【FGOシナリオ】惑う鳴鳳荘の考察 『鳴鳳荘殺人事件』序
黒いタキシードを着た男が誰かを待っていた。
男の様子は気だるそうだった。いつもは余裕を浮かべている表情から、どこか焦りの色が滲み出る。
そこは、絢爛な装飾が施された広間の一室だった。
上へと続く階段からゆっくりと一人の女性が歩いてくる。
女性もまた、男と同じ銀髪で黒い礼装に身を包んでいた。
女性も気だるそうな表情を浮かべていたが、男とは別の理由であった。
広間を抜けて二人は、扉を開いた、そこは明るく彩られた大広間に繋がっていた。
落ち着いた様子の女性が二人を出迎えた。
気品のあるその顔には、少し、疲れが見える。
軍服の男が視線に気づいて二人に話しかけてきた。
男は目線を意図的に逸らした。
今度は、独特な服装に身を包んだ二人組が声をかけてきた。
ポロロン、と男は得意そうに手に持っていた短琴のような楽器に指を走らせた。
気品のある女性はその言葉を飲み込むように、沈黙した。
しかし、次の瞬間、体を大きく揺らし始めた。
そして、女性はそのまま倒れた。
これは、まだ事件になる前の、もうひとつの事件。
探偵の出番はもう少しあと。