亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第十節 第四歌 黒縄衆合地獄(序)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
パライソ、望月千代女を倒し、清姫様のピンチはなんとか脱することができた。ただ、これ以上自分たちが城近くにいれば、また誰かが狙われることになる。
一件が済んだことだし、村正さんとの約束を守って、一行はおたまさんの宿から庵へと戻ることになった。
へー。そういうの気にしないと思ってた。
そうだね、清姫のことが心配だけど。まぁ、柳生の爺さんがいるならまだ安心かな。
おっと、気配に気づかなかった。さすが忍者。
なるほど、これはとてもロボっぽい。さすがロボ少女。
(うーん、すっごい見てる。)
うん、その逆だと思う。
(何がそんなに嬉しいのやら・・・。)
一行は無事庵に到着。
慣れない世界だけど、ここはもう見慣れた景色で落ち着く。
村正んは口は悪いけど、世話好きですね。
なるほど、おぬいちゃんに聞かせられない話、か。
さすが武蔵ちゃん、ナイスフォロー。
・・・。食事が終わったら聞かせて欲しい。
焦ってる焦ってる・・・。
でも、嫌っていう風には聞こえないけど?
はしゃぐ武蔵ちゃんをどこか優しげな顔で見つめる村正。こと料理の話となると、村正さんは見たこと無い顔をよくする。
その夜。
ごちそうさまでした。
あら?小太郎?大丈夫、顔色が?
皆殺し・・・。
女性は二騎、男が一騎、あとはよくわからない。
滅び――――!
滅びたって・・・・。
相模って確か神奈川県のあたり・・・小太郎の故郷も、
未熟なんかじゃないよ。冷静でいられないのは仕方ない。
総勢1万人の大虐殺。
国1つを一晩で滅ぼす。
できる英霊も、いると思う。
一万の軍がやられて、その上相模国まで・・・。
そう、なのかもしれない。しかも女性の一人はバーサーカーだったはず。
残念だけど、拠点はわからない。オンリエドっていう言葉は聞いたけど。
ゆらりと、おぬいの前にそれは現れた。
にたぁ、と鬼が笑う。
おぬいちゃん!!
急いで様子を見に、、、って武蔵ちゃんもういない!速い!
外へ出る。気づけば空は真っ赤に染まっていた。
しまった、結界が張ってあると思って油断した・・・!
おぬいちゃん!!!
顔見知りというか、同一人物の別人と、顔見知りというか。。。。。。
そ、そうか。やはり形と人格だけは本人だけど、カルデアのとはまた別人だよね。
うん。笑えない。
ふたりとも、おぬいちゃんと田助を返せ!
薄々こんな気はしてたんだ。
既に敵対する覚悟はできている。
げっ!ここで鬼を!
わかってる!おぬいちゃんたちを助ける!
にんまり笑う頼光。その顔は知っている。
かつて鬼ヶ島で殺戮を楽しんでいた、牛御前の人格と同じ。
このまま二人を放っておいたら、また新たな犠牲が・・・。
おさえて村正!ここは慎重に・・・!
今にも飛び出しそうな村正を抑える。頼光ならその実力はかなりのものだ。今のこのメンバーで勝てるかどうか・・・・。
妖異の化物がおぬいちゃんの体を掴んで爪を立てる。一歩でも動けばその体に深く突き刺さるだろう・・・。
スパ。
何かを感じ取って、咄嗟に酒天童子は後ろに一歩下がった。その瞬間、酒天童子の横にあった木に大きな切れ込みができて、そのまま倒れた。
皆、力を貸して!
この二人の中の悪さなら知っている。それは例え、記憶の違う他人でも同じはずだ。よくうちのカルデアでも一緒のパーティに入れていると、お互いが「うっかり」相手に斬りかかってしまう。
だけど、今目の前にいる二人は、まるで息を合わせたようにお互い交互に技を繰り出してくる。
そういえば、全く相性が異なる二人だからこそ、連携したら強いって、ダ・ヴィンチちゃんが言ってたっけ。
村正は戦闘に向いていない。こちらは小太郎と武蔵ちゃん、段蔵で抑えるが、なにせ魔力ソースが違う。相手は明らかに強化されている。
おぬいちゃんは何も悪くないよ!すぐ助けるからね!
まるで遊びに飽きたかのように、酒天童子は高くその場でジャンプして姿を消した。
後を追うように頼光も消え、そして、おぬいちゃんを捕らえていた怪物も、おぬいちゃんごと姿を消した。
はい!必ず助けましょう。
一行はおぬいちゃんが連れて行かれた裏山を目指すことになった。
100%罠だが、それでも、おぬいちゃんを救う手は他になかった。