モーレツ宇宙海賊第十二話「永遠よりの帰還」
かつてセレニティの民を運んだ恒星間移民用世代間宇宙船。今は「黄金の幽霊船」として宇宙を彷徨う。加藤茉莉香率いる弁天丸は、正統第七皇女グリューエル・セレニティと共に巨大なその船内にいた。
クーリエ「幽霊船が跳ぶわ」
茉莉香「全船、対衝撃防御!」
幽霊船は再びその亜空間に消えた。その謎がついに解き明かされるのだ。
ケインの運転で無理やり先端ハッチから車庫入れした弁天丸は、グリューエルの妹であるグリュンヒルデ率いるセレニティ艦隊より先に幽霊船に到着。着いたと共にハッチが閉じ、幽霊船は亜空間を漂う。
茉莉香「こっちが上。そしてその反対がした。無重力だと、自分がどっち向いてるかわからなくなるからね、上下を言い聞かせるの」
無重力空間に余り慣れてないのか、着方も覚えたての宇宙服を纏ったグリューエルに茉莉香はコツを教えます。
グリューエル「今、私の頭が向いている方が上で、茉莉香さんが正面にいるのですね。」
茉莉香「そういう事。自転が止まってるから宇宙船は無重力、行ける?」
グリューエル「・・・・・・行かないと、いけないのです。」
確かな決意を込めた瞳は、この場所はこのまま気軽に行ってそのまま気軽に帰ってくるような、そんな簡単な場所では無い事を物語っていた。
その意図を組んでか、少しでもプリンセスの緊張を解そうと茉莉香は、左足を一歩下げ、体を斜めに右手を差し出す。宇宙服を着ていても、それは女性をエスコートするために差し出された手だとすぐにわかる。
茉莉香「どうぞプリンセス。伝説の宇宙船(ふね)に乗り込みましょう」
グリューエル「・・・。手なんか出したら・・・だめです。頼ってしまうじゃないですか。」
茉莉香「自分一人でできない事は、いくらだって頼っていいのよ?宇宙ではひとり、みーんなひとり。何もしようとしない人には、誰も手を差し伸べません。」
弁天丸のハッチで佇む二人。メンテナンスのために船外を照らす照明は、茉莉香を見るグリューエルには逆光であり、その光で輝く茉莉香の言葉はより深く、グリューエルに響いた。
ミーサ「まるで王子様とお姫様ね。」
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船内ポートからしばらくして、黄金色に輝く大きなゲートが構える場所に出る。セレニティ王家の紋章が入った特殊なゲートを解析するのは、同行してきた百眼と、弁天丸で留守番中のクーリエの仕事だ。
茉莉香「開きそう?」
百眼「そう複雑なロックがかかってる訳じゃないから、心配ない。」
グリューエル「ふぇ!?」
茉莉香と百眼の会話に入ってきたシュニッツァーを見たグリューエルはびくっと怯む。酸素と窒素を含む大気が無い空間では、宇宙服を着用しないと人間は生きられないが、他の乗組員と違って彼だけは生身でそこにいたからだ。
茉莉香「やっぱりびっくりするよね、初めて見ると。サイボーグで宇宙服いらないって解ってても、ね。」
その話を聞いて不敵に笑うシュニッツァーにまた、びくりとするグリューエル。この世界ではサイボーグってどれぐらい珍しいんですかね。
機関室も全てシャットダウンしている今、動力は宇宙船の航行だけに動いているらしく、扉は認証以前に電源が通っていなかった。そこで弁天丸から引っ張ってきた電源ケーブルを扉と接続し、巨大な扉を開く。中に広がる暗闇を抜けて、茉莉香達はさらに奥へと進む。
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クーリエから入った通信では、幽霊船の中の別の発着口に弁天丸とは別の反応を確認。数や規模はわからないが、第三者が侵入してきた形跡があるとの事。当然目的はこちらと同じか、またはこちらの妨害か。
グリューエル「急ぎましょう」
暗闇に閉ざされた空間をひとつひとつハッチを開きながら奥へ進む。
茉莉香「じゃあグリューエル、どこへ向かう?」
グリューエル「え?機関部やブリッジへまず向かうのではないのですか?」
茉莉香「それはセレニティの人達に任せましょう。何度も調査団を送ってるんだから解ってるでしょ。」
グリューエル「無責任ですねぇ・・・」
茉莉香「そりゃあもう海賊ですから〜!」
機関部が動かない以上は他の自動扉も全て閉じている。そのため、ところどころで行き止まりになるが、百眼達が金庫破りで開けたり、シュニッツァーの怪力で無理やりこじ開けたりして進んでいく。
セレニティの黄金の幽霊船。その正体は、セレニティの最初の民を運んだ恒星間移民船だった。大昔の超高速機関を持たない宇宙船は、惑星間を航行するのには膨大な時間を費やした。そのため、そこに住む人々は何百年にも渡って宇宙船内で街を作り、冷凍睡眠(コールドスリープ)を繰り返して世代を渡ってきた。
グリューエルの目的はその冷凍睡眠されている船室。だが、その途中で突如通路に電灯が灯される。機関部が何者かによって動き出したのだ。
茉莉香「ね?あっち任せで良かったでしょ?」
グリューエル「はい!」
ミーサ「この辺の明かりが点いたって事は、あっちのモニターシステムも復活してると思っていいわ。」
茉莉香「あっちに私たちの居場所がバレてるって訳か。まっ、しょうがない。」
グリューエルに聞こえないボリュームで話す二人。プリンセスにはできるだけ負担をかけたくない。明かりが灯って見通しが良くなった長いパイプを茉莉香たちは進む。
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程なくして中心部に出る。
照らされた通路から見える景色は、街そのものであった。円柱状の巨大な宇宙船の船内はその円柱状の壁の内側に360度、街が築かれていた。
グリューエル「この宇宙で、真に普遍的な価値を持つものがあるとしたら、なんだと思いますか?」
そんな街で囲まれた空間の中心をまっすぐに伸びる通路を飛びながらグリューエルがふいに茉莉香に聞いた。
茉莉香「普遍的な価値?」
グリューエル「かけがえの無いもの。貴金属は貴重ではありますが、手間と時間さえ使えばいくらでも作り出せます。」
茉莉香「・・・芸術とか、文化とか?」
グリューエル「そうですね。もし遥かな未来であっても文明が文明としての知性を持っている限り、芸術や歴史には高い価値があります。」
茉莉香「知性ねぇ・・・。」
答えがあるような無いような、そんな問いかけに茉莉香は少し考えていた。
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百眼「こいつはすげぇ〜!」
グリューエル「何ですか?」
茉莉香「なんか変なモニター・・・。」
百眼が目を輝かせて電子パネルを動かす。どうやら相当古い旧式のモニタのようで、はしゃいでいるみたいです。ここから先はプリンセスの認証も必要らしく、グリューエルと交代して名前を入力。
茉莉香「いよいよお宝と対面かしら?」
グリューエル「おそらくこの宇宙船のなかには、皆さんが期待するようなものは入っていません。」
茉莉香「でも宝はあるんでしょ?」
茉莉香のその問いには答えず、その表情に緊張感を漂わせたグリューエルはそのまま扉を開きます。
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ミーサ「宝箱にしては淋しいわねぇ。」
扉の向こう側には、漂う書物や骨董品となった数々の品。それも無造作に漂っているだけです。保存庫もところどころ開いていて、荒らされたような印象を受けます。
茉莉香「外れぇ?」
グリューエル「他の倉庫も似た状況だと思います。」
茉莉香「芸術品は?絵画は?窒素まで使って保存してたんじゃないの?」
グリューエル「確かに。かつてセレニティ王宮は超高速以前の文化遺産を黄金の幽霊船につぎ込みました。しかしそれは、過去の経済危機を克服するために、そのほとんどを運び出したはずです。」
百眼「そのための調査団か。」
グリューエル「はい。」
宝物庫“だった”場所を横切る。歴史ある文明の宝が眠っていた場所。しかし、今回の目的はこの奥にある。百眼の操作を1回で覚えたグリューエルは、宝物庫の奥の扉を開く・・・。
百眼「スリーパー区画だ。」
先ほどの部屋とは対照的に真っ白な部屋。そこに広がる空間は、全ての生物が眠る場所だった。
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ミーサ「ここが幽霊船の本来の役目を期待された場所ね。」
六角柱状の柱が隙間なく埋め込まれた空間。その柱ひとつひとつに遺伝子と実物のサンプルを蓄え、セレニティ王星系の生態データを他の星で再現できるように格納された場所だった。
茉莉香「凄いじゃないグリューエル。さすがセレニティ王宮ね。やる事が大きいわ」
グリューエル「国民がいません」
茉莉香「え?」
グリューエル「ここにあるのは、かつてのセレニティの自然と、移民船によって持ち込まれた生命のバックアップでしかありません。仮にどこかの星にセレニティの星を再現しても、それだけの事です。」
茉莉香「もっと大事なものがあるのね」
グリューエル「・・・。」
普遍的な価値。それは文明か。知性か。
真っ白なスリーパー区画を抜けると一番奥に一際厳重な扉が行く手を塞いでいた。床に描かれた円の中心にグリューエルが立つと、扉は自動的に作動した。機械仕掛けの真っ赤な花のツボミ伸び、ツボミの先端には僅かに穴が開いていた。
茉莉香「何?」
見慣れないその装置を見て茉莉香はグリューエルに聞いた。
グリューエル「昔なら、血を一滴、と云ったところでしょうか。」
そう言ってグリューエルは自分の金色の髪の毛を一本、その場でツボミの先端にすっと入れた。それが王族の遺伝子認証なのか。第七正統皇女の遺伝子を感知した扉は重い音を響かせて動き出す。が、人ひとり分の隙間も開ききらないうちに扉は止まってしまった。
シュニッツァー「任せて貰おう。」
サイボーグのくせに肩を鳴らしながら見せ場とばかりにシュニッツァーが歩み出る。が、彼一人では開かず、その場にいた男勢全員で両側から引っ張ってようやく扉は開いた。
扉の向こうには一際広大な空間が広がっていた。中心には、いくつものケーブルで繋がった不思議な赤い光を放つ球体が、その部屋の主であると主張するかのように佇んでいた。
神々しいまでの大きな華に見えたその球体を、グリューエルは決意を秘めた瞳で見つめる。
茉莉香「なぁにこれ?」
グリューエル「!」
茉莉香「自分一人で入ったら、ハッチ閉じようかと思ってた?」
グリューエル「・・・。あの大きなハッチを開けようとしている時に、それは諦めました。」
茉莉香「これが、さっき言ってた大事なものなの?」
グリューエル「はい。」
ミーサ「あらまぁ・・・一体いつの時代のもの?こんな大規模なプラントは初めて見たわ」
グリューエル「なんだか、わかりますか?」
ミーサ「言っていいの――――?人工子宮ね。」
「――――!?」
ミーサ「いっぱいコードが繋がっているツボミみたいなところが、受精卵を育てる人工子宮とその維持装置。真ん中のブロックは遺伝子のコーティングやチューニングを行うシステム。そんなところかしら?」
グリューエル「見ただけでそこまで解るとは、医者とは恐ろしい職業ですね。」
ミーサ「半分出まかせ。ちょっとカマかけてみただけよ。そんなところかなぁ〜って。そう、これがセレニティ王家の生まれの証ってね。」
人工子宮。王族が王族であるが由縁。恐らく王族はここから生まれている。セレニティの純潔を持って。だからこそ、生まれて十数年のグリューエルの承認も通用した。なぜなら・・・。
しかし、落ち着いているのもつかの間、弁天丸から通信が入る。
クーリエ『こちら弁天丸。良かった。船の中だから上手く繋がらないかと思ったけど、大丈夫みたいだね。』
茉莉香「こちらの現在地、見えてる?」
クーリエ『やっと幽霊船のネットワークに入り込めたの。大体のポジションは見えてる。それでね、他に動き回ってるのが3つか4つ。そしてそのうちのひとつがそっちに向かってる。』
クーリエが言い終わるやいなや、部屋の天井のハッチが動作音を鳴らして部屋を反響させた。
茉莉香「ありがとう。ちょうど今到着したみたい。」
天井の動きを察知してシュニッツァーの指揮で弁天丸戦闘員はグリューエルと茉莉香を囲んで陣形を組む。
開いたハッチから覗いた影は、こちらと同じ程の武器を持った集団であり、その先頭にはグリューエルと同じ背丈の人が立っていた。
グリュンヒルデ「間に合ったようですね。まだ何もしていないようで安心しました」
グリューエル「いえ、もう全ては終わっているのですよ。セレニティの民が王宮を必要としなくなった時点で、私たちの役割は終わりを告げたのです。今更こんなものを持ち帰ったとして、何になるのです!」
グリュンヒルデ「だからと言ってこれを壊したからと言って何もならないじゃないですか。この『薔薇の泉』から最初の王が生まれ今の王宮の基礎が作られた歴史、お姉様だって知らないはずがないでしょう?例えそれが作られた歴史だとしても、セレニティの安定と繁栄は確かな事実です」
そう話すグリュンヒルデの傍らで、宇宙服のヘルメットを外す二人。それは以前海明星の外延までグリューエルに幽霊船の情報を持ってきたヨートフたちでした。思わぬ顔に動揺するグリューエル。そしてその後ろで徐々にお互いの戦闘員は銃口を正面に向け・・・。
グリューエル「血統が問題じゃないのよ!王宮はその役割を終えようとしている。今更『薔薇の泉』なんかに頼っても、過去の栄光は蘇らないし王宮の威光も戻ってこないわ!」
グリュンヒルデ「だからお姉様は甘いのです!」
グリューエル「ヒルデこそ現実が―――」「グリューエル伏せて!!」茉莉香
「――――!!?」
そういうやいなや茉莉香は閃光弾を投げて二人の間を光で遮ります。そのすぐ後に百眼が煙幕を張り、辺り一面を煙が包みます。直後に響く銃撃音、それとともに茉莉香、ミーサはグリューエルとグリュンヒルデそれぞれの宇宙服の給気口に催眠ガスを入れて二人を眠らせ・・・。
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茉莉香「起きた!」
目を覚ますとそこはコクピット。茉莉香に流されて認証に自分の名前を入力してぼーっとしていると徐々にグリューエルの意識がはっきりしてきます。
水筒を差し出された手を見てそれがキャサリンだと気づいたグリューエルは辺を見回して、先ほどまで向かい合っていた弁天丸のクルーとセレニティの部隊が談笑している光景を目にします。
グリューエル「あなたたち、なぜ一緒に!?」
茉莉香「利害関係の一致って奴?平和的解決よ、セレニティの兵隊さんがお姫様に手を上げる真似はできないでしょう?そういう事は無法者の海賊のお仕事。」
国を諦める自分の覚悟、この身を賭してでもと考えていた決意を、いとも簡単に読まれていた挙句、裏をかかれてしまった。そういう人だと云う事は薄々感じていただけに、グリューエルも多くは言わずにため息をつきます。
グリューエル「それで、みなさんは今何をしているんですか?」
茉莉香「幽霊船を母星に返すの」
グリューエル「幽霊船はセレニティ星系に向かっているのですか!?
クーリエ「そうよお。確率的量子論と多元宇宙理論を同元時空で計算して辻褄合わせるの大変だったんだからぁ」
いつの間にか弁天丸から降りてきていたクーリエが、幽霊船の航行制御を設定し直したようだ。
グリューエル「そんな!私が一体何のために幽霊船に乗り込んだと思っているのですか!!」
茉莉香「だって、教えてくれなかったじゃない」
グリューエル「あ――――・・・。」
グリューエルは後ろで横になっていたグリュンヒルデに目線をズラした。恐らく幽霊船をセレニティに持ち帰ろうとしていたのはグリュンヒルデであり、それを阻止してあの『薔薇の泉』を止めようとしていたのがグリューエルだろう。
茉莉香「大丈夫よ、あの生態プラントもう打ち止めだそうだから・・・。」
グリューエル「え?どういう意味ですの」
茉莉香「『薔薇の泉』はもう枯れてたの。あのプラント、遺伝子細胞も生態サンプルもすっかり切れてた。」
グリューエル「そんな・・・・・。」
震える声でそう言うグリューエルの後ろで、ヨートフとミーサが入ってきた。ミーサの手の中には生まれたての赤ん坊がちんまりと収まっていた。
茉莉香「ごめん訂正、“最後の一人”で打ち止め。」
グリューエル「最後の一人・・・。」
ミーサ「この宇宙船出身の最後のセレニティ王家の血統ね。ちょっと早産だったけど大丈夫。初めまして〜お姉様〜。」
ミーサの手に抱きかかえられた小さな命をグリューエルにそっと移す。無重力空間でも不思議なほど命の重みはつ伝わり、そこに確かな人間として存在していた。
グリューエル「私は・・・この子を殺してしまう所でした・・・。」
茉莉香「このタイミングで来たから助けられた、それでいいじゃない。この子、もう少し遅かったら蘇生不能のまま、氷ついてたかもしれないんだって。」
「海賊稼業は結果オーライ、ね!」
楽天的だけど、考え込み、重いものを背負ってきたグリューエルには、余りにもそれは救いでした。過程より結果。人の上に立つのは船長もプリンセスも同じですね。
グリューエル「ありがとうございます・・・!!」
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グリューエル「でもどうやってヨートフとあの時示し合わせたのですか?茉莉香さんは読心術でも使えるのですか?」
茉莉香「全然。幽霊船と接触する前、グリューエルをブリッジから追い出した事あったでしょ?あの時にセレンディピティに暗号を送ったの。ヨートフさんが察しの良い人で助かったわ。」
グリューエル「そんな前から・・・。私とヒルデはずーっと騙されていたのですか・・・。」
茉莉香「騙してないわよ。黙ってただけ。」
グリューエル「あなたは本当にお父様に・・・加藤船長に似ていますね・・・」
ふいにこみ上げる笑いをこらえながらグリューエルは茉莉香に言った。
茉莉香「え?そうなの?どこが?」
グリューエル「ズルいところ。良い意味で。」
茉莉香「そんなぁ・・・!」
色々あったが最後はこれで良かったのだ。この海賊を頼って良かった。グリューエルの笑顔にはそんなメッセージを感じ取れた。
姫と海賊。似て非なる二人のお嬢様の長旅もこれで終わり。
ケイン「通常空間に復帰する!」
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眩い閃光と共に再び見えた宇宙空間には、かつて茉莉香がネットで調べたあの綺麗な惑星が浮かんでいた。
グリューエル『私たちはグリューエル・セレニティ』
グリューエル『共にセレニティ王家の正統皇女です。』
『私たちは今ここに、伝説の黄金の幽霊船と共に帰還致しました。』
『かつてこの船は王宮の栄光を担った移民船でした。』
『彷徨える黄金の幽霊船は、千年以上の刻を経てここ、セレニティに帰ってきました!』
『セレニティの皆さん!!聞いてください!!』
茉莉香「頑張って。グリューエル。」
宇宙空間には二つの姫の声が国中を包んで放送された。その傍らでこっそりハッチを抜け出した弁天丸。
任務は幽霊船捜索と姫を送り届ける事。ならば両方済ませた今、ここに用はない。
「弁天丸!!全速前進!!目標、海明星!」
少女達は出会い、そしてそれぞれの使命を果たす。これは宇宙を翔ける海賊と姫の冒険のほんの一部に過ぎない。
次回、「茉莉香、招待する」
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