モーレツ宇宙海賊最終話「そして、海賊は征く」
遥か昔。人々が地上から地上へ、大洋に船を浮かべて渡り巡っていた時代。大海原を駆け回る猛者たちがいた。ある時は民間船を襲い、ある時は財宝の眠る島を探し、ある時は海の上でお互いに剣と銃を突き刺し逢う。
そうして、いつしか海賊は広大な宇宙に足を伸ばした。
帆船は推進機関を積んだ宇宙船になり、砲撃戦は電子の波の中でお互いを押し通そうとする戦いに変わる。
ただ、どれだけ時間が過ぎようと、どれだけ形が変わろうと、いまここに海賊がいる限り、冒険者たちの航海は終わることはない。
百眼「しっかし、戦いの場所が黄金の幽霊船が出現した宙域とはなー」
クーリエ「今じゃ暗黒雲どころか、キレイさっぱりなところよお」
カタタタタタ。澄ました顔でいつもの3割増なスピードで増設されたパネルを操作するクーリエ。電子/通信系強化によって改造された弁天丸は、そのほとんどの増設部分をクーリエが担当している。
ルカ「戦いには最適な場所ね。」
クーリエ「ん?……ホットライン!」
茉莉香「え―?」
茉莉香がクーリエに聞き返す前に、クーリエは受信した通信回線を船長席の端末に表示させた。
茉莉香「チアキちゃん!どうしたの一体」
チアキ『信じてるから…。あんたと、あたし達の未来。』
静かに、ただそれだけを彼女は口にした。
クーリエ「前方にタッチダウン反応!」
百眼「船影は3つ!しかも同型!」
茉莉香「―――!?」
百眼のモニターに、前跳躍現象を感知した周辺座標が表示されている。確認されているのはグランド・クロス号を含める3つの戦艦。
シュニッツァー「グランド・クロスが3つ……」
三代目「おいおいマジかよ!」
予定していた敵戦力は一気に3倍。それでもなお、少女は笑みを浮かべた。
茉莉香「チアキちゃん、任せて。」
海賊の意地と威信を賭けた世紀の大戦。私掠船免状を持つ古き海賊船団と、それを殲滅せんとする帝国海賊との最終決戦が始まる。
激烈!炸裂!強烈!破裂!爆裂!モーレツ宇宙海賊最終話「そして、海賊は征く」
グランド・クロス号のタッチダウンポイントに、海賊たちは一斉にその船首を向けた。かつて銀河を駆け抜けた歴戦の猛者たちの船はしかし、単一行動を主流とする海賊船。こうして密接した航行は艦隊戦に慣れない海賊たちにとってみれば、かなり珍しい形となる。
タッチダウンポイントに近づくに辺り、弁天丸は改造し増設されたアンテナとレーダーマストを展開した。
それに合わせてクーリエが目にも止まらぬ速さで、自身のモニターに次々出てくる表示を片っ端から処理していく。さらにそれと平行して、各海賊船とのネットワーク網の構築を同時に構成していた。
クーリエ「みなさん、準備は宜しいですかあ?」
『OK!!』
クーリエ「さぁ、いきますよ〜」
茉莉香「いっちゃって!いっちゃて!」
グランド・クロスはタッチダウン中であり、その船影を超空間から通常空間へシフトさせている途中である。タッチダウン直後は通常空間に触れているレーダー/センサーは少ないため精密な観測はできない。グランド・クロスが自身のアンテナまで通常空間に復帰させた直後、それに合わせたようにグランド・クロスから強力な電磁レーダーがあたり一体の宇宙船を包んだ。これほどの高出力レーダーは戦闘用に使われるもので、多くの場合それは宣戦布告の意味を持っている。
さらに、そのタイミングに合わせ、クーリエは弁天丸の強化されたアンテナ・レーダーの出力を上げた。弁天丸を中心としたレーダー網が球面上に展開され、周囲を囲む海賊船たちのネットワークに超高速でデータが共有、送られている。
正面、右手、左手、さらには足元においたパネルを両足で操作し、常人の処理速度以上のパネル操作で順々に値を入力、修正しデータを構築、構成していく。
そうしてネットワーク同士リンクした海賊船は、それぞれの観測結果を弁天丸に送り、クーリエはがそれを集積・解析して周辺宙域の正確な位置情報をまとめあげた。
百眼「敵の射程に入るぞ!」
茉莉香「だいじょぶ!こちらの射程ギリギリまで接近!」
お互いの距離が近づくのを合図に、グランド・クロスはその大口径のビームの弾幕を海賊船団に注いだ。
全ての処理を高速で行なっている最新の戦艦であるグランド・クロス号のスペックは最高と言っていい。対してこちらは大した改造も施さずに独立戦争から引き継がれている古い型の海賊船である。バルバルーサのように戦艦のカテゴリーに入るならまだしも、弁天丸のように巡洋艦のカテゴリーになるとスペック上戦闘には向かない。それでも、持ち前の技術と腕で一流以上の仕事をやってのけるクーリエを筆頭に組まれた各海賊の電子担当のネットワークは、同期によるリンクの高速処理でグランド・クロスのソレと拮抗していた。
百眼「うっひぇ!情け容赦ねぇなぁ〜!」
クーリエ「大丈夫、妨害はうまく言ってる。」
敵にこちらの位置を悟られない限り、偶然を除いて砲撃が船体に当たることはない。グランド・クロスから見れば小型になる海賊船は、そういった意味では小回りの効く当たりにくいt敵でもあった。
茉莉香「弁天丸は当面、敵の電子妨害に専念。敵の重力波の反応、よろしくね」
百眼「わかってるー」
茉莉香「…私は、海賊の経験を信じる。海賊船に詰まっている、これまでの経験に、私は賭ける。だって海賊だから……!だって、私は海賊だから!!」
少女は宇宙を選んだ。海賊という器の中で、空を見る事を。
「――――。」
茉莉香「弁天丸!敵の右に回り込んで!相手の射程ギリギリに!」
ケイン「了解!!」
海賊ネットワークの中心に構える弁天丸は、今回の作戦の中心にいる。しかし、あらかじめ決められたことをやっているだけじゃ海賊は務まらない。その時々に臨機応変に対応してこそ、一隻で宇宙を翔ける海賊というものである。
強力なレーダーに包まれたかつての黄金の幽霊船の航路を、敵を欺く影を電波に乗せて弁天丸は作戦宙域を飛んだ。
先にしびれを切らしたのはグランド・クロスの方だった。
百眼「キター!重力波反応急上昇!!例のジグザグが来るぞー!」
予め重力波の観測をしていた百眼が、グランド・クロスの異常な数値を報告する。百眼が言うや否や、クーリエはものすごい速度で8ヶ所のパネルを縦横無尽に弾き、予測不能と思われたグランド・クロスの変則航行に今までのデータから予測航路を導き出す。
クーリエ「出現したパターンを出したわ!ざっとだけど、学生ちゅうもーーく!」
添付ファイルを一斉に全海賊にバラまくクーリエ。
『『『いただきました!!』』』
クーリエの予測から、グランド・クロスに狙われた海賊船は、ウィザースプーン船長が乗る海賊船エルサントだった。
ウェザースプーン「ほぅ、エルサントに来るのか……望むところだ。」
モンビター越しにバルバルーサの黒髭船長よりも多い黒髭を蓄えたウェザースプーン船長が左手に持ったスプーンを曲げつつ言った。彼は常に何かする時、スプーンを曲げる癖がある。
茉莉香「ひょっとして、あの三隻、一人で動かしてるの?」
三代目「えぇ!?一人!」
ケイン「なるほどな。そう思えば合点がいく」
三代目「え、そうなの?」
シュニッツァー「動きは変則的だが、三隻の操艦が平面的過ぎる。まるでボードゲームだ」
茉莉香「けっこう負けず嫌いっぽかったなぁーあの人。」
そうしてグランド・クロスは、独自に開発された重力制御機関による重力波の変則航行でジグザグに飛びながら、エルサントの前に出た。
適度に距離を保ちつつ、電子戦で座標を隠せば撃墜される事はほとんどないが、一気に急接近してしまうとそうもいかない。まぐれで当たる確率が格段に上がるからである。そして、たった一隻で軍艦隊並みの火力を持つグランド・クロスから超至近攻撃は、弾幕の中を飛ぶ宇宙船の死を意味した。
隙間なく注ぎ込まれる弾幕に呑まれ、海賊船エルサントはその船体を何箇所も被弾した。
ウェザースプーン「なあるほど、圧倒的だな。へへ。其れ故付け入る隙だらけだ!」
モニターのグランド・クロスに向かってウェザースプーンはスプーンを向け、そして、曲げた。
エルサントは、グランド・クロスの火力にそのまま押し切られ、グランド・クロスの巨大な艦影を上回る大きさの爆発を起こした。
激しい爆発は、周辺のレーダーに余計なノイズを混入させる。“自ら”大爆発した海賊船の中から、グランド・クロスを覆い隠すほどの大量の攪乱幕が辺りに散らばった。
――0―――――0―――――0―――――
クォーツ「自爆!?囮か……しまった!!」
爆発の余波でレーダーの感度が大きく下がる。それに合わせたように、今度はグランド・クロスの船体に激しい衝撃が走った。
クォーツ『―――!?』
攪乱幕と無人船の爆発によって視界を塞がれたグランド・クロスに、海賊艦隊のミサイルの集中砲火が行われた。
カチュア「攪乱幕に向かってミサイル攻撃!!せっかくの獲物だ、大歓迎してやるよ!」
『戦場がよう見える!!弁天丸の娘っこ、なかなか頭がええわい!!』
「敵の一機がたこ殴りの救出に向かいます!!」
『よーし!ローオブウォーは迎撃に向かうぞい!』
『ラブマシーン!ローオブウォーを援護するぞー!』
『俺も忘れるな!』
『よぉし!来い!!』
独立戦争当時の古参三人衆、海賊船ローオブウォー、ラブマシーン、ダークスターの三人の老船長のチームである。
百眼「重力波シールドはあくまでもビーム兵器や防御に過ぎん。実体弾、しかも広範囲に大規模なミサイル攻撃に対しては、どこまで耐えきれるか…しっかし、海賊のミサイルは情け容赦ねぇと来たもんだ!」
そうしてグランド・クロスの援護に回ったもう一隻グランド・クロスベータは、老船長三隻の集中砲火に堕ちた。
『よっしゃあ!オリジナルエイト!』
『ナイン!』
『テン!』
爆発する巨大戦艦を背景に陽気な男たちの声が通信網に響いた。
ケイン「海賊が艦隊戦か。なんだか不思議なもんだな」
茉莉香「昔はしていたんでしょ?」
百眼「独立戦争の頃はな。でもここ百年では初めてじゃねぇか…?」
茉莉香「その割にみんな凄い!まるで本当の艦隊みたい!」
百眼「まぁ元々、軍事演習の相手やら兵器のテストやら、ヤバイ事は散々やってる連中だしなー……。俺達もだけど。」
シュニッツァー「アドリブで連携くらい取れなければ商売できない。」
茉莉香「敵に増援の動きは?」
百眼「なしだ」
茉莉香「よし!」
茉莉香は船長席から立ち上がった。
クーリエ「船長、シャングリラから通信。いつでもOKだってえ」
茉莉香「わかった!じゃあミーサ、後はお願い。シュニッツァー!百眼!」
シュニッツァー「ん。」
百眼「クーリエ、後は頑張れよ」
クーリエ「あーい」
ミーサ「本当にやるの?」
半分呼び止めるように、半分試すように、ミーサは茉莉香に訊いた。
茉莉香「当たり前よ。今度はこっちが乗り込む番、見栄えで負けたら海賊として癪じゃん」
ミーサの目には、かつての同僚の影とその言葉が重なって見えた。
――――0―――――0―――――0――――――――
クォーツ「攪乱幕など突っ切ればいいだけ!!!」
グランド・クロスガンマは、再び重力航行先で攪乱幕を展開されるが、今度は瞬時に攪乱幕が展開された宙域を重力航行で突破した。
しかし、用意されていたのは裏の裏。突破した先でまっすぐこちらに向かって飛んでいたのは、黒髭船長率いる海賊船戦艦バルバルーサだった。
クォーツ「―――――!?」
ケンジョー「力押しが過ぎるな嬢ちゃん。」
バルバルーサの船体に取り付けられた一発限りの極大のミサイルを、計算通りの地点に移動してきたグランド・クロスガンマに打ち込む。小型の戦艦の胴程の幅があるミサイルはそのままグランド・クロスガンマの重力制御機関を貫いて垂直に刺さった。
チアキ「………。」
ケンジョー「喰えよ。腹いっぱい!」
内包する中で一番重要な機関である重力機関に打ち込まれ、グランド・クロスガンマはあっという間に火を吹き上げ、派手な爆発と共に宇宙に散った。
ケンジョー『二隻目も潰した。後は任せたぞ、キャプテンマリカ!』
―――――0―――――0―――――――0――――――――
クォーツ「弁天丸……!!加藤茉莉香!!」
そうして残った最後の一隻。二度もその攻撃を凌いだ唯一の海賊船に向かって、クォーツは重力制御航行先を弁天丸に向けた。
クーリエ「敵艦!目標は弁天丸!!」
三代目「うわ……。」
思わず三代目が息を呑む。
ミーサ「ケイン?」
ケイン「わかってる!」
ルカ「弟さん、この間の戦闘の時、うまくやったそうね」
不敵な笑みを浮かべてルカがケインに言う。
ケイン「俺は弟より上手い」
ルカ「ふ。」
―――――0―――――0―――――――0――――――――
上へ下へ、右へ左へ、前へ後ろへ。非物理的な方向転換を繰り返しながら、高速で巨大戦艦が弁天丸に迫る。
ケイン「よっと!」
ガラララ。ケインは操舵を思いっきりきった。
ルカ「見えない。」
弁天丸は、グランド・クロスの目の前で大きく旋回した。
そうして、弁天丸の真後ろを飛んでいたマスタードラゴン率いる海賊船シャングリラは、グランド・クロスにまっすぐ飛び出した。
―――――0―――――0―――――――0――――――――
クォーツ「何が起きた!!」
瞬間。船体に激しい衝撃が走る。それまで平常を保っていたコントロールモニターが一転して赤くアラームを鳴らす。
船体異常を感知したモニターには、グランド・クロスの中心に突き刺さっている海賊船シャングリラの船影が映し出されていた。
クォーツ「まさか……白兵戦!!?」
海賊は派手に。誰よりも雄々しく。
宇宙服をアトリエマミのオーダーメイドでカスタマイズし、茉莉香はグランド・クロス船内に降り立った。
茉莉香『ふむ……。みなさん、いいですか?』
シュニッツァーを筆頭にシャングリラの陸戦部隊が全員頷く。
目的はグランド・クロスを中から沈める。艦隊戦が海賊流儀なら、白兵戦は海賊の華。
ケンジョー「チアキよぉ……」
チアキ「――。」
ケンジョー「この戦いの後、お前はどうするんだ?」
チアキ「え――」
ケンジョー「俺は今の稼業が気に入ってる。この戦いは俺の誇りのためでもある。でも違う事を考える奴も当然いるだろう……。お前はどうしたい?」
チアキ「……。」
チアキは、考えた。これからの自分。もし、私も、彼女のように、なれるのかなと。
ケンジョー「キャプテン・マリカと征くか。」
チアキ「――!」
マスタードラゴン「ヂュワ!!」
胸の前で両手を合わせ、人差し指と中指だけを立てて、ニンポーと呼ばれるポーズをとるマスタードラゴン。クォーツが送り込んできた白兵戦用のアンドロイドのビーム攻撃を彼の周囲に張られた電磁シールドが弾く。
マスタードラゴン『成敗!!』
敵の次弾を待たずして、後ろに控えていたシノビ部隊が、かつてはクナイと呼ばれていた短刀でロボットを切りつけた。
さらにロボットたちの弾幕をものともせず突っ込むムラカミマルの船長。そのまま勢いでロボットの一団に体当たりして攪乱する。
『すげぇ…海賊とかそういう問題じゃねぇ、凄すぎる。』
百眼『あるほど、思った通りだ。基本はオートマチック。操船は一人で行われている。目的の場所は――――』
茉莉香『場所は?』
・・・・・・・・・
近道。という事でシュニッツァーの大口径ランチャーで壁抜けしながら中央コクピットへ向かう。
茉莉香『クォーツ!クォーツ・クリスティア!!』
クォーツ『ようこそ、茉莉香。』
たどり着いた簡素な部屋の中央が開き、銀色の髪に澄ました顔を従えて、クォーツ・クリスティアは茉莉香たちの前に現れた。
クォーツ『グランド・クロスへようこそ。』
茉莉香『てっきりもぬけの殻かと思ったわ。お出迎え感謝します。』
クォーツ『逃げも隠れもしないわ……。それにしても。』
クォーツは目の前に立つ少女を見た。紅色の宇宙服に金色の線の草食、肩の腕章と海賊帽。
クォーツ『ホンット、派手ね』
茉莉香『海賊だもん、当たり前よ。この間の話の続き、したかったの』
クォーツ『続き?』
茉莉香『私たちは海賊じゃない。ショーみたいな営業をしているだけの無用のもの。そう言ったわよね?』
クォーツ『えぇ。』
茉莉香『確かにショーはどうかと思う。時々ノリノリになっちゃうし……。でもね』
そっと、少女は胸を手に当てた。
茉莉香『私は今、ここにいる。弁天丸船長加藤茉莉香は、この宇宙に、今この時に存在している。なぜ私が海賊なのか……それは、私が加藤茉莉香だから!!』
加藤ゴンザエモンから受け継がれた私掠船免状。独立戦争があって、今の惑星があって、今の街の、今の家に、今の自分がいる。海賊だから、じゃない。だから、海賊なのだ。
茉莉香『それじゃあ答えになってない?だぁって問題にもなってないんだもん。おあいこだよ』
クォーツ『おあいこ……。』
ふと、彼女の表情が初めて緩んだような気がした。
シュニッツァー「両手を上げてこっちに来い。捕虜の扱いは帝国軍軍規に則って――――」
シュニッツァーが言い終わる前に、クォーツはコクピットごと球体カプセルとなり、天井を通って勢いよく部屋を飛び出した。
茉莉香『―!』
シュニッツァー「しまった!?」
クォーツ『早くお逃げなさい。まもなくこの艦は自爆します。』
百眼『あぁ〜、やっぱり?』
シュニッツァー「船長。長居は無用だ」
茉莉香はシュニッツァーに返事をしようと思った時、クォーツの抜けた穴から彼女の声が聞こえた。
クォーツ『茉莉香。』
茉莉香『何?』
クォーツ『おいでなさい。より広い宇宙(うみ)に。それを望む人がいる……。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
シュニッツァー「グランド・クロスの最期だ」
そうして、乗り込んだ陸戦部隊を引き連れて、シャングリラはグランド・クロスから脱出した。
激しい爆発が自身を包み込み、巨大な戦艦はいとも容易く宇宙の塵となって、海賊の勝利を謳った。
茉莉香『えー、本日は晴天ナリ。あめんぼ赤いなあいうえお。』
海賊艦隊は帰路についた。
茉莉香『こちら弁天丸船長加藤茉莉香です。船を乗っ取っちゃうという作戦は見事に失敗しました、が。勝利です!!みなさん、お疲れ様でした!』
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」
―――――0―――――0―――――――0――――――――
クォーツ『戦闘データは取れた。証拠は無くした。でもプライドはズタズタ……。また逢いましょう、茉莉香』
―――――0―――――0―――――――0――――――――
グリューエル「なんですって!もう終了!?」
オデット二世のブリッジで、マミに作ってもらった海賊船長服を着たグリューエルが言った。
グリューエル「せっかくのマミさんの衣装、無駄になってしまいましたわ」
グリュンヒルデ「でも、よかったではありませんか。茉莉香さんたちが勝って。」
ジェニー「というわけでどういうわけで。現役組の皆さんは卒業組に任せて、お迎えの船で撤収するように。いいわね?」
ジェニーを含めた卒業生3人。実はグリューエルの提案で、オデット二世も受信した海賊の歌を頼りに卒業生も巻き込んでこっそり海賊の巣へ向かう算段であった。理由はもちろん、弁天丸の援護。オリジナルセブンの一隻白鳥号はしかし、太陽帆船なので推進力が足りず、結局到着する前に戦闘は終結してしまったのだが。
サーシャ「じゃあハッチ前に集合、荷物も忘れないでねー」
アイ「帰ったら試験かぁ…」
ヤヨイ「やだねー」
ジェニー「後は任せて。」
リン「あぁ。」
ジェニー「オデット二世は無事に送り届ける。あなたは試験に集中しなさい。」
リン「うん。卒業試験が終わったらそっちにいくよ。だから、待っててくれ。」
ジェニー「えぇ。よろしく頼むわ、ぱーとなーさん!」
梨理香『オデット二世、ヨット部員、迎えに来たよ!』
オデット二世に接近する「大宇宙を駆ける大いなる海賊船パラベラム号」。通信に応じたオペレーターの声は、どこかで聞き覚えのある声であった。
グリュンヒルデ「あら、どこかで聞いた声が」
梨理香『あぁ!とにかく、大人しく待っといで!』
・・・・・・・・・
グリューエル「お久しぶりです!!」
鉄の髭「あぁ……。その服、よく似合っているね」
大男と少女は、銀河を背に向かい合っていた。
グリューエル「わたくしの依頼、引き受けていただいて、ありがとうございました」
鉄の髭「オデットの二世の船員(クルー)を試験前日までに母星へ送り届ける。パラベラム号の船足ならば、造作もないさ。」
グリューエル「ゴンザエモン船長、茉莉香さんとはお会いになったのですか?」
大男は少し笑みを零し、窓の向こうの銀河を見た。
ゴンザエモン「私は、宇宙海賊鉄の髭だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梨理香「まぁ、あのロクデナシなりの愛情表現なんだろうねぇ。ほんっと昔っから回りくどいんだか、直接なんだか、わけわかんないんだけど。」
梨理香はパラベラム号のオペレーター席に寄りかかった。
マクドゥガル弟「それに付き合うあんたも大概だぜ。ま、オレたち兄弟もそうか」
梨理香「あたしの娘はどうだった?ちゃんと海賊してたかい?」
マクドゥガル弟「あぁ、そりゃもう末恐ろしいくらいに。オレとケインが一致した意見だ。」
梨理香「そうかい」
マクドゥガル弟「楽しい船だったなーーー。弁天丸」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ケイン「ねぇ船長?」
茉莉香「なぁに?」
ケイン「思うんですよ、弁天丸はこの先、どこに向かっていくのかなーと。」
操舵輪を握ったまま、ケインが背中越しに言った。
ケイン「船長はどこへ行きたいですか?」
茉莉香「……。今の私は、みんなに支えられてる。みんなの知らないところで、私のために私の知らない色んな人たちが動いてるんだなって、今回実感した。」
ルカ「見えた?」
日焼けした航法士が水晶を翳す。
茉莉香「誰がどう動いてるとかなんとか、今はわからない。みんな内緒なんだろうから、それは追い追い。だから、しばらく女子高生海賊で行かせてもらうね!それが私の今!」
クーリエ「だったら後期試験、頑張らないとね。」
せっかくの増設した通信設備も、使わない今となっては通信士のお菓子置き場である。
未知への道は開かれた。決断の連続の果てに見える世界はなんなのか。弁天丸船長加藤茉莉香は、どんな決断をして、どんな未来を掴むのか。果たして・・・・・・。
・・・・・・・・
そして。
ウルスラ「チアキちゃーん!」
アイ「チアキ先輩!」
真希「三年生も一緒だね!」
ウルスラ「友よー!」
チアキ「やめれこら!……茉莉香は?」
アイ「今日はお仕事です。」
熱血で紳士な操舵手。ケイン・マクドゥガル。
少々心配症な機関士。三代目。
道はどこまでも果てしない。そもそも宇宙に果てはない。だからこそ、未曾有の危機も、絶体絶命のピンチも、頼れる仲間と共に宇宙を駆ける。
これは、とある女子高生加藤茉莉香とその海賊たちの物語である。
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