スマイルプリキュア!第22話「いちばん大切なものって、なぁに?」
それは、例えばママやパパ。
それは、例えば弟や妹たち。
そして、友達。学校のみんな。街を歩く人。世界中の人々。
悪い奴らは、世界を悪へ導く。
誰も知らないところで、世界は黒く染まる。
白紙の未来を真っ黒に。
だから、戦う。
それが使命、伝説の戦士に選ばれた運命。
もし、そのために、それ以外の全てを失っても。
でも。
本当にいちばん大切なものって……。
なお「キャンディも…デコルも…」
れいか「みんな、奪われてしまいました」
ジョーカーはデコルデコールと最後のデコル、そしてキャンディを連れて消えてしまった。
世界をバッドエンドに変えようとしている悪の皇帝ピエーロ。その復活を阻止したメルヘンランドの女王ロイヤルクィーン。その力を再び復活させるためにデコルの力が必要だったが、それは今やジョーカーの手に。
みゆき「まだだよ!」
あかね「――!……みゆき?」
みゆき「わたし、思い出したの」
そう言ってみゆきは、部屋に飾った笹の葉のひとつから、ホシデコルを外しました。
あかね「ホシデコル――?なんで―――。」
みゆき「笹を飾ろうと思ってわたしが付けてたんだ」
なお「ってことは……」
みゆき「うん!まだ希望はあるよ!」
れいか「―――――」
やよい「れいかちゃん?」
ほっと安堵するように今までの緊張が少しだけ溶けました。ふと目を離した時、れいかは笹に飾ってあるまだ見ていない短冊をその手に取りました。
れいか「《みゆきたちとず〜っといっしょにあそぶくる》……。」
なお「それって―――」
あかね「キャンディの短冊……」
みゆき「キャンディ……」
思い出したように、キャンディの笑った顔がみゆきの中でぼんやりと浮かび上がります。さっきまでそこで一緒に短冊に願い事を書いていたのに…。
やよい「ねぇ、こんなのもあるよ」
それぞれ、オレンジ、緑、黄色、青の短冊を3人に渡すやよい。それは、キャンディがあかね達に書いた願い事でした。
あかね「うちへの短冊?」
なお「こっちはわたし…。」
やよい「わたしたち、一人一人への短冊も書いてたんだね……」
その声が聞こえてくるようで、みんなはまだ拙い字で書かれたその願いを見つめます。
みゆき「やっぱり、落ち込んでる場合じゃないよ!」
なお「でも、キャンディはどこへ?」
ポップ「恐らく、バッドエンド王国でござる」
あかね「そこって――――……」
度々彼らが口にしていた名前。バッドエナジーの送り先。
ポップ「皇帝ピエーロが封印されている場所。」
れいか「皇帝…」
やよい「…ピエーロ」
全てを悪に染める絶望の力、バッドエナジーを集めて世界を終焉へ導く皇帝。それを封じるために戦ったのがロイヤルクィーン、そして伝説の戦士プリキュア。
ポップ「では、まずこの絵本の中に入るでござる」
そう言ってポップは、自分が人間界にやってくる時に使っている羽ばたく青い本を広げました。開いたページには、何も書かれていない白紙だけがそこにありました。
ポップ「バッドエンド王国に行くためには、まずはこれでメルヘンランドに行くでござるよ」
あかね「よっしゃ、ほな行こか!」
最初にポップが本に飛び込みます。虹色の光にその姿を変えたと思ったら、そのまま光は本の中へ飛び込んでいきました。
ポップ「さ、皆の衆!」
みゆき「待ってて。キャンディ。今行くからね!」
そうして5人も虹の光に包まれて本の中へ。そのまま一度ぱたんと閉じた本は、鳥になったかのようにそのページを開いてバサバサと羽ばたきながら、虹色の空間へ飛び込んでいきました。
さらわれたキャンディ。取り返すのは大事な友達とキュアデコル。世界はハッピーエンドか、それともバッドエンドか。物語の最終章を決める真の戦いが、始まろうとしていた。
スマイルプリキュア!第22話「いちばん大切なものって、なぁに?」
ジョーカー「さて、ひとつ君に聞きたいことがありマス。」
バッドエンド王国。常に黒い雲で覆われた薄暗い世界。キャンディは、ジョーカーに連れさらわれ、見晴らしの良い鉄塔のひとつに縛り付けられてしまいました。
ジョーカー「君はメルヘンランドで何かトクベツな力をもらいませんでしたか?例えば……“ミラクルジュエル”トカ?」
キャンディ「そんなのしらないくる!」
ジョーカー「本当ニィ?」
キャンディ「しらないくる!」
ジョーカー「ほ・ん・と・う・ニ〜〜〜?」
ギョロリ。何も映らないジョーカーの仮面の中の眼がキャンディを見つめます。吸い込まれそうなくらい真っ暗なその目の中に思わずキャンディは涙をこらえます。
キャンディ「ほんとうくる……」
ジョーカー「どうも嘘ではなさそうだなぁ。本当にミラクルジュエルと関係がナイ?」
キャンディ「わるいことかんがえてもむだくる!プリキュアはまけないくる!」
ジョーカー「それはど〜でしょ〜?だってデコルも全てココに〜〜〜、ん?」
奪ったヒマワリデコルをデコルデコールにセットするジョーカー。実質これで全部のデコルが揃ったことになるのですが、みゆきが笹に飾っていたホシデコルをはめる部分がぽっかり空いていることに気づきます。。
ジョーカー「チッ。やってくれましたねプリキュア。イイデショウ。ならばピエーロ様復活の最後のバッドエナジー。アナタ達からいただきマスよ……」
・・・・・・・・・・・・
みゆき「うわ〜〜〜………でふ!!!」
みゆきは相変わらずの顔面着地。他の4人はキレイに足から降りて到着したのはメルヘンランド。
みゆき「いてて……ここが、メルヘンランド?」
空には風船が浮かび、そこにある全ての物は、ふんわりとした彩りで描かれていました。
ちょうど降りてきた所の後ろ手には、城らしきもがそびえていました。
みゆき「うわ〜きれい〜!」
並ぶ家々は全てキャンディやポップ達妖精に合わせた小さめのサイズ。ハートや星を彩った装飾であちこちに点在し、緑豊かな草原の上にひとつの街を作っていました。
なお「でも、妙に静かだね」
れいか「誰も、いないのですか?」
温かい街並みとは反対に、みゆき達以外にそこに生活している妖精達の姿は見せません。
ポップ「ちゃんといるでござる。ただ……ピエーロとの戦いで女王様が眠ってしまってから、皆もすっかり落ち込んで、滅多に家から出なくなってしまったのでござる」
みゆき「そうなんだ……」
ポップ「一刻も早く、女王様を復活させなければ……」
最後の希望とばかりに残されたホシデコルを見つめるポップ。しかし、空から聞こえる甘ったるい声が、そんな希望を断ち切るかのようにみゆき達の目の前に姿を現しました。
ジョーカー「それは困りマス。」
ポップ「――!!あの声は……」
空にふわりと浮かぶ無数の風船の中で、トランプの嵐が吹き荒れ、中からジョーカーが現れました。
あかね「―――あんた……!!」
ぺこりと頭を下げるジョーカー。その余裕の姿には彼の絶対の自信が垣間見えます。
ポップ「キャンディを返すでござる!!」
ジョーカー「いいえ。こちらこそ返していただきますよぉ〜〜」
みゆき「え―――。」
ジョーカー「みなさんがお持ちの、最後のデコルをねぇ〜〜〜」
あかね「くっ――――。」
なお「断ると言ったら?」
ジョーカー「ふふん……。いいから…さっさと……よこせえええ!!!」
ギラリ。漆黒の眼光が5人に向けられます。みゆき達はそれに怯むことなく、スマイルパクトを取り出し―――。
みゆき「みんな、行くよ!」
「“プリキュア・スマイルチャージ”!!!!!」
「Go!!Go!!Let’s go!!」
「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」
「太陽サンサン熱血パワー、キュアサニー!」
「ピカピカぴかリンじゃんけんぽん、キュアピース!」
「勇気リンリン直球勝負、キュアマーチ!」
「シンシンと降り積もる清き心、キュアビューティ!」
「「「「「5つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!!!!」」」」」
ジョーカー「ふふ。」
変身して早々、ジョーカーはトランプを使った攻撃を仕掛けてきました。
一見ただのトランプですが、地面に突き刺さった瞬間爆発するという物騒なものです。
ビューティ「はぁ!」
ピース「やぁ!」
二人同時に左右から放ったパンチ。しかし、ジョーカーもそれを先読みして左右にトランプを広げ、大きく広がったトランプの盾でパンチを防ぎます。
アカオーニに資料を持ってきたこともあるので、恐らくジョーカーの中にはプリキュアの今までの戦闘データが全部入っているのでしょう。
ビューティ「――っ!」
ピース「きゃ!」
広がったトランプをそのまま攪乱用に使ってその隙にジョーカーのキックがあしらうように二人に命中します。
ハッピー「はあ――――――――――――!!」
今度は正面から、ハッピーがジョーカーに攻撃を仕掛けますが、パンチがジョーカーの体に触れた瞬間、ジョーカーの体がトランプの束になり空中に散らばっていきます。
ハッピー「え――――うわ!!」
本人はその隙に散らばった束の真上からハッピーを攻撃、軽く見えても重い一撃はハッピーをそのまま地面に向かって突き落とします。
サニー「は――――!」
今度はサニーが後ろからジョーカーに迫りますが、連続して出すキックやパンチは全て紙一重で躱されてしまいます。当の本人は、余裕の証に両手を後ろで組み、サニーを足蹴り一発で弾きます。
マーチ「や――――!」
ジョーカー「ホホホ。」
マーチもサニーに続いて攻撃を仕掛けますが、やはり全て紙一重で躱されてしまいます。
ジョーカー「おや?こんなモノですかぁ?」
歯を食いしばる5人を嘲笑うように空中にふわりと佇むジョーカー。
ハッピー「こうなったら……」
幸せで元気になれる気持ちに気合いを込めて、一気にハッピーはジョーカーに放ちます。
「“プリキュア・ハッピー・シャワー”!!!」
しかし、その直撃をジョーカーが受ける刹那、彼が取り出したジョーカーのカードが、ハッピーシャワーをまるごと吸い込んでしまいます。
「――――!?」
くるくると回るカードはジョーカーからハートのエースへ。しかし、黒く染まったカードから飛び出したのは、ハッピーシャワーと同じ勢いの黒いオーラでした。
ハッピー「え―――――」
ハッピーの気合いのこもった一撃をそのまま返すジョーカー。ですが、その動きを読んでいたのか、ハッピーの目の前に歩み出たポップは、そのまま大きな盾に変化。そのまま黒いオーラを全身で受け止めます。
しかし、盾になったからと云ってポップ自身が頑丈になるわけではありません。我が身を盾にしてハッピーを守ったポップは、そのまま力なく倒れこみます。
ポップ「うああああああ……!!」
ハッピー「ポップ!!」
サニー「こいつ、舐めたらあかん!」
マーチ「みんなで力を合わせるんだ!」
炎を宿した魂の一撃。
「“プリキュア・サニー・ファイヤ”!!!」
雷を宿した希望の一撃。
「“プリキュア・ピース・サンダー”!!!」
風を宿す勇気の一撃。
「“プリキュア・マーチ・シュート”!!!」
氷を宿す礼威の一撃。
「“プリキュア・ハッピー・シャワー”!!!」
さらに渾身の気合いで連続発射するハッピーシャワーも合わさって、普段の5倍の浄化の光がジョーカー一点に注がれます。
ハッピー「――――え」
ジョーカー「フフフ。この程度ですかぁ?がっかりデス。」
しかし、たった一枚のトランプに、その全ての力が吸い込まれていました。
ハッピー「そ……そんな……。」
黒いトランプは、受けた分の極太の黒い光をそのままハッピー達に返します。白紙の未来を黒く塗りつぶすように。
激しい爆音で辺は一瞬真っ黒になります。
しばらくして煙が止み、ジョーカーは空から地上へゆっくり降りました。
ジョーカー「さぁて。これでこちらの用事は済みました。」
ポップ「く――――……。」
倒れたポップのそばで光るホシデコルをジョーカーが拾い上げます。さっきのダメージで体が動かせないポップは、それをただ見ていることしかできません。
ジョーカー「では、そろそろいただきましょうか。“最後のバッドエナジー”を!」
「白紙の未来を黒く塗りつぶすのデス!!」
暗黒に染まるメルヘンランドの空。その下で、地面に顔を伏せるプリキュア。
ジョーカー「おんやぁ?どうしましたぁ〜みなさん?もう絶望してもいいんですよぉ〜?」
相手の思い通りには絶対にさせない。キャンディを取り戻す、その一心でハッピーは立ち上がろうとします。
ハッピー「絶望なんか……しないもん!!」
ジョーカー「なぜぇ!?だってもうどうにもならないじゃないデスカ?」
「なにせ、わたしにすら勝てないあなた達が、ピエーロ様に敵うわけがないデショウ?」
ゆっくりと、5人の見下すように語るジョーカー。言葉の節々には、悪意ある諦めの誘いが隠ります。
ジョーカー「その上、女王の復活もデキナイ!輝く未来もス・マ・イ・ル・も。もう“あり得ない”。」
「ならば、アナタ達に残されているのは……ただひとつ。」
マーチ「そんな……。――――!!?」
敗北、恐怖、困惑、絶望。人は希望と同じくらい、あるいはそれ以上の絶望を時に抱える。そこに夢ある未来なんて無い。
ハッピー「な…なにこれ?………そ、そんな……」
そこに、ウルトラハッピーなんて無い。
最悪の結末を、誰もが恐れ、諦め、塞ぎ込み、絶望する。
ジョーカー「出ましたね…………?“バッドエナジー”」
心が弱った時。希望を失った時。白紙の未来が真っ黒に染まる。そして、人々の絶望は心の中から表面に現れ、負の黒いオーラがその体から溢れ出る。
ジョーカー「アハハハハッハハ!!!!ありがとうございマス!!最後のバッドエナジー、確かにいただきマシタ!!――――――――それでは、良い絶望を!!!」
パチン。
指を弾いた瞬間、ジョーカーの体は幾重のトランプになってその姿を消しました。それと同時に、空を包んでいた黒い景色は消えましたが、さっきまで自分た達を包んでいた黒いオーラに、5人は怯え、しばらく動けずにいました。
・・・・・・・
ごめんなさい。
手も足も出なかった。
何も守れなかった。
だから……もう。
・・・・・・・
れいか「わたし達は、これからどうしたら……。」
ポップ「拙者jは行くでござる……。キャンディを助けに。」
静かに。その心を写すかのように、雲が空を覆って薄暗く辺りを包みます。
あかね「せやっ。まずそれやなっ」
なお「そうだね…」
れいか「待ってください!ジョーカーに全く歯が立たなかったわたし達に、何ができるんでしょうか……?それに、最後のバッドエナジーと言ってました。ということは……」
あかね「そんなら、尚更はよ行かな!」
やよい「でも!……もし、ピエーロが復活しちゃって、デコルも取り返せなかったら……。どうなるの?」
あかね「え――――……。」
やよい「そうなったら、今度こそわたし達……どうなっちゃうの…?もしかしてもう、元の世界に帰れなくなるんじゃ……」
あかね「――――。」
れいか「――――。」
なお「―――。」
あかね「それは……」
やよい「どうして…こんなことになっちゃったの?」
れいか「それはきっと、わたし達がプリキュアだから……。」
なお「メルヘンランドを救う使命があるから…。」
あかね「せやけど……、せやけどこんなん…、聞いてへん……。」
やよい「お母さんや、学校のみんなにも、もう二度と会えなくなるかもしれない…。そんなのわたし……怖いよ……。」
れいか「わたしも…怖いです。」
なお「わたしも」
あかね「ウチかて……、怖いわ」
みんな遠くの景色を見渡します。初めてやってきたメルヘンランド。見知らぬ土地で、目に見えない恐怖に困惑する5人。
ぼそり。と誰に言うでもなくみゆきが言います。
ポップ「―――――………。」
なお「何もしないでこのまま帰るなら、見捨てるってことになる。」
あかね「―――!!そんなん誰も言うてへんやん!!」
なお「でも結局はそういうことだよ!」
やよい「そんな……そんなこと―――」
なお「そういうことに!!!!―――――なっちゃうんだ……。」
遠くでキャンディが泣いている声が聞こえる。
反対側で家族や友達が笑う声が聞こえる。
昔の自分だったら迷わずに家族や友達の元へ行っていたかもしれない。
だけど今はプリキュアとしての使命がある。
世界を救うために悪と戦う。
今までは、苦しかった時も6人で頑張れば乗り越えられた。
みんな一緒なら、何も怖くなかった。
だけど、その使命が、今は………重い。
ポップ「皆の衆、巻き込んですまなかったでござるな」
なお「ポップ?」
ポップ「今ならまだお主達の世界へ帰れるでござる。皆大切な家族もござろう…。元々は、拙者達の国のこと……。後は拙者に任せるでござる」
静かにポップはその場を離れます。それは、一人でバッドエンド王国に向かうことを意味してました。
やよい「そんな!!無茶だよ!!」
ポップ「承知の上でござる」
れいか「冷静になってください!」
ポップ「無茶でも!!!」
あかね「―――。」
ポップ「行くしかないのでござる……。拙者一人でも、誰が相手でも……、だって、キャンディが待ってるでござる!!早く行かないと、妹が……キャンディが……!!」
静かに降る雨に打たれて、涙がポップの目から溢れます。それを、今の自分達はただ、見ていることしかできず、れいか達はかける言葉が見つかりません。ただ、ポップの涙する声だけが、雨のメルヘンランドに響きました。
みゆき「わたし、どうしたらいいのか、わからない。でも、これはすごく、ちゃんと考えなきゃいけない気がする――――。うまく言えないけど、自分にとって何が一番大切なのか……」
れいか「それは、全てを捨ててでもキャンディを助けるという事か、それとも自分達の家族や友人を取るかという事ですか?」
みゆき「それとも、もっと違う。何か。」
成り行き任せとは云えない。その資格があるから、今ここに5人がいる……。選択肢は多い。だけど、その中のどれだけがバッドエンドで、どれだけがハッピーエンドなのか。
ポップ「ならば、こうするでござる。」
れいか「ポップさん?」
ポップ「バッドエンド王国は、満月の間しかその姿を見せないのでござる。そしてそれが今夜―――。拙者、夜まであそこで待つでござる。あとは皆の衆、それぞれご自身で決めてくだされ。」
れいか「やよいさんの言う通り、もう自分達の世界には戻れないかもしれません。」
みゆき「だから、みんなちゃんと自分で考えよう。自分にとって何が一番大切なのか……。」
・・・・・・・・
絵本が好き。
親友もいる。
お母さんお父さんも大好き。
一人。丘の上に埋まっていた石の上に横になって空を見上げます。
みゆき「…お母さん?…お父さん?…みんな?…学校のみんな?…プリキュア?………キャンディ」
「キャンディはわたしにとって……。」
・・・
あかね「そら……、めっちゃ大事な友達や……でも。」
・・・
れいか「キャンディを助けるために―――――でも、もし」
・・・
やよい「絶望…。絶望って何だろう?」
・・・
なお「家族も友達も、あたしも、みんな消えてしまうこと?」
・・・
みゆき「それは………嫌だな。わたしは、家族も友達もキャンディも、みんな一緒が良い。みんなとずっと一緒にいたい。」
《みゆきたちとず〜っといっしょにあそぶくる》
「―――――――!!」
あかね「確か、ポケットに……」
やよい「キャンディの…」
れいか「短冊が…」
ポケットにしまってあったキャンディの短冊。広げて改めてその言葉を読み返します。
《みゆきとたくさんあそびたいくる》
「「「「「キャンディ」」」」」
・・・・・・
みゆき「そうだ、あの時キャンディと出会って始まったんだよね。プリキュアになって、みんなと仲良くなって、それからも、わたしの、みんなとの今まで全部が――――。すごくウルトラハッピーだった。」
「そうだ。それなら………。」
あかね「色々考えたけど、結局ようわからん。けど―――――」
《あかねとおこのみやきたべたいくる》
あかね「今、ウチの心の中にある、このモヤモヤした感じ……。これはたぶん、ウチの答えや。何を取るかやない、ウチが今、何をしたいか――――」
《やよいとおえかきしたいくる》
やよい「キャンディや、みんなが居てくれたから、わたしはすごく素直になれた。みんながいるからわたしも居られる――――。だったら、逃げるなんてできない!」
なお「あたしの大切なもの。家族…友達…。あたしはどっちも譲れない!大切なものを分けて考えるなんて、無理だったんだ」
《なおとさっかーしたいくる》
なお「だったら、あたしが選ぶ道は、最初から決まっていた――――」
れいか「世界、人々、その笑顔。プリキュアが守るべきものはたくさんあります―――。ですが、プリキュアとしてではなく、わたし自身が今、守りたいもの……。」
《れいかとおしゅうじしたいくる》
神々しいくらいの光を放って、満月が丘の上に輝きます。
そこに向かって歩くあかね、やよい、なお、れいか。
一番大切なものなんてない。大切なものに順番は付けられない。
大切だから守とか、大切じゃないから守らないとか、そんなのは理屈だ。
大切なのは、守りたいという気持ち。今自分が守りたいもの。
それは、家族、友達、学校のみんな、プリキュア、そして、キャンディ。
その月を真っ直ぐ見つめて、みゆきは一人先にそこに立っていました。
みゆき「みんな、ごめん。」
「「「「え――――」」」」
みゆき「わたしね、何が一番大切なのか、結局わからなかった。でもね、ひとつだけはっきりした――――。わたし、キャンディが大好き。それと同じだけ、友達と家族も大好き。」
みゆき「だから、みんな一緒が良い、みんな一緒の未来が、きっとわたしのウルトラハッピーなんだって……。」
静かに、みゆきの前に手を差し出すあかね。
あかね「わたし“たち”の……やろ?」
みゆき「――――。」
その手にそっとやよいは手を重ね、それを見てなおとれいかもその上に手を置きます。
みゆき「みんな……、」「
5つの未来が導く未来。輝け!」
「“スマイルプリキュア”!!!!!」
「いこう。キャンディを助けに。」
満月の輝きには希望を照らす。まだ見ぬ白紙の未来を。そして………。
・・・・・
ジョーカー「さぁ、ピエーロ様お召し上がり下さい!これが最後のバッドエナジーデッス!!!」
プリキュアから集めた最後の絶望の塊が、ピエロの封印のカウントをついに一周させます。
ジョーカー「いよいよピエーロ様の……復活です!!!ハハハッハハッハハッハハハ!!!アーッハッハハッハハハッハハハハハッハハハッハハハ!!!!!」
月は、絶望をも照らす。
次回、「ピエーロ復活!プリキュア絶対絶命!!」
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