【毎日更新】line walker ゲームプレイ日記

毎日欠かさず更新して約11年目・・・・・。FGOとホロライブ・ホロスターズ中心のブログです。

スマイルプリキュア!第36話「熱血!?あかねの初恋人生!!」







 ※色々解釈があると思いますが、敢えて乙女脳内補完でやってます。コレジャナイ感もあるかと思いますがご了承ください。

























 最初は夕焼け空の放課後の土手。



 珍しくみんなの都合が合わずに一人で帰った日のこと。



あかね「ブロック! ……レシーブ! ……トス!」



 見えないボールを見立ててさしずめシャドウバレーとでも言いましょうか、ボールを打つ姿勢を繰り返しながらあかねは土手を歩いていました。



あかね「アターック!!って―――うぉあああああぁぁぁぁぁーーーー!!」



 調子に乗って飛び上がって見えない中空に一撃を入れた時、着地に失敗してあかねは足を滑らせてしまいます。

 それはそれはコントのようにゴロゴロと土手を転がって、ようやく止まった時には草まみれになって地面に転がっていました。


「Are you OK?」


あかね「へ?」


 不意に飛び出したネイティブな言葉が、自分に向けられているのに気づくのにあかねは少し時間がかかりました。




 転がった衝撃で上下の区別がまだあやふやなまま片目を開けて誰かが手を伸ばしているのに気づきます。自分のみっともなさに若干情けなくなりながらも、あかねはその手を掴んで体を起こします。


あかね「ど、どうも……」


 握った手はあかねより一回り大きく、あかねは自分よりも真っ白なその手を見つめます。そうして、手の主が男の人だと気づいた時には、そばかすの上のメガネ越しに映る真っ青な目と目が合いました。まっすぐこちらを見返す顔は、にっこり笑ってさわやかな金髪の髪を土手の風になびかせます。


あかね「ふぁ!?」


 反射的にあかねは差し伸べた手を引っ込めて、微笑む男を凝視します。


「ケガ、ナイデスカ?」


あかね「へ……?あぁ!へーきへーき!ぜんぜん………」


 続く言葉を言おうとしたあかねは、彼の着ているTシャツにその言葉が偶然書かれていた事に気づきます。


あかね「大…丈夫…。」


「Good!」


 一割増しに微笑む男は、そのままあかねの横を通り過ぎて行きます。


「Bye」


あかね「ば……バーイ……。」


 またも反射的に返事をしつつ、遠ざかっていく背中を見送ります。手を取られたその右手をじっと見つめて、“ただ手を差し伸べて起こしてもらっただけ”の今のやり取りに違和感を覚えます。


あかね「なんや……?」







 翌日。学校。








 昨日からずっと土手での事が頭から離れないあかね。ふと気づけば無意識に右手を見つめている自分に気づきます。
ぼーっと朝のHRを聞き流していると、教室に入ってきた男、いや男の子に気づきます。金髪にそばかすメガネ。それは昨日の土手で出会った彼でした。


あかね「ああーーー!!!だいじょうぶ!!!?」


先生「日野さん?」


「Oh!!」



 悪と戦うプリキュアだって女の子。勉強も大事だけど、たまには恋だって。土手で出会った素敵な彼は外国人!?







スマイルプリキュア!第36話「熱血!?あかねの初恋人生!!」




 Brian Taylor(ブライアン・タイラー)。敢えて崩さずにわかりやすくはっきりとブライアンは自分の名前を黒板に書きました。


先生「という訳で、交換留学生としてイギリスから来たブライアン君です。今日から3週間、みんなと一緒に勉強します」


ブライアン「ヨロシク、オネガイ、シマス」


 ぺこりと頭を下げるブライアン。


先生「日野さん、放課後ブライアン君に学校を案内してくれる?知り合いみたいだし」

あかね「え、えええ………!?」





・・・・・



みゆき「ごめーーーーん!実は今日やよいちゃんとロボッターのDVD観る約束しちゃってぇ……」


パン!と両手を合わせるみゆきとやよい。顔はスマイルですが、ゆっくり後ずさりしながら申し訳なさそうにあかねに謝ります。


あかね「なんやねんそれぇぇ!」


なお「あたし達も部活だから」


あかね「ええええええ!!」


 放課後一人だけでは心細いので、みんなと一緒に学校案内しようと計画していたあかねでしたが、モロくも崩れ去ります。


あかね「どないせえっちゅうの……うち英語なんかわからへん……。」


 あかねは勉強の中ではいの一番に英語が苦手です。


ブライアン「オマタセ、シマシタ」

あかね「うぁ!?」


 不意に話しかけられて戸惑うあかね。教室に残ったのはあかねとブライアンだけです。


ブライアン「What’s a name?」


ブライアン「アナタ、ナマエ、ナンデスカ?」




あかね「え、えーーっと……マ、マイネームイズアカネ!」


 なんとか覚えている知識を総動員させて、返答するあかね。


ブライアン「アカネ!ヨロシク!」


あかね「あ……こちらこそ…。」


 すっと伸ばした手を改めて見つめて少し戸惑いながらも、あかねは握手し返してにこりと(若干ひきつって)笑い返します。



・・・・・



 とりあえず、学校で行きそうな教室をブライアンと一緒に回るあかね。なんとか手近な単語をつないでつないで会話を成立させようと頑張ります。ブライアンは日常会話程度は日本語ができるらしく、あかねはそれでだいぶ助かりました。



あかね「ここが音楽室。え……ミュージックルーム?」



あかね「ここが図書館。ブ、ブックルーム?」



あかね「え………えと、リカ(理科)ルーム?」(○ Science room)



 いまいち自身が持てずに全部疑問形で説明しつつも、校内を順繰り回っていきます。


あかね「伝わってんのやろか……?」


ブライアン「アカネ!」


 ぽんと後ろから肩に手を置かれて思わず飛び上がるあかね。


あかね「うぉ!な、何?」

ブライアン「アブナイ」

あかね「え?」


 二人が止まったのは体育館前。教室のより一回り大きい扉をブライアンがあかねを静止して開けます。


ブライアン「ドウゾ」

あかね「え?いや、自分で開けられるし」

ブライアン「Ladies first !」


あかね「レディ?うちはそんなんちゃうて……。」


 イマイチ向こうの人のレディとこっちのレディの意味が違いますが、なんとなく照れくさいあかね。


ブライアン「アカネ、オンナノコ、アカネ、レディ」


あかね「へ…………?な、なんやねん!!それ!!!」





 ブライアンの言ってる事は、特に深い意味はありませんが、日本語のレディと言うと、お淑やかな淑女。と云ったイメージがどうしてもありますね。


あかね「えーっと、それより他になんか見たいもんある?好きなもんとか?」


ブライアン「Oh !! チャンバラ!キモノ!サムライ!」


 お決まりの外国人のカタコトテンプレをドヤ顔モーション付きであかねに見せるブライアン。


あかね「いつの時代やねん!………これはあかん、うちが正しい日本を教えたらな!」




・・・・・・



 そう言ってあかねは、ブライアンを剣道場に案内します。七色ヶ丘中学校は部活動の施設が整っているのも、ウリの一つです。


「面!!――――――胴!!」


 中では女子剣道部が放課後の練習試合をやっていました。その場で見学という形であかねとブライアンは正座して見学します。


ブライアン「Wao !! チャンバラ!!」

あかね「No!これは剣道」

ブライアン「ケンドー?」




・・・・・


 次に案内したのは、着物が見られる茶道部です。ちょうどお茶会を立てていたので同席する事に。


ブライアン「キモノ!」

あかね「これは茶道」



・・・・・


 そして最後にれいかが練習していた弓道部です。事情を説明してれいかに弓を射ってもらいました。


ブライアン「ニンジャガール?」

あかね「これは弓道


 ギリっと引いた弓を離すと勢い良く矢が的目掛けて放たれ、スカン!という景気の良い音が道場内に響きました。




ブライアン「Cool !!」




・・・・・


 そんなこんなで色々と学校内を紹介していたら日が暮れかかっていました。昨日とよく似た空の下、あかねとブライアンは案内し終わった校舎を後にします。


あかね「すっかり遅くなってもーたなー」

ブライアン「アカネ!」


 無意識にいつもより早めに歩いている自分を、後ろからブライアンが呼び止めます。今日一日ずっとそうでしたが、下の名前を男子に呼び捨てにされた事の無いあかねは、ブライアンにそう呼びかけられる度に、ビクっと驚いていました。


あかね「なんや……出しっぱなしやん。」


 あかねが振り返るとブライアンは落ちていたバレーボールを持っていました。おもむろにそれをあかねに投げると、あかねも反射的にレシーブの姿勢を取ってボールをブライアンに打ち返します。


ブライアン「アカネ!ジョウズ!」

あかね「そりゃウチ、バレー部やし。なんや、あんたもバレーボール好きなんか?」


 あかねのレシーブをトスで受けて返すブライアン。


ブライアン「Volleyball.」

あかね「え?」

ブライアン「Vo−lley−ball.」

あかね「バレーボール?」


 ブライアンが何が言いたいのかわからないあかねは、ボールを返し合いながら聞き返します。


ブライアン「Volleyball.」

あかね「バレボー?……あ、ヴァリィボー」




ブライアン「Good !」


 夕陽を背に微笑むブライアンに思わずあかねは胸が高鳴ります。


あかね「ブライアン!明日はバレー部見に来る?あ……ヴァリィボー クラブ!」

ブライアン「OK !!」

あかね「よっしゃ!」





・・・・・



 なんだかんだでブライアンと打ち解けたあかねですが、ここに来て疑惑が1つ。




 某所不思議図書館。



あかね「そしたらすっかりバレー部に馴染んでしまってな。最近ではもう練習に混じってるのん」

なお「あかねはすっかりブライアンのお世話係だね」

れいか「言葉は大丈夫なんですか?」

あかね「あー。そういや意外となんとかなってるな。まぁ……ブライアンと話す分には英語も……」


 何かまんざらでもない表情を浮かべるあかね。それをじーっと見つめるやよい。


あかね「な……なんや…?」







やよい「あかねちゃんさ……最近ブライアンの話しかしないよね?」

あかね「え……?そう?」

やよい「……。」

あかね「そうかな……。」


 ふいに話しかけられて振り返るものの、あかねは特に意識した覚えはないので、やよいが何を言いたいのかはこの時までわかりませんでした。


やよい「あかねちゃんさ……もしかして……。」

あかね「なに?」













やよい「ブライアンのこと、好きなの?」

あかね「え」




 ・・・。





あかね「ええ?」



 瞬間。ざざっと4人があかねを取り込むように立ち上がります。びっくりして立ち上がるあかねですが、あっという間に部屋の隅に追い詰められてしまいます。


やよい「そうなの??そうなの??」

あかね「知らん知らん!!そんなの知らん!!」

みゆき「じゃあわかった!!あかねちゃん!!ブライアンと居て、ドキドキしたりしない??」

あかね「……ド、ドキドキって……そんな……」



『アカネ、Lady.』



 ぼんやりとあの時のブライアンの顔が脳裏に浮かぶあかね。自分でも顔が赤くなったのがわかるのか、変な汗が流れます。


みゆき「×▽□★―――!!!」

やよい「恋だよ!!それは恋だよっっ!!!」





みゆき&なお「「うんうん!!」」

れいか「――――まぁ。」


あかね「だから!そんなんと―――――!」

れいか「あかねさんたら……」

あかね「いや…。」

なお「気づかなかったよーー。」

あかね「いやいや!」


 精一杯否定するあかねですが、変に納得したみんなにはもはや話を聞く気はありません。


みゆき&やよい「「あかねちゃん!!」」

あかね「は、はいいい!!?」

みゆき「その想い、伝えよう!!」

あかね「つ、伝えるって……」

みゆき「モチロン――――!」

みゆき&やよい「「告白だよ!!!」」


あかね「えええええええええええええええええええ!!!!」


 年頃の女の子のテンションに呑まれ、自分でもよくわからないままあかねはみゆきとやよいの提案に乗る事に・・・。



・・・



星空みゆき案】


みゆき「名づけてシンデレラ作戦☆」


 早速次の日学校で、廊下に集まった5人。あかねの上履きをひとつ拝借したみゆきは、おもむろにブライアンが来るのを待ちます。


みゆき「シンデレラみたいに靴を拾ってもらって幸せになろう!」

やよい「来たよ!」

みゆき「てえい☆」


 ぼーん、と冴えない顔のあかねに反して、みゆきは生き生きとブライアン目掛けて上履きを放り投げました。


あかね「うわ!ホンマにやりおった!?」


 瞬時に物陰に隠れる4人。あかねは一人けんけん跳びでブライアンの方へ飛んだ上履きを取りに行きます。


あかね「ブライアン!……あ、どうも。」


ブライアン「You welcome.」

あかね「あはは……」


 結果、ブライアンはあかねの靴をさっと拾い上げて渡しただけです。そもそもシンデレラの王子様はガラスの靴を拾った時点で恋してましたからねー。


やよい「これだけ?」

みゆき「そーだけど、そーじゃない〜〜」



・・・・


緑川なお案】




なお「こういうのは小細工なしだ!!」


 急遽屋上に呼び出されたあかね。大体想像できますが…。


なお「あたしがお手本を見せてやる!こ……こう真正面から……」

あかね「は、はい。」





 なぜか必要以上に凄むなおに圧倒されつつあかねはなおを見返します。


なお「すっ……すっ……すっ………」


 新手の健康呼吸法かと疑うぐらい息を吐くなお。いや、何が言いたいのかは言わずもがなですが……。


なお「言えるかーーーーーーーーーーーー!!!!」


みゆき「だめだよなおちゃん!」

なお「ムリムリムリ絶対ムリ!!」


 今度は新手のストレッチかと思うくらい体をぐにぐにさせて空に叫ぶなお。


あかね「……どうツッコんだらええんや……」




(あかねのツッコミ候補)
1、絶対ムリなら何でやらせようとしたんやねん!
2、そもそも女同士で練習になるかい!
3、なんでそんなにウチで緊張するねん!(←?!)



・・・


黄瀬やよい案】




やよい「直接がだめならイラストで伝えよう!」

あかね「イラストって……。」


 いつの間に書いたのか、妄想ノートと化したやよいのノートには、素敵な彼とあかねが。


やよい「できた?」


 やよいが何を期待しているのかはわからないけど、あかねのノートを見た瞬間、まるで時間が止まったかのように硬直してしまいます。


やよい「ねぇ……あかねちゃん……。」




 信じられないくらい静かな声で囁くやよいの顔は、さすがのあかねでも見ることができなかった。





・・・・・



青木れいか案】


れいか「イラストがダメなら手紙です。」


 便箋を一枚あかねに手渡すれいか。しかし、あかねからしてみれば気の利いた言葉なんかさっぱり出てきません。


れいか「あかねさんの思いの丈を、白い紙にしたためましょう。」

あかね「……。……。……。」

なお「ラブレターか……」

れいか「さぁ!」

「「「「さぁ!さぁ!!さああ!!!」」」」


あかね「書けるかーーーーー!!!」














・・・・・


あかね「はぁ。なんや疲れたな……。」


 それは、結局試行錯誤しているウチに(というより半分おもちゃにされた後)すっかり日も暮れて家に帰る途中のこと。


ブライアン「あ、ブライアン?」


 商店街の中を家に向かって歩いていたあかねは、その途中で地図を片手に辺りを見回しているブライアンを見つけます。



やよい『それは恋だよっっ!』


あかね「…………そんなんちゃうもん。」


 ふとはしゃいでいるみんなの姿が浮かびましたが、誰に言うでもなく言い返してあかねはブライアンを呼び止めます。


あかね「何してんの?」

ブライアン「アカネ!オイシイ、ニホンショクノ、オミセ、サガシテマース」


あかね「そんなら…………」



 あかねは学校案内と同じく、商店街を案内しながら、自分の家でもあるオススメの日本食の店「お好み焼きあかね」にブライアンを連れて行く事にしました。






ブライアン「Delicious!! This is OKONOMIYAKI!!」


 アツアツのお好み焼きを頬張るブライアン。香ばしい青のりと鰹節、そしてふんわりとした生地と海鮮の濃厚な味わいは、まさしくジャパニーズ・ソウルフードですね。


ブライアン「brilliant!! アカネ、サイコウネ!」

あかね「大げさやなー」

「お?あかねちゃん、イケメンな彼氏だねえ」

あかね「う!うそ!?そんなんちゃうわあ!!」


 二人の光景を微笑ましく観ていた常連さんの言葉で、あかねは一瞬で真っ赤になってしまいました。


「あはは。ごちそうさん。」

あかね「ったく―――おおきに」


ブライアン「オオキニ?」

あかね「え?あぁ…。関西弁で“ありがとう”ってこと」

ブライアン「カンサイベン?アカネノ、コトバ!」

あかね「せや。ブライアンやと、センキュー?」

ブライアン「Thank you!!」

あかね「Thank you!」

ブライアン「オオキニ!」

あかね「Yes!」


ブライアン「オオキニ、オコノミヤキ。アカネ、イロンナコト、シッテル。ボク、トテモウレシイ。ダカラ、モットボクニ、オシエテクダサイ。コノクニノ、コト、コノクニノ、コトバ。」


 自分は英語なんか全然できない。せいぜい日常会話がやっと成り立つぐらいのレベル。でも、ブライアンは日本語をよく知っている。自分より努力して日本を学んでくれている。おおらかで、真面目なブライアンだからあかねも素直に自分から迎えるんでしょうね。


あかね「よっしゃ!ウチにまかしとき!」

ブライアン「Oh!!」


・・・・・




 それからは流れるように時間が過ぎていきました。わからない日本語の教科書を教えたり、逆に英語の教科書を教えてもらったり。



 なおの家に遊びに行って兄弟たちと楽しく遊んだり。



 れいかに習って弓道部に体験入部して矢を射ってみたり。



 ヒーローが大好きなやよいに絵のモデルになってもらったり。



 みゆきの大好きなオススメの絵本を読み合って日本語を覚えたり。




 みんなであかねの「Volleyball」の試合を応援しに行ったり。




 二人で七色ヶ丘の行ってみたい名所を話し合ったり。



 二人で動物園に行ったり。




 二人で水族館に行ったり。



 二人で海に行ったり。




 二人で、夕陽を見たり。












あかね「ほんで、ここがこの町でいっちゃんキレイなとこや。」


ブライアン「It’s beautiful―――――」


あかね「ひひひ。せやろ?」


 遮るものが何もない、町一番の高台で二人は、地平線に沈む真っ赤な夕陽を眺めていました。


ブライアン「アカネ。」


あかね「え……?」


ブライアン「ぼく、にっぽんきて、よかった。あかね、いろんなこと、たくさんおしえてくれる。まいにち、とってもたのしいです。でも…………。」


あかね「―――――。」



 夕陽を受けて輝く彼の顔には、いつもの眩しいくらいの好奇心に溢れた様子はありません。


ブライアン「かえるじかん、きて、しまいました。」

あかね「―――!」


 わかってはいた事ですが、改めて本人の口からそう聞いた時、その瞬間が自分がどれだけ考えたくなかったのかあかねは実感します。とても切なくて、とても苦しいその感情。





あかね「そうか……もう、三週間経ってもうたか……。」


ブライアン「はい。それじゃ、きょうはここで」


あかね「あ――――――。」


 かける言葉が思いつきませんでした。


こんな時、やよいやれいかなら気の利いた言葉が出たんやろか。

 こんな時、みゆきやなおなら、もっと素直に、まっすぐに言いたい事が言えるんやろか。


ブライアン「あかね、またあした!」


 最後にブライアンがいつもの調子で明るくそう言って帰って行きました。でも、あかねはその姿をただ観ているだけで、気づいた時には自分の伸びるた影の中に、ブライアンの姿を重ねていました。



あかね「そうか……。帰って……しまうんやな……。」


 真っ赤な夕陽が徐々に暗がりに染まっていきます。時間は止めることができません。陽が沈んで、また登った時、それが彼との最後になる。考えなくても、心のどこかで覚悟していた、いや、覚悟していたつもりのあかねでした、結局夕陽が完全に沈んでから、その日は家に帰りました。








タクヤ『ちょまてよ!愛してるって言ったのは嘘だったのか!』

カオル『ごめんなさい。』

タクヤ『話を聞いてくれ!』

カオル『もう会いたくないわ』

タクヤ『待ってくれ!』


 暗がりがどこまでも広がるバッドエンド王国。唯一の娯楽であるテレビを独占しながら、ふいに回した恋愛ドラマを冷めた目で見るウルフルン。


ウルフルン「愛だぁ?けっ、くだらねぇ」





・・・・・


 やさぐれた黒い影が迫る中、翌日。




ブライアン「それでは、みなさんおせわになりました。」


 ぺこりと花束を抱えながらお辞儀をするブライアン。校門前でクラスのみんなが見送る中、ブライアンはあかねの姿が無い事に気づきます。











やよい「ブライアン、行っちゃったね……。」

れいか「そういえばあかねさんは?」

なお「空港まで見送りに行ったんじゃないかな?」


 授業中以外であまりあかねの姿を見ていない4人は、放課後になった途端いなくなったあかねを心配していました。


みゆき「ねぇ、今日のあかねちゃん変じゃなかった…?」

キャンディ「クル?」(今日初めてしゃべった)






 帰り道、土手の高架線の下からボールが跳ねる音が聞こえます。4人が音のする方を覗いてみると、そこにいたのはあかねがでした。



なお「あかね!」

やよい「見送りに行ったんじゃなかったの?」

あかね「え?行かへんよ、そんなん」

やよい「だって、まだ気持ち伝えてないんでしょ!」


 最後のお別れなのに、不思議と落ち付いた様子のあかねを見て、4人は逆に心配して声をかけます。


あかね「だーかーら、そんなんちゃうんやって。ただ、一緒におるのは楽しかったなーって。そんだけ。」

なお「だったらそれを――――」 

あかね「もうええねん!!」


「「「「―――。」」」」




あかね「だって、どうせもう、会うこともあらへんやろ……。」


 言葉の最後は自分に言い聞かせているかのように、ぼそっとあかねは言います。暗く下向きな顔は、とても“もういい”と思っているようには見えません。


みゆき「本当にそれでいいの?」


あかね「え――――」


みゆき「なんていうか……それは、たぶん……あかねちゃんらしくないよ。」


あかね「――――。」



 素直になれない。言葉にできない。一緒にいる時はあんなに楽しかったのに。どうして笑顔で別れる事ができるだろうか。



 もっとずっと一緒に居たかった。もっと行きたい場所がたくさんあった。



 こんなに別れが苦しいなら、こんなに会うことが辛いなら。



 こんなに辛いのが、恋なんて……。






















・・・・・・



彼女「ごめん!待った?」

彼氏「ううん!全然!あ、そのペンダント付けてきてくれたんだ!」

彼女「もちろん。せっかくプレゼントしてくれたんだし……」




ウルフルン「んなあにが、“ごめん!待ったぁ?”……だ!ムカつくぜ!」


 公園に一匹のやさぐれ狼。妙にイライラした様子で、待ち合わせをしていたカップルを目の敵にしています。


ウルフルン「世界よ!最悪の結末バッドエンドに染まれ!!白紙の未来を黒く塗り潰すのだ!!」


 真っ黒な世界に不気味に輝く満月。



 別れ、裏切り、嫉妬。人は人を愛し、傷つける。他人をどこまで想いやれるのか、他人をどこまで信用できるのか。ずっと相手を想えるのか、ずっと相手に想われるのか。自身が持てない。不安でしょうがない。
 そんなに辛いなら、もう出会いたくない。



なお「これは―――――!?」


あかね「――――!」



ウルフルン「人間共の発したバッドエナジーが悪の皇帝ピエーロ様を、蘇らせていくのだ!!!」


あかね「待たんかい!」


ウルフルン「ああん?」


キャンディ「へんしんクル!」


 バッドエンド空間の中心に向かってあかね達はウルフルンをつ突き止めます。事態が事態ですが、今はウルフルンを止めるのが先決です。





「“プリキュア・スマイルチャージ”!!!!!」

「Go!!Go!!Let’s go!!」







「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」



「太陽サンサン熱血パワー、キュアサニー!」



「ピカピカぴかリンじゃんけんぽん、キュアピース!」



「勇気リンリン直球勝負、キュアマーチ!」



「シンシンと降り積もる清き心、キュアビューティ!」





「「「「「5つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!!!!」」」」」



ウルフルン「け!出てよ!ハイパーアカンベェ!!」


 今回のアカンベェは、待ち合わせをしていたカップルの彼女さんが付けていたペンダント。特に思い入れは視聴者側にもあかね達にも無いので、別になんことはないですが。


『ハイパ〜〜アカンベェ!!!』


 鍵型ペンダントからカギアカンベェに変身。ウルフルンが乗り込んでさらに尻尾と犬耳付きで、もうよくわからない不思議な生き物に……。



サニー「あんた、何してんねん!」


ウルフルン『は!目の前でいちゃこらと目障りなんだよ!!』





ピース「そんな理由で――――!」


「きゃあ!!」


 鍵の部分でなぎ払うハイパーアカンベェ。リーチの長さではサニー達が不利です。


ウルフルン「愛だの恋だのくだらねえぜ!!」


ハッピー「そんなことない!」

ビューティ「誰かを好きになることは、素敵なことです!」


ウルフルン『ああん?』


「「きゃ――――!!」」


ウルフルン『何でてめえらにそんなことがわかるんだよ?』


サニー「ぐ―――!うあ!」


 ハイパーアカンベェのパンチを受け取るサニー。しかし、ウルフルンの言葉が妙に心に響き、サニーの力をブレさせます。


ウルフルン『なんだかんだ言ったところで、最後は別れちまって終わりなんだろ?』

サニー「あ――――……。」

ウルフルン『くっだらねえ!!』


サニー「うわああああああああああああああ!!!!」


 サニーがひるんだ隙を見逃さずに、ウルフルンはキツイ拳でサニーを叩きつけます。


ウルフルン『そんなもん、無意味で無駄なだけじゃねぇか!』


サニー「…………。」


 自分自身もその気持ちに迷っているだけに、返そうにも今のサニーには返す言葉が出てきません。ちょうど、自分がブライアンに何が言いたかったのか、何がしてあげたかったのか、わからないままのように。
















ハッピー「でも、それが、意味がないなんて……そんなの……さびしいよ」


サニー「――――」





『ハイパ〜〜〜〜!』


サニー「そや。」


『あん?』


サニー「無意味やない……無駄なはず、あるかあああああああああ!!!!」


ウルフルン『うおりゃあ!!!』


サニー「ぐ―――――!」

ピース「サニー!!」




キャンディ「スポーツデコルをつかうクル!」



 アカンベェの拳で空高く打ち上げられるサニー。なんとか着地したところにキャンディがロイヤルクロックを取り出します。



『Let’s Go!! Sports!!』


 なぜか今回だけ英語の発音が妙に良いロイヤルクロックの中から出てきたのは、竹刀。え、竹刀?



『アカ〜〜〜〜ンベェ!!』


サニー「ム!!!」


 ガギィン。受けた竹刀はアカンベェの一撃でも折れません。さすがデコル。


ウルフルン『無駄じゃなけりゃ何だってんだ?』

サニー「それは……今のウチには……まだわからん。……けど!!」


『アカ〜〜〜ン!?』


 受けた竹刀を振り返してアカンベェを逆に弾きます。


サニー「離れ離れになったとしても、一緒に過ごした時間は……消えへん!!」



 パチンと右手で指を弾くと、そこから円上に火柱が燃え上がります。それは手に持った竹刀を中心に燃え盛り、収束して大きな炎の剣になりました。



サニー「それが……無駄なわけあって……たまるかーーーーーー!!!!」


ウルフルン『うおらあ!!』


 ガギィン!ギィン!ギィン!!

 激しい剣戟は、お互い一歩も譲らずに相手を押し返そうと嵐のように繰り出されます。


サニー「おおおおおりゃああああああ!!!」


ウルフルン『うお!?』



 ギィン。と一閃。火力で押し切ったあかねは、アカンベェをそのまま空へ押し出します。



サニー「今や!!」











「「「「「ペガサスよ!!私達に力を!!!!!」」」」」




「プリンセスハッピー!!」


「プリンセスサニー!!」


「プリンセスピース!!」


「プリンセスマーチ!!」


「プリンセスビューティ!!」



 天まで羽ばたく天馬の翼。白きペガサスは純情の印。その輝きを受けて、5人は純白の衣を纏う。



「“プリキュア・プリンセス・フォーム”!!!!!」





「開け!ロイヤルクロック!!」


 奏でるリズムと共にキャンディのひと押しで、時計の針がひとつ、進みます。



「みんなの力を一つにするクル!!」




「届け!!希望の光。」


「はばたけ!!光輝く未来へ!!」


 描く星の繋がりは鳳凰の星座に。その聖なる力を宿して。


 新たな力、何度でも諦めずに、立ち向かう、不死鳥の燃え上がる力をその翼に。



「“プリキュア・ロイヤル・レインボー・バースト”!!!!!」


『アカンベェ〜〜〜……!?』




「輝け!」



「「「「「ハッピースマイル!!!!」」」」」



キャンディ「ホシデコルクル〜〜〜☆」


視聴者「あれ?二個目……?」





ウルフルン「くっそ!(リア充爆発しろ!)」







・・・・・・・・・・



 アカンベェも消え、デコルも回収。ウルフルンも撤収し、変身も解けます。


 みんながようやく落ち付いた時、あかねはもう走り出していました。


みゆき「あかねちゃん!」


あかね「ごめん!!ウチ行かなあかん!!」



 別にちゃんと見送りたかったワケじゃない。



 別にきちんと挨拶をしたかったワケじゃない。



 でも、このままこのままだったら、絶対に後悔する。






あかね「あ―――――。」



 しかし、あと一歩というところで空港行きのバスは発車してしまいます。バス停の手前まで走ってきたあかねは、慌ててバスを追いかけます。



あかね「ま、待って!」


なお「待ってーーーー!!!」


 そこにあかねを追い越してなおがバスまで直球ダッシュ。


あかね「なお!?」


なお「乗りまーーーす!!!」



 運転手に気づいてもらい、なんとかバスには止まってもらいました。が。


あかね「でもウチ、お金持ってへんかった……」


れいか「あかねさーーーーん!!」


 そこに今まで聞いたことも無いくらいの声量でれいかが走って追いつきました。


れいか「これを…………」


 息を切らせながられいかは、自分の財布をあかねに差し出します。


あかね「れいか……!?」


れいか「使って、ください……。」




あかね「おおきに――――!」



 なおが止めてくれたバスに、れいかから貰った乗車賃を払って、あかねは空港に向かいます。


 しかし、時間は帰宅ラッシュ。都心から戻ってくる車で、赤信号が連続する大通りは渋滞を起こしていました。


あかね「あかん―――――時間が―――――。」


みゆき「あかねちゃーーーーーーーーん!!!」




キャンディ「あーーーかーーーねーーーー!!!」


 あかねが見ると窓の外で、キャンディを載せたみゆきとやよいが、家から持ってきた自転車に乗ってバスのそばまで走ってくるのが見えます。


あかね「みゆき!?やよい!?」


みゆき「わたしの自転車使って!」


やよい「これ地図!近道書いといたから!」


 みゆきから自転車を、やよいから地図を受け取るあかね。感謝の気持ちで言いたい事はたくさんありますが、今はぐっと言葉をひとつにまとめて――――。


あかね「おおきに」



 そのままみゆきの自転車を漕いで、やよいの地図を頼りに空港に向かいます。


 裏道を通り、公園を抜け、林の中の散歩道を全速力で自転車を漕ぎます。


あかね「あ、うわああああああああああ!!!」


飛行機の音が徐々に大きくなるにつれて、林の中の視界が開けてきた時、小石にタイヤをとられて、思いっきりあかねは転んでしまいます。


あかね「いった……あ!!」


 木がクッションになって大した傷はありません。急いで倒れた自転車を起こすあかね。


あかね「チェーンが……。」


 しかし、転んだ拍子にチェーンが外れたのか、これではもう漕ぐことができません。直している時間も惜しいあかねは意を決して走り出します。


あかね「みゆき―――――すまん!!」


 いつも腰にぶら下げているカーディンガンが落ちたのも気づかず……。


 きちんと結んでいた髪もほどいて……。


 何度も何度も、転んだ足が悲鳴をあげて止まろうとするのを、必死に彼の顔を思い出してその足を動かします。


 息を切らして。


 ただただ無我夢中に。














 いつしか空は、最初に出会った時のような、真っ赤な夕焼けでした。












あかね「あかん…………」


 空港のロビーで空を見上げるあかね。その視線の先にはイギリス行きの離陸したジャンボジェットがありました。



あかね「あかんかった………。」



 どさ。一気に体の力が抜けたように膝から崩れるあかね。照らす夕陽の光は自分一人だけの影を作ります。そこにはもう、彼の姿は―――――。



あかね「う………うぅ………。」



 悔しくて泣いたことはたくさんあった。悲しくて泣いたこともたくさんあった。喧嘩した時も、怒られた時も、たくさん泣いたことはある。


 だけど、こんなに心がきゅって苦しくて、こんなに切ない涙があることを、あかねは初めて知りました。








「Are you OK?」




 落とした視線は、もう涙で前が見えません。それでも、その言葉は、初めて彼からかけて貰ったその言葉だけは、あかねには十分すぎるくらいの言葉でした。


 そうして一瞬止まった涙は、また流れ出します。でも今度の涙は知っている涙です。仲直りした時の、褒められた時の、感動した時の、あのホッとする温かい涙。


あかね「ふ……大丈夫やで……ブライアン。」


 ずず、っと鼻を啜って最初に出会った時のように、彼の手を取るあかね。あの時と何も変わりません。彼はいつでも優しくて、そして―――――。


あかね「もう行ってしもたかと思った」


ブライアン「いいえ、まってました。あかね、きっとくるって、しんじてましたから。」


あかね「へへ、ごめん。遅なったな」


 なんとなく、彼の顔がまっすぐ見れないあかね。おもむろに視線を逸らしながら、大丈夫Tシャツを着た彼を見上げます。


あかね「なぁ……ブライアン。………その、えと……なんちゅうか……」




 あかねの中で答えはもう出ていました。いざとなると照れくさくて言葉がつまりますが、それを彼に伝えるためにここに来たのです。他の誰とも違う、かけがえのない存在。あかねにとってそれは初めての―――――。





「おおきに。」


あかね「え……」


ブライアン「がっこう、たのしかった。おこのみやき、おいしかった。ほかにもいろんなこと、たくさん。たくさん。ぜんぶ、あかねがおしえてくれたんです。」





 不意にそっとその手があかねの頬をこすります。それが自分が撫でられているのか、それとも転んだ時の土を払っているのか、あかねには知る由もありません。


ブライアン「あかねがいたから、ぼく、このくにが、とてもすきになりました。」




 きっと知っている。きっとわかっている。だから、この言葉は、それを全部ひっくるめている。


ブライアン「だから、おおきに」




あかね「ウチも、ウチも……めっちゃ楽しかった!」



 それで、あかねは彼の手を握り、流した涙をそのまま拭います。


あかね「英語教えてくれたり、手貸してくれたり。だからブライアン、こっちこそ………Thank you!!」





 握ったその手はいつまでも。次の飛行機の離陸時間まで――――――――。































 次回、3バカがついに擬人化!これで残ったのはキャンディだけじゃナイノー!!


 人間体になって生徒会選挙に出て学校を乗っ取ろうとするウルフルン達の野望を阻止できるのか!?そして、れいかの選挙の行方は!?




 次回、「れいかの悩み!清き心と清き一票!!」








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