スマイルプリキュア!第42話「守りぬけ!なおと家族のたいせつな絆!!」
あたしの名前は緑川なお。あたしには、たくさんの兄妹がいます。上から、けいた、はる、ひな、ゆうた、こうた。
そして、もうすぐ新しい家族が増えるんです。
こうた「おかーさん!」
あたし、家族が大好きです。七人姉弟のお姉ちゃん。がんばります!
源次「じゃあ、病院に行ってくるからな」
なお「うん―――。はい!みんな整列!」
玄関前で母とも子を見送るなお。大きくなったお腹を抱えた母は、病院で出産に備えるとのことでした。
なお「せーの!」
「「「「「「いってらっしゃーい!!!がんばってー!!!!」」」」」
とも子「ありがとう。元気な赤ちゃん、生んでくるよ。なお、今日一日みんなのことを頼んだからね」
なお「うん!あたしに任しといて!」
新たな命にときめく緑川家。いつもは面倒を見てくれるお母さんも今日は病院。なおがしっかり面倒みないといけないからさぁ、大変!そして、迫り来る怪しい影が……。
スマイルプリキュア!第42話「守りぬけ!なおと家族のたいせつな絆!!」
久々に登場。ある休日の昼下がりのふしぎ図書館。
みゆき「へぇ〜〜!!じゃあ今日か明日には赤ちゃん生まれるんだ!!」
れいか「えぇ、今朝からご両親は病院の方へ行っているそうです。」
一人来ていないなおの事情を知っていたれいかは、みんなに説明しました。
あかね「妹たちの世話してんのか〜」
やよい「大変だね〜」
れいか「なおは、張り切ってましたよ。」
なお「(あたし、今日一日お母ちゃんに弟たちを任されてるんだ。もうじき、七人姉弟のお姉ちゃんになるんだもん!がんばんないとね!)」
今朝、電話口でなおから今日遊べなくなったことを聞いたれいかは、楽しそうに話すなおを思い出していました。
やよい「そっかー」
あかね「さすがなおやな!」
みゆき「楽しみだねぇ!わたしも赤ちゃん抱っこしたーい!」
キャンディ「キャンディもクルー!」
みゆき「ねぇねぇ!わたしたちも何か、なおちゃんのお手伝いをしようよ!」
・・・・・・・・・・
グツグツと煮えたぎる大鍋から浮かぶ不気味な程艶のあるりんご。それをそっと鍋から取り出して笑みを浮かべる魔女。
マジョリーナ「ヒーッヒッヒッヒッヒッヒ!」
いつもの笑顔はどこへやら、裂けたように広がった口を開いて、赤い眼でマジョリーナを睨みつける道化師がそこに立っていました。
ジョーカー「何の用?ずいぶん余裕ですねぇ……。ピエーロ様がお怒りです」
マジョリーナ「ピエーロ様が!?」
ジョーカー「お気づきになりませんか?最近見かけないウルフルンさんとアカオーニさんを……。」
マジョリーナ「―――――!?」
ジョーカー「次が最後のチャンスです。」
軽く掴みどころの無いいつもの口調とは反して、その言葉にはどこまでも暗い重みがありました。
ジョーカー「貴方のへそ曲がりで、直球勝負のキュアマーチを倒してください。もし、倒せなければ―――――」
マジョリーナが目線を避けた先には、大鍋の底から吹き出した動物の骨が、鍋の表面をぷかぷかと漂っていました。
マジョリーナ「――――ッ、もちろんだわさ……」
ジョーカー「んふふふふふふふ。よろしくお願いします。」
ごくり。冷たいその声色に乾いた返事をして、マジョリーナは生唾を飲み込みました。
・・・・・・・・・
夕食の食材を買うために、なおは弟たちを引き連れて、七色ヶ丘町名物の商店街にやってkました。
「「「「「カレー!カレー!カレー!」」」」」
八百屋「おぉ!なおちゃん!今日はお揃いでどうしたんだい?」
ひな「んーとね、あかちゃんがうまれるの!」
ゆうた「びょういんでね、うまれるんだよ!」
八百屋「お、いよいよかぁ〜」
なおの母とも子が店にくる度に、少しずつお腹が大きくなっているのを知っていた八百屋の主人は、今日がその日だと知って嬉しそうにはしゃぐゆうたとひなの頭を撫でました。
なお「だから、今日はあたしがみんなの大好きな“お母ちゃんカレー”を作るんです!」
八百屋「へぇ〜」
けいた「はい、なお姉たまねぎ!」
はる「じゃがいももー」
なお「ん、サンキュー。」
お馴染みのカレーの食材を手に取ってなおに渡すけいたとはる。真似をしてゆうたとひな達も八百屋さんの中を見渡します。
ゆうた「ん〜〜〜と」
八百屋「はい、にんじんはサービスだ」
ひな「ありがとー!」
ゆうた「なお姉ちゃんにんじーん!」
八百屋さんからにんじんを受け取り、喜んでなおに渡すゆうたとひな。
なお「おじさんありがとー!」
肉屋「おぉ?なおちゃーん!」
なおがにんじんを受け取ってお礼を言うと、今度は向かいのお肉屋さんが気づいて声をかけてくれました。
なお「あ!お肉屋さんこんにちは!カレー用のお肉ください!」
けいた「やったー!」
ゆうた「おにくー!」
八百屋「緑川さんとこ、産まれるんだってさ!」
肉屋「そうかー!そりゃお祝いしなくちゃなー!はい、いっぱいサービスしといたよー!」
そういってお肉屋さんは、袋いっぱいにお肉を包んでくれました。
なお「わー!おじさんありがとー!」
・・・・・・・
マジョリーナ「もう失敗は許されないだわさ……。」
発明品の開発も途中で投げ出して、ジョーカーに言われるままに人間界の空を飛び回るマジョリーナ。
マジョリーナ「ん?」
ふとマジョリーナが下を見ると、カレーの歌を歌いながら、楽しそうに歩いていたなおを見つけました。
マジョリーナ「ん―――。閃いただわさ!」
・・・・・・
家に帰ってからは早速夕食の仕込み。カレーは煮込む時間も大事なので、陽が昇っているうちからなおは支度を整えていました。
なお「くー!たまねぎ目に沁みるー!」
刻んだたまねぎを前に涙目になるなお。
こうた「おかーさー」
ゆうた「お母さんはびょういんだよ?」
ひな「ゆうたもこうたも、お兄ちゃんになるんだから、いい子にね」
ゆうた「うん!」
こうた「…………あい!」
ひな「わたしは、なお姉ちゃんみたいになるんだ……」
こうたとゆうたの面倒を見ながら、けいたとはるとなおが台所で支度をしているのを見ていました。
なお「けいた、テーブル拭いて」
けいた「おっけー」
なお「はる、スプーンは大きいほうね」
はる「はーい」
なお「あ……!」
準備もそこそこにカレーを煮込み始めた時、なおはふとある事を思い出しました。
けいた「どうしたの?」
なお「りんご買うの忘れちゃったー。お母ちゃんカレーは隠し味にりんご入れるのにー」
けいた「ドジだなぁ……どうするの?」
なお「んー、どうしよう。また買いに行ってたら夕飯遅くなっちゃうし……。」
ゆうた「――――ひな姉ちゃん!」
ひな「――――?」
ゆうた「りんご!」
ひな「うん!」
こうた「……?」
なおとけいたが悩んでいる隙に、ゆうたとひなは二人で家を飛び出して、商店街へ向かいました。
・・・・・・
みゆき「わたしたちにも小さい子の遊び相手とかならできるよね」
キャンディ「キャンディもてつだうクル!」
やよい「わたしも一緒にお絵かきしよっと」
みゆきの案で今日はなおの家に行って、一緒になおの手伝いをする事にしたみたいです。
あかね「なおも七人姉弟のお姉ちゃんかー。お姉ちゃんのプロやな!」
れいか「なおが初めてお姉さんになった時のこと、今でも良く覚えています……。」
ふと、感慨に耽るようにれいかは空を見上げ、あの日あの時、緑川家にこうたが産まれた時になおの家に行ったことを思い出していました。
なお「(ねえ、れいかちゃん。)」
れいか「(ん?)」
なお「(わたし、お姉ちゃんになったんだよ。ふふふ)」
れいか「―――――。家族は、なおの大切な宝物です。」
みゆき「――――うん!」
あかね「せやな」
以前みんなで遊んだなおの家が見えてきた時、玄関から慌てた様子のなおが飛び出してきました。
みゆき「あ、なおちゃん!」
なお「――――みんな!!」
みゆき「……どうしたの?」
けいた「なお姉!」
はる「なお姉ちゃん!」
後からけいたとこうたをおぶったはるもやってきました。
なお「ひなとゆうたが、どっかへ行っちゃって……」
「「「「えぇ!?」」」」
ゆうた「りんごどこにあるの?」
ひな「しょーてんがいのおみせだよ」
その頃二人は手を繋いで、川に架かった橋を歩いていました。なおの家は川沿いの民家なので、橋からはそう離れていません。
マジョリーナ「ヒッヒッヒッヒッヒ。チャンスだわさ!」
それをタイミングを待っていたのかようにマジョリーナが怪しい笑みを浮かべて迫ります。
・・・・・・
なお「ひな!ゆうた!!」
心当たりのある場所を探すなお。
みゆき「ひなちゃーーん!!」
キャンディ「ひなちゃんクルー!!!」
迷いそうな住宅街を走るみゆきとキャンディ。
あかね「ゆうたくーーーん!!」
見通しの良い歩道橋に登って大通りを探すあかね。
近所の人に声をかけてみるれいか。
子供が遊んでいそうな公園を探すやよい。
しかし、5人がどこを探してみても2人は見つかりません。少しずつ日も傾き始め、徐々に東の空に暗がりが広がってきました。
なお「はぁ……。はぁ……。」
みんなのことを、頼んだからね。
今病院でがんばっているお母ちゃんの顔がなおの脳裏に過ぎります。焦る気持ちが募るばかりで、一向に2人は見つかりません。
けいた「なお姉――――!」
はる「なお姉ちゃん!あのね―――!」
なお「けいた!はる!」
息を切らして走ってきた2人は、けいたの背中でじっとしていたこうたを見ました。
こうた「りんご」
なお「りんご……?―――――は!!」
その頃、ひなとゆうたは先程買い物にきた八百屋に着きました。しかし、手ぶらでお金を持ってきていない事に気づいたひなは、ゆうたを引き止めてそっと八百屋を離れて家に帰ることにしました。
ひな「お金がないとりんごは買えないんだよ」
ゆうた「どーするの?」
ひな「どーしよう」
マジョリーナ「りんごが欲しいだわさ?」
「「え??」」
・・・・・・・・・
なお「おじさーーん!!ひなとゆうた見なかった!?」
一直線に商店街に向かったなお。2人がそこにいる事を祈って駆けつけましたが、店内を見回しても2人の姿はありません。
八百屋「え?あ――――そういえばついさっきそこに居たんだけどなー。」
なお「え――――。」
八百屋「いつの間にかいなくなってて。」
なお「やっぱりりんごを……」
八百屋が指差した斜め向かいの薬屋さんのショーウィンドウには、お馴染みのマスコットが飾ってあるだけです。
けいた「まだ近くにいるかもしれねぇ!なお姉、行こう!」
なお「おじさん、ありがとー!」
八百屋「まだ遠くには行ってないと思うよーーー?」
・・・・・・
その頃、商店街と緑川家のちょうど中間くらいの河川敷。
マジョリーナ「さぁ、美味しい美味しいりんごだわさ」
マジョリーナが差し出したりんごに目を輝かせるひなとゆうた。
マジョリーナ「特別にお前達にあげるだわさ」
ひな「え!いいの?」
マジョリーナ「どうぞだわさ」
「「ありがとー!!」」
マジョリーナからりんごを受け取ろうとして手を伸ばしたその直後。
「「う、うわああああああ!!!」」
突如、何十倍にも膨らんだりんごに閉じ込められてしまう2人。マジョリーナの罠によって2人とも捕まってしまいました。
マジョリーナ「ヒーッヒッヒッヒッヒッヒ!」
なお「ひなーーー!!!ゆうたーーーー!!!」
ひな「なおお姉ちゃん!!」
その時、商店街から戻ってきたなお達が、ちょうど駆けつけました。
マジョリーナ「あれは……」
なお「ひな!!ゆうた!!」
なお「マジョリーナ!?―――――く。」
ひな「なおお姉ちゃん!」
ゆうた「なお姉ちゃん!!」
格子のようになったりんごの隙間から助けを呼ぶ2人。しかし、その間にマジョリーナが立ち塞がります。
なお「―――――2人を放して。」
マジョリーナ「あたしにゃもう後がないんだよ。今日こそ倒してやるだわさ、キュアマーチ!!」
けいた「きゅあまーち?」
はる「なにそれ……」
なおに向かって威勢良く言うマジョリーナ。しかし、その意味を知るのはなおしかいません。咄嗟にスマイルパクトを取り出すなおですが、今は弟たちみんなが自分を見ています。
なお「く―――――。」
マジョリーナ「どうしただわさ?来ないなら、こっちから行くだわさ!!」
なお「―――――走れ!!」
なおはこうたを抱えてけいたとはると共に反対方向へ走り出しました。しかし、マジョリーナは箒に乗ってどんどん追いついてきます。
なお「(どうしよう、このままじゃ……。でも、けいたたちの前で変身なんて……。)」
はる「あ!」
と、その時、はるがつまづいてその場に転んでしまいます。
なお「はる!!!」
マジョリーナ「覚悟するだわさ!!」
このまま隠し続けていくより、今目の前の家族を救いたい―――――――。
なお「―――――!!!」
けいたにこうたを預けて、なおははるとマジョリーナの間に立ちます。
マジョリーナ「んん?」
なお「あたしの姉弟には、指一本触れさせない―――――!!!!」
『Lady?』
「プリキュア・スマイル・チャージ!!!」
『Go!Go! Let’s go march!!』
「勇気リンリン、直球勝負!キュアマーチ!!!!」
はる「――――――――」
けいた「なお姉――――。」
意を決して弟たちの前で変身したキュアマーチ。余りのことにけいた達は唖然としてしまいます。
マーチ「けいた。はるとこうたを連れて下がってな。」
けいた「あ……うん。」
マジョリーナと対峙するその姿。しかし、その声は確かに自分たちの大好きなお姉ちゃんの声でした。
マジョリーナ「やっとやる気になったか、だわさ!!!!」
白紙の未来を黒く塗りつぶし、そして、けいたたちからバッドエナジーを吸い取ってマジョリーナは本の中に吸収してしまいます。
マーチ「ひな!ゆうた!けいた!はる!こうた!!」
りんごの中に閉じ込められているひなとゆうた。そして、駆け出したけいた、はる、こうたまで絶望に包まれ、
マジョリーナ「出てよ、ハイパーアカンベェ!!!」
自分が檻に使っていたりんごをそのままアカンベェにしたマジョリーナ。
巨大なりんごに顔がついたアカンベェの顎部分には、まだ閉じ込められたままのひなとゆうたがいました。
マーチ「ひな!ゆうた!」
マジョリーナ「どうだわさ?攻撃できないだわさ!!そして、これがお前の弱点だわさ!!」
マーチ「っは――――!!!」
その場で膝から崩れているけいたたちに向かうアカンベェ。咄嗟にマーチは間に飛び込んで、アカンベェのパンチを受け止めます。
マーチ「ぐ―――――、あああ!!!」
衝撃で弾き飛ばされるマーチ。しかし、アカンベェの攻撃はそれだけではありません。
マジョリーナ「ほらほらほらほらほら!!!!」
『ハイパ〜〜〜〜〜!!!!』
今度は口を開けて中から種を飛ばして攻撃するアカンベェ。狙いはやっぱり逃げられないけいたたち。マーチはまたも間に立って種を叩き落としますが、その体にも大粒の種はダメージを与えます。
マーチ「きゃあああああああああああ!!!!」
マジョリーナ「傑作だわさ!どんな攻撃も自分から喰らいに来るだわさ!」
マーチ「はぁ……はぁ……。弟たちは、わたしが絶対に、守る!指一本、触れさせない!!」
けいた「な……お……ねぇ……。」
マーチ「家族を……守るんだ……。」
しかし、まともに受けた攻撃の痛みはマーチの動きを制限します。
マジョリーナ「トドメだわさ!!!」
そんなマーチに向かって大きなエネルギー弾を構えるアカンベェ。マーチは後ろの弟たちをかばって、そこから動くことができません。
マーチ「―――――――え…」
マジョリーナ「な…………」
けいた「やめろーーー!!!」
はる「なお姉ちゃんをいじめないでーーー!!!」
こうた「あえーい!!!」
そんなマーチの前に、今度はけいたたちが間に立ちます。両手を広げ、その攻撃を受けようとばかりに。
マーチ「けいた……、はる……、こうた……。」
ゆうた「姉ちゃーーーん!!!」
ひな「お姉ちゃーーーん!!!」
なお「ひな……、ゆうた……。」
みんなマーチをお姉ちゃんと呼び、そしてアカンベェに立ち向かっています。
マジョリーナ「やかましい!!全員まとめて消してやるだわさ!!!」
マジョリーナがさらに力を込めると、アカンベェのエネルギー弾はさらに大きくなりました。
マーチ「けいた!!はる!!!逃げて!!!!」
マジョリーナ「逃がさないだわさ!!!!」
けいた「お姉ちゃん―――――」
『アカァァンベェ!!!!』
自分が守らなくちゃいけない。そう約束したんだ。そう決めたんだ。そう思ったんだ。
自分がお姉ちゃんだからとか、自分が一番年上だからとか、自分がしっかり者だからとか、そんなんじゃない。
ただ、みんな大好きで、みんな欠かせなくて、みんな―――――――守りたい。
マーチ「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
気づいたら足が動いていた。光に立ち向かっていた。
マジョリーナ「ガキもろともお終いだわさ!!!!」
マーチ「家族は……絶対に……あたしが守る!!!!!!!!!!1」
いつも強くて、まっすぐて、どこまでも素直で正直で、そして、誰よりも仲間を想っている強い絆。
風が、大きな風が、吹きました。
『アッカン!?』
マジョリーナ「な、なんだわさ!!!?」
取り巻く渦は自然の流れ。
取り込む風は全てを弾き飛ばす暴風。
そして、全てを包み込む柔らかい息吹。
マーチ「ゆうたとひなを、返せ!!!」
『ハイパー!!!!』
マーチ「ああああ!!!」
アカンベェの種マシンガン。しかし、発射するタイミングではもうマーチは走り出していました。その一歩一歩に風が巻き起こり、疾風怒濤の勢いでアカンベェに迫ります。
マジョリーナ「ぐあああ!!!もう後には……」
真下に潜ってからのハイキック。体勢を崩すアカンベェ。
マジョリーナ「引けないんだよおおおおおおおお!!!!」
マジョリーナタイム。全盛期の若さを取り戻して力を増大させるマジョリーナ。
マーチ「だああああああああああああああああああああ!!!!」
マジョリーナ「はああああああああああああああああああ!!!!」
重いキックとパンチの応酬。打ち出される威力は今まで以上に激しく、速い。
マジョリーナ「鬱陶しいわああああああ!!!!」
自我を失うほど力を暴走させるマジョリーナ。それに合わせて肥大化したアカンベェがマーチに襲いかかります。
『アガガ〜〜〜!!!!』
「“プリキュア”――――――!!!!」
蹴り上げた右足を戻しながら、そのまま猛スピードで回転するマーチ。それはプリキュアの力と相まって、激しい突風がマーチを包んで竜巻を生み出しました。
「“マーチ・シュート”―――――――!!!!!」
風に包まれた右足はそのまま軸足を中心に最大限の遠心力をがかかり、そのまま風そのものを巻き込んで、強烈なハイキックをアカンベェに浴びせます。
「“インパクトオオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーー”!!!!!!!!!!!」
マジョリーナ「ぐああああああああああああ!!!!」
竜巻に巻き込まれながら、アカンベェの巨体が大空に舞いました。
マジョリーナ「く―――――、ここで終わるわけには―――――。」
マジョリーナ「イカネエンダヨオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
『アッガーーーーーー!!!!』
アカンベェから打ち出された極大のエネルギー弾。それは、マーチを弾き飛ばし、そのまままっすぐけいた達のいる河原へ向かって飛んで行きました。
マーチ「はっ!!!」
マジョリーナ「ふ。指をくわえて見てるがいい!!」
マーチ「あ……あ………」
マーチ「ああ、ああああ!!!」
迫る巨弾。
けいた「あああ!!」
はる「きゃあ!!」
しかし、空にいる自分には手を伸ばすこともできません。
マーチ「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
激しい地鳴りとほぼ同意に、河原に爆音が鳴り響きました。
マジョリーナ「っはっはっはっはっは!!!どうだ!!思い知ったか!!!」
マーチが着地した時には、爆発の衝撃で煙が立ち込めた後でした。プリキュアの状態でさえ身を引き裂かれるほどのダメージを生身の人間が受けては……。
マーチ「けいた……。はる……。こ…うた………」
全身から力が抜けていく絶望感。その味をたっぷり楽しむかのように見ていたマジョリーナは、立ち込める煙の中の人影を目にしました。
サニー「マーチ!!大丈夫か!!」
予想もしなかった友の声にマーチは顔をあげ、けいたたちの前で爆発を跳ね返していたハッピーとサニーがそこにいたのに気づきました。
マジョリーナ「なに!?」
ビューティ「はあああああ!!!!」
その隙に氷の刃でビューティが一閃。アカンベェの格子を外してピースがゆうたとひなを助け出します。
マジョリーナ「しまった!」
「「おねえちゃん!!!」」
「なお姉!!!」
「「お姉ちゃん!!!」」
みんながマーチに飛びつき、その不安を支えてもらおうとぎゅっと寄せ合います。涙を流しながらしかし5人はみんな無事にマーチの元に帰ってきました。
その手をそっとたぐり寄せ、みんなをさらにぎゅっと抱きしめるマーチ。いや、今はプリキュアとしてではなく、緑川なおとして、大切な家族を守るために、なおはきつく抱きしめました。
なお「良かった……。良かった……。」
マジョリーナ「貴様ら、余計な真似を!!」
『ハイパーーアカンベェ!!!』
『Let’s go!!“KA・SA”!!』
再び向けられた種マシンガンをキャンディがカサデコルのカサで防御します。
ハッピー「わたしたちの友だちと、その家族には、手出しさせない!!!」
マーチ「――――――――うん!」
「開け!ロイヤルクロック!!」
奏でるリズムと共にキャンディのひと押しで、時計の針がひとつ、進みます。
「みんなの力を一つにするクル!!」
「届け!!希望の光。」
「はばたけ!!光輝く未来へ!!」
描く星の繋がりは鳳凰の星座に。その聖なる力を宿して。
新たな力、何度でも諦めずに、立ち向かう、不死鳥の燃え上がる力をその翼に。
「“プリキュア・ロイヤル・レインボー・バースト”!!!!!」
『アカンベェ〜〜〜……!?』
「輝け!」
『アカ〜〜〜〜〜ンベェ!?』
・・・・・・
マジョリーナ「あ、あたしはどうなってしまうだわさ……」
・・・・・・
やよい「眠っちゃった…。」
あかね「疲れたんやろな。」
いつの間にかベンチでけいたたち5人はぐっすり眠っていました。
れいか「怪我がなくてよかったです。」
みゆき「うん。」
なお「みんな、ありがとう。本当に……ほん…とうに……ありがとう……」
俯いてお礼を言うなおの目からは、大粒の涙が。
みゆき「なおちゃん。」
そんななおを静かに抱き寄せるみゆき。なおもみゆきの肩に顔をうずめて涙を流します。
なお「うぅ……怖かった………怖かった……怖かったよ……」
みゆき「大丈夫、大丈夫だよ。みんな、一緒だから。」
そっと背中に手を伸ばし、すぐそばに自分がいる事を証明するかのように、みゆきは優しくなおにそう言いました。
源次「なおーーー!なおーーー!」
声を聞いて振り返ると、河原に架かる橋の上でトラックの窓から源次が顔を出していました。
なお「お父ちゃん!」
みゆき「もしかして!!!」
なおを先に行かせた後、みゆきたちもなおを追って病院に向かいました。
・・・・・・
ひな「なおお姉ちゃん、わたしね、変な夢みたの」
なお「え?」
けいた「お、おれも、よく覚えてないけど、なお姉が戦ってた!!」
なお「いぃ!?」
「「「「えぇ!?」」」」(やよいだけ嬉しそう)
はる「あ、あたしも見たよー!なお姉ちゃんかっこよかったー!」
ゆうた「ぼくもぼくもー!」
こうた「あい!」
なお「あっはははははははは!!ふ、不思議だねぇ……」(汗)
冷や汗を流しつつ、その場をやり過ごそうとした時、病室の中から赤ん坊の声が聞こえてきました。
源次「お!!!」
「「「「あ!!!」」」」
なお「可愛い…女の子。」
お母ちゃんの出産は無事終了。元気な女の子が産まれてきました。
源次「名前は結(ゆい)だ。」
とも子「人と人との絆を結びつけてくれる。そんな女の子になって欲しいって願いを込めてね」
なお「ゆい……。」
すっとゆいの頬に伸ばしたその指から、ほのかな温もりがなおに伝わります。とても小さな命。その寝顔を見ているだけで、なおは嬉しくなって自然と笑顔になりました。
けいた、はる、ひな、ゆうた、こうた、そして、ゆい。
あたし、家族が大好きです。
消えた三幹部と動き出したジョーカー。そしてバッドエンドカウントは残り2つ!!事態は急速に変動する中、れいかに留学の話が舞い込む。
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