい青年に……。って背景のハートにあざとさが……。
ウルフルン「いやいやいやいや!!暑さなんかに負けてたまるかああ!!!――――――とりあえず山で涼むか。あちぃよ……。」
プリンセスピースのCMバンク明け。
山の隅から顔を出すように、日の出が差し込みます。
「Let’s go!! Z・O・U!!」
象デコル。使うと象が出ます(え
キャンディ「いっしょにミズやりやるクル!」
象の鼻で小川の水を組み上げて一気に野菜畑に吹き付けます。虹を作りながら降り注ぐ水しぶきは実に涼しそうでいいですね。しかし、さすがのおばあちゃんもこの光景を見たらただじゃ済まないでしょうけど。
あかね「まぁなー。ずっと住んでたとこ離れるのは、辛いもんなー。」
みゆき達は、菜園の草むしり、雑草が余計な栄養を取らないように丁寧に一本ずつ草をむしります。
あかね「ウチも小学校出た後、引越してもうたから、気持ちようわかるわー。」
みゆき「うん。私も転校する時、そうだった。」
あかね「それにしても、おばあちゃんのたからものって何やろな?」
みゆき「よくはわからないけど、ここの景色を見てると、なんとなくわかる気がするんだよね…。」
あかね「せやなー」
みゆき「あ!キツネ!」
タエ「とうもろこし焼けたわよー!」
みゆき「はーい!」
絶対象見えただろJK……。
ウルフルン「あー!こりゃ最高だっぜ!」
おばちゃんが野菜を冷やしていた川辺で、いつものブーツを脱いで冷たい川に足を入れるウルフルン。
ウルフルン「落ち着いたら腹減ってきたー。ここんとこ暑くて食欲も無かったからなー。」
ざば。川から、何か出てきました。
ウルフルン「あ?……なんだお前……?」
すると、川から出てきた何かに襲われたウルフルン。
ウルフルン「どわ!な……なんだありゃ!!」
急いで川から上がってみると、そこはちょうど、みゆき達がとうもろこしを食べていた縁側でした。
みゆき「ウルフルン!?」
あかね「そっちこそ!!ほんで、なんでそんなにビショビショやねん!」
ウルフルン「これはお前、今そこで―――あ!」
●●●と遭遇したと言いかけた時、腹を空かせた体がとうもろこしの匂いに気づきます。
あかね「な……なんや?」
ごくり、と唾を飲み込む大きな音。
タエ「あらあら、お腹が空いてるのね。今、何か持ってくるわね。ちょっと待ってて」
ウルフルン「って、ちょっと待てよおい!なんだお前は!!俺様が怖くねぇのか?」
思わぬ優しさに触れて顔を赤くするウルフルン。
タエ「怖い?可愛いキツネじゃないの。」
ウルフルン「キツネじゃねーよ!!オオカミだ!!」
タエ「あらそう?なんて可愛らしい。」
いつぞやのファミレスでもそうでしたが、相変わらずコスプレで処理されてしまうウルフルン。
あかね「ぶくくくくく………。」
ウルフルン「あったまきた!!おちょくりやがって、オオカミの恐ろしさ思い知らせてやるからな!見てろ!!」
いそいそ、とブーツを履き直して、いつもの白紙の本を取り出すウルフルン。
「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!!白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!!」
晴れ晴れとした大空が、真っ青な夜空に。不気味に満月が地上を照らします。
生きること、その全てに意味がある。人間、何かに支え、支えられることでしか生きられない。
一人の孤独、絶望。もしも、最後まで一人だったら……って、ああれ?
「ウルッフッフフ!!ばあさんの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロさまを――――!?」
タエ「……。」
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「ウルッフッフフ!!ばあさんの発したバッドエナジーが――――!?」
タエ「……?」
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「ばーさんの発したバッドエナジーが…………!!!」
タエ「…?」
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「バッドエナジーが―――――!!!!!!!」
タエ「?」
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「バッドエナジーがああああああ!!!!」
タエ「。」
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なお「バッドエナジーが出ない!!」
みゆき「どうして?」
キャンディ「ぜんぜん、ゼツボーしてないクル!」
ウルフルン「うるるるるるるる!!なぜだ!?なぜ絶望しない!?」
人間、生きていればどうしたって嫌な事はできる。不満、不安、恐怖。自分以外の全てを信用して生きている人間なんてない。必ず未来に不安を感じ、必ず周囲に不満を持つ生き物。
だけど。
タエ「絶望なんてしないわ。」
ウルフルン「これから先ずーっと悪いことばっかだぞ!」
タエ「生きていれば、そういう事もあるわよ。」
ウルフルン「ずーーーっと真っ暗なんだぞ!?」
タエ「天気が悪い日もあるものよ。でも、必ずお天道様は登ってくる。ずーっと真っ暗なんて事はないのよ。」
ウルフルン「………。」
タエ「何があっても、笑顔で一緒に生きていれば、きっと幸せはやってくるわ。」
“泣いてたらハッピーが逃げちゃう”
いつかのみゆきの言葉ですが、笑顔でいれば幸せはやってくる。スマイルをいつまでも。
みゆき「おばあちゃん……。」
あかね「さすがみゆきのおばあちゃん。」
れいか「心がとても強いんですね」
やよい「かっこいいーー。」
ウルフルン「く―――――。何が笑顔だ。こうなったら意地でも絶望させてやるぜ!!吠え面かくなよばあさん!!」
あかね「ご飯作りに行ってもうたで?」
「いでよ、スーパーアカンベェ!!」
今週は、縁側の蚊取り線香(入れ)から出てきた、豚の蚊取り線香アカンベェです。
ウルフルン「よしスーパーアカンベェ。あのばあさんもこの家もめちゃくちゃにしてやれ!!」
『ス〜〜パ〜〜アカンベェ!!!』
「そんなこと、させない!!!」
「“プリキュア・スマイルチャージ”!!!!!」
「Go!!Go!!Let’s go!!」
「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」
「太陽サンサン熱血パワー、キュアサニー!」
「ピカピカぴかリンじゃんけんぽん、キュアピース!」
「勇気リンリン直球勝負、キュアマーチ!」
「シンシンと降り積もる清き心、キュアビューティ!」
「「「「「5つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!!!!」」」」」
『ス〜〜パ〜〜アカンベェ!!!』
てっきり制御できないかと思われたスーパーアカンベェ。しかし、今日はなぜか素直にウルフルンの言う事を聞いておばあちゃんの家に向かって大きな拳を振りかざします。
ハッピー「はぁ!!」
マーチ「たぁ!!」
この拳を屋根でハッピーが受け止め、ひるんだ隙に、マーチの強烈なキックでバランスを崩します。
ピース&ビューティ「やぁ!!」
ふらついたアカンベェの胸を二人でパンチ、衝撃で後ろに倒れたところをサニーが受け止め、そのまま後ろの庭へ投げます。
あかね「どおりゃああああ!!!」
ハッピー「たぁ!!」
『アッカンベェ…!!』
ハッピー「おばあちゃんのたからものには、指一本触れさせない!!」
ウルフルン「あぁん?たからものぉ?どこに宝があるってんだ?」
ハッピー「これを見ればわかるハズよ。家、畑、川、山!ここにある全てが、おばあちゃんにとってのたからものなの!」
ウルフルン「けっ!」
サニー「でもなー。それやったら、わざわざ秘密にすることないなー思て。」
ハッピー「そうなんだよね?何で秘密にするのかな?」
ピース「ひょっとして埋蔵金とか?」
マーチ「いやまさか!」
ウルフルン「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!やれ!スーパーアカンベェ!!」
『アッカーーーーーー!!!』
豚の形を模した蚊取り線香入れは、筒状になっているのが特徴である。その筒の中に蚊取り線香を入れるのだが、アカンベェの筒からは、巨大な火の玉が出現し、それを大砲の砲弾のようにハッピー達に打ち込んできました。
「「「「「きゃああああ!!!」」」」」
見た目通りの威力らしく、一撃貰っただけで体が動かなくなるほどのダメージを受けたハッピー。
ハッピー「し、しまった……。」
キャンディ「プリキュア!!」
ウルフルン「ウハハ!いいぞスーパーアカンベェ!今だ!あの忌々しいばあさんの家を焼き払え!!」
ハッピー「!?」
ウルフルンの命令通りに大筒に火の玉を溜め込むアカンベェ。狙いを家にロックします。
ハッピー「やめてえええええええええええええ!!!!!!!!」
『アッカンベェ!!!』
しかし、ハッピーの叫びも虚しく、火炎弾は発射され、おばあちゃんのいる家に向かって一直線。
しかし。
ハッピー「え?」
ウルフルン「は?なんだ?」
突如、山から吹き荒れる突風が火炎弾とは向かい風に流れます。その余りの風の強さに、火炎弾は炎の勢いを消し、そのまま風と共にかき消えてしまいました。
ウルフルン「どわあああああああ!!!」
『ス〜〜パ〜〜!!???』
そのまま風の流れに飲み込まれてウルフルンとアカンベェも大きく吹き飛ばされてしまいます。
サニー「なんや今の―――。」
サニー「え?」
ハッピー「昔おばあちゃんに聞いた話……。山に吹く突風は、天狗さんが団扇で起こした風なんだって。」
ウルフルン「ええいしっかりしろ!スーパーアカンベェ!」
『あ、アカンベェ……!?』
そのまま川に落ちたアカンベェの足元を救う“何か”。
川に潜った何かを追いかけるウルフルン。アカンベェもそれに気を取られ―――。
ハッピー「――――。」
サニー「ようわからんけど、今やで。ハッピー。」
天まで羽ばたく天馬の翼。白きペガサスは純情の印。その輝きを受けて、5人は純白の衣を纏う。
「“プリキュア・プリンセス・フォーム”!!!!!」
「届け!!希望の光。」
天馬に跨り、それぞれのキャンドルに火を灯す。
「はばたけ!!未来へ!!」
描く星の繋がりはペガサスの星座に。その聖なる力を宿して。
「“プリキュア・レインボー・バースト”!!!!!」
5つの光は虹色へ。眩く輝いてアカンベェを包み込みます。
『アカンベェ〜〜〜……!?』
「輝け!」
ウルフルン「く――――やられた――――!?おんのれぇ!覚えてろ!!」
負け狼さんの遠吠えが、やまびこ となって家々に響き渡りました。
・・・・・・・・
タエ「残念ねぇ。せっかく、たくさん作ったのに帰っちゃったの、キツネさん」
あかね「あむ。美味しーーい!」
やよい「わたしお稲荷さん久しぶりー!」
なお「あたしはよく弟達に作るよ。」
れいか「さすがはなおねぇ。」
みゆき「……。ねぇおばあちゃん。」
タエ「ん?」
みゆき「おばあちゃんのたからものってさ……。」
タエ「―――。」
みゆき「ううん。何でもない!」
笑顔でそう言うみゆきを見て、おばあちゃんも笑顔で返します。
タエ「あら?」
そんな6人にひゅーひゅーと、心地よい山からのそよ風が吹き込みます。まるで、ここを守ってくれてありがとうと感謝しているかのように。
なお「またこの風……。」
れいか「でも、さっきよりずっと優しい風です。」
タエ「珍しいこともあるわねぇ。山のみんながお礼を言ってるわ。」
みゆき「山のみんな?」
タエ「あなたたち、何かいいことでもしたの?」
みゆき「……。」
きっとおばあちゃんは信じてくれるだろう。
きっとおばあちゃんなら応援してくれるだろう。
実は、私たち、プリキュアなんだ。
一瞬、本当にそう言おうかと思ったみゆきは――――。
タエ「まっ!―――じゃあ後で、北の祠に行ってみましょう。」
みゆき「ほこら?」
タエ「えぇ―――。きっと、山のみんなからお礼が届いているから。」
ひっそりと川辺に立つ祠には、魚と、お酒と、お餅が、綺麗に並べられていました。
ひゅ〜〜〜〜ドロドロドロ〜〜〜。
ぎゃーーーー!!!おばけーーーー!!!
妖怪さんの次は幽霊さんだよ。
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