【毎日更新】line walker ゲームプレイ日記

毎日欠かさず更新して約11年目・・・・・。FGOとホロライブ・ホロスターズ中心のブログです。

モーレツ宇宙海賊第十八話「打ち上げはジュース」









 突如流れる銀の星の如く弁天丸に降ってきたジェニー・ドリトル。ヒュー&ドリトル社を巡る叔父とのお家騒動に巻き込まれ、無理やり花嫁に仕立てられた彼女は、弁天丸に助けを求める。ジェニーとリンの未来。そして、海賊としての自分自身の運と可能性を賭けて、茉莉香はジェニーに協力する事を決めた。


 弁天丸船長加藤茉莉香は、一体何をやろうと言うのか。果たして。




 強力な風邪のウイルスに感染した茉莉香を除く海賊船弁天丸の乗組員。完治するまでは病院船に隔離される事になってしまう。しかし海賊行為を一定期間行わない場合、百年以上前の独立戦争に発行され継承されてきた海賊免許「私掠船免状」がこのままでは剥奪されてしまう。乗組員を新たに調達して海賊行為をする事に決めた船長茉莉香は、自身が通う白鳳女学院ヨット部を連れて弁天丸に乗り込み、無事に客船相手の海賊営業を終える。
 しかし、部長リンは前部長ジェニー・ドリトルの誘拐を茉莉香に依頼。すぐさまジェニーの乗った偵察機サイレント・ウィスパーを回収するも、ジェニーを追ってヒュー&ドリトル社の私設艦隊が弁天丸に迫る。



 激烈!炸裂!強烈!破裂!爆裂!モーレツ宇宙海賊第18話「打ち上げはジュース」




 時空を歪める。それは宇宙船が超高速機関を持ってある座標からある座標まで瞬間的に亜空間を通ってジャンプする際に起こる現象である。それまでより遥かに短期間で人類の惑星間航行を可能にしたこの技術は今やほぼ全ての宇宙船に搭載された技術でもあった。

 超高速機関から出た出力は、亜空間を通って通常空間に放出される。エメラルドの輝きを放つ渦に包まれて、海賊船弁天丸は通常空間に復帰した。


「全天走査完了。」

グリューエル「プレドライブ現象。既に2つ3つ感知されています。」

茉莉香「了解。」


 超高速跳躍を行う際に、超高速機関からの出力は船体より先に通常空間にプレドライブ現象として現れる。つまり、その現象が感知されればそこに宇宙船が超高速跳躍してくる、という事を意味している。言うまでも無く跳躍してくる相手はヒュー&ドリトル社の私設艦隊である。


ジェニー「みんな慣れてるわね。本当の海賊みたい」

リン「そりゃまぁ、色々苦労したからな。」


 艦隊に電子妨害をかけるために、先ほどからずっと両手を動かし続けてリンが言った。


茉莉香「乗組員はともかく、宇宙船(ふね)は本当の海賊船ですし――――。お雇いになった船の乗り心地はいかがですか?」

ジェニー「うん、もう最っ高!大学卒業したら海賊船運営に回ろうかしら?」

リン「今から海賊免許なんて取れないぞぉ。新規で発行して貰えないんだからな。」

ジェニー「手はいくらでもあるって聞いたけどねー」


 右手を頬にあてて物思いに耽るようにジェニーが言う。


茉莉香「まぁ、卒業後の進路は後で決めて頂くとして、とりあえず目の前の作戦をどうにか―――!?」


 茉莉香の言葉を遮ってブリッジに緊急アラームが鳴り響く。


茉莉香「どうしたの!?」

「敵に補足されました!」

チアキ「ヒュー&ドリトル護衛艦隊。ハルフォット級戦艦二隻とコーバック級護衛艦が五隻!」

茉莉香「播いたと思ったのにもう囲まれた・・・。」

チアキ「後、一隻!」


 チアキは周辺空間の最後のプレドライブ現象から、もう一隻の宇宙船を報告した。






チアキ「戦艦、ジャバウォッキー!」

ジェニー「やっぱり出たわね・・・。」


 船長席のモニターに観測結果、船の照合データを表示させる。ジェニーの話では現取締役のロバート・ドリトルが直接乗っている旗艦のはずである。

茉莉香「本丸の登場か。」


 高エネルギー反応による緊急アラームがブリッジを赤く染めて鳴り響く。激しい船体の揺れと合わさって悲鳴を上げる乗組員達。


「「―――きゃあああ!!」」

リリィ「何が起こったの!?」

グリューエル「5時の方角から砲撃です!」


「砲撃!?」

「どうなっちゃうの私達・・・!」

チアキ「当たらなきゃ大丈夫よ!」




 急いで敵の砲撃パターンと戦術をシュミレーションして最適な航路を計算する。こちらが反撃する訳にも行かないのでとにかく逃げの一手が先決である。


茉莉香「エネルギー反応は?」

グリューエル「八つ。攻撃予測を計算中です。」


 事態に動揺を見せずにいつもより声を張るグリューエル。こういう事態には頼もしい。


茉莉香「先輩、電子戦は?」

リン「もうやってる!」

 先ほどまでとは比べものにならない位高速でパネルをタッチしながらリンは見抜きもせずに答えた。


茉莉香「アイちゃん!もう少しの間、頑張って避けてくれる?」

アイ「やってみます!」


 ケインに合わせた操舵席でアイが「宇宙みかん」箱を台にして、だいぶ慣れた手つきで舵を取る。ケインの体のサイズに合わせて操舵席はカスタマイズされているために、アイの身長では舵に手が届くのがやっとだったのだ。


ジェニー「応戦は?」

茉莉香「しません。攻撃をして、相手に怪我でもさせたりしたら、こちらの弱みになってしまいます。交渉が不利になりますから。」



 海賊だからと言って荒事を好むものでもない。いや、そうでもなくはないが、とにかく相手が大きければ大きいほど、こちらの勝ち筋は限られていく。数少ない選択肢を確実に熟す事で勝ち札を取らなければならない。それが海賊のノウハウでもあった。


ジェニー「解ったわ。その決定に従います。叔父はしばらく、こちらの出方を待つはず。その間に作戦を立てましょ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 艦隊からの攻撃が一時的に止んだ事を見計らって、茉莉香達は船長室で作戦を立てる事にした。髑髏の装飾で彩られた中世の海の船内を思わせる独特の部屋に、純白の花嫁は不思議と違和感がなかった。



ジェニー「ロバート・ドリトル。ヒュー&ドリトル社の取締役にして私の叔父。昔から、私の父である弟と派遣争いが耐えなかったの。私がフェアリー・ジェーン旅行会社を企業してからはさらにその争いは酷くなった・・・。」


 ゆっくりしている時間も無い。威嚇射撃を終えたハズの艦隊は、今度はより正確に照準を合わせてこちらを狙って来ていた。


グリューエル「あの、ジェニーさん。」

ジェニー「例えば、叔父様の弱点(ウィークポイント)などは思い当たりませんか?」

グリューエル「そうねぇ・・・弱点。姪のジェニーさんにしか分からない何かがあれば」


 得意の交渉術のネタを探し出すグリューエル。事、敵が大きければ大きいほど、頼りになる才能を発揮するのは茉莉香が良く知っている所であった。


ジェニー「・・・・ないわ。正面から攻めるのは無理ね・・・。裏から手を回せればいいけれど、材料が無い。」

チアキ「どうする?このままだと、電子戦で攻撃は躱せたとしても追いつかれてドッキングされたら終わりよ?」


 敵の攻撃は目下、部長リンが電子妨害で敵の照準及びこちらの座標データを全力で誤魔化している真っ最中である。

 逃げるだけなら勝ちには繋がらない今の状況を打開するネタ。正直この中では自分が一番役に立たなそうだなと思いつつ頭を捻らせていると、横でずっと黙っていたグリュンヒルデが口を開いた。


グリュンヒルデ「でしたら、少し視点を変えてみてはいかがでしょう?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ジェニー「ジュナイ・クールフ。星間運輸省長官の大物政治家セオドワ・クールフの長男。将来選挙に出馬予定のボンボンよ。」


 グリュンヒルデの提案で視点を変えた相手は、ジェニーの政略結婚の相手だった。端末のモニターに表示されたジュナイ・クールフは、派手な金髪をぴっちり揃えている割に前髪だけ跳ね、垂れた目元と下まつ毛が青い瞳とのバランスを散らかしてしまっている青年だった。


ジェニー「叔父は私とジュナイを結婚させて、さらなる事業拡大を目指しているの。」

チアキ「確かに、運輸省のコネがあった方が色々と便利ですね。」

グリューエル「加えてジェニーさんを政治家の妻にし、会社経営から外すのが狙いでしょうね」

茉莉香「視点を変えるってのはつまり、婚約者の弱みを握る、ってことね。」

グリュンヒルデ「少なくとも、結婚の障害は取り除けると思うんです。向こうのせいで破談になれば、叔父様の立場も少しは悪くなるでしょうし。」

茉莉香「なるほど・・・。」


 平気で淡々と相手を貶める策を講じる姉妹をどこか末恐ろしく思いながらも茉莉香は素直に感心して言った。


チアキ「まぁ、間接的なやり方ではあるけど。」

ジェニー「個人的な意見で悪いけど、私この婚約者はどうも好きになれないのよねぇ・・・。」

チアキ「どうしてですか?」


 ため息まじりに腕を組んでジェニーが言う。既に自分が花嫁の格好をしているのは忘れているようだ。


ジェニー「勘よ。女の勘。」

「「「「え」」」」


 天井を見つめてボヤくジェニーに全員が聞き返す。

ジェニー「どうせ政略結婚なんだし、カモフラージュとしてするのは構わないんだけど・・・」

茉莉香「あ、いいんだ」

ジェニー「いや!やっぱりいや!!」

チアキ「そりゃそうね・・・。」

グリューエル「私も一度だけパーティをお会いした事が――」


 一度会った人間の顔は絶対に忘れない、もはや定番のスキルを、さり気なく漂わせてグリューエルが言った。


グリューエル「・・・・。確かにびみょーでした。」

ジェニー「そう。びみょーなのよ何か。」

チアキ「びみょーなのは解りました。」

茉莉香「凄い、解ったんだ・・・」


チアキ「でもそれだけじゃ、何の弱みにもならないでしょ?どうするのよ?」


 ここでグリュンヒルデが目を閉じたまま、まるで誰に言うでもなく独り言のように大声で言った。


グリュンヒルデ「特権階級の方々と云うのは、多かれ少なかれ、何かしら弱みを持っているものです。叩けば何か出ます。」

茉莉香「え゛」

グリューエル「道徳心や充足なんて言葉、ありませんしね。」


 まぁ。と手を合わせて妹の意見に乗るグリューエル。特権階級の本人達が言うのだから説得力は半端ない。




茉莉香「う゛・・・」


チアキ「あなた達から言われると、妙に説得力あるわね。」

ジェニー「弱みと云えば・・・。」


 顎に指を置いて何かを思い出す仕草をするジェニー。


ジェニー「ジュナイは頻繁に自分の大型船内で、シークレットパーティをしているみたいなの。もしかしたら何か出るかもしれないわ。」



茉莉香「よし!恨みの無い婚約者さんには悪いけど、ここはひとつ、叩かせて貰いますか!」



 拳と手の平を突き合わせて茉莉香は声を張って言った。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



〜一方、星系軍錨泊空域内・病院船ベン・ケーシー(現在弁天丸乗組員隔離中)〜


ミーサ「ロバート・ドリトルって相当な曲者ね。元星系軍の出身で、政財界に顔が広いみたい。」


 持ち込んだ自前の端末を病院船内のネットワークに無理やり繋いで早くもカスタムを施した百眼とクーリエは、保険会社のショウから仕入れた情報を元に、現在弁天丸が相手にしているヒュー&ドリトル社について調べていた。


ケイン「会社艦隊だと侮っていると、船長達痛い目見るかもしれないな。」


 部屋のあちこちに表示させた立体ディスプレイから、取締役のロバート・ドリトル氏に関する新聞記事を見てケイン達が言う。


シュニッツァー「ボランティア団体に多額の寄付か。だが一方で、贈収賄の疑惑も尽きない。」





ルカ「偽善者・・・。」


 自分の水晶玉を新聞と自分の視線の間に挟んで、水晶の中に映る新聞の写真のロバート氏を見てルカが呟く。


百眼「出たぜ、ヒュー&ドリトルの帳簿。」


 どういう手を使ったのか。軍が管理している病院私設のネットワークから、大手の運輸会社の金融帳簿を引き出した百眼がそれをモニターに表示させて言った。


百眼「最初のセキュリティに手間取ったが、入っちまえばザルだな〜この会社。」

ミーサ「さっすが。」


 こういう諜報分野は百眼の得意とする所である。ものの見事に狙いの物を見定めた百眼は得意気にパネルをタタン、と叩いた。


百眼「んで、ここ。使途不明金。」


 百眼の言葉にその場の全員がモニターに顔を寄せる。


ミーサ「この金額・・・。」

百眼「色々調べたら、ぼろぼろ面白いものが出そーだぞ。」

クーリエ「こおんなのも見つけたよお」


 一方、別ルートでハッキングをしていたクーリエが、厳重に鍵がかけられているデータファイルを束にして表示させた。どのデータファイルにも“マル秘”だとか“TOP SECRET”だとかあげくの果てに“特別顧客リスト”なんのものがタイトルについていた。


ルカ「へぇ」

三代目「こりゃあまた・・・」

百眼「大したもんだ。」


クーリエ「ね!面白いでしょ?」

ケイン「あぁ。この事実をショウさんから船長に報告して貰おう。」



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 微速調整ブースターを細かく操作して、艦隊からの砲撃を躱す弁天丸。リンの電子妨害が効いているのか。それともまだ相手には当てる気がないのか。それは解らないがとりあえず全員無事で安堵のため息をつく。




リリィ「はぁ・・・とりあえず全部躱したぁ・・・」


 アイに賞賛を送るように親指を立ててグっと笑うリン。一通り攻撃が止んだ隙を見計らって今度は新たに罠を張る。



リリィ「敵艦が一斉に近づいてくる!」


 警報と共に航法士席でリリィが叫んだ。敵の攻撃を避けているのに集中して、弁天丸は包囲網を組まれてしまっていた。



真希「茉莉香たち呼んでくる!」


 真希が船長席まで走ろうとした時、ちょうどブリッジのドアから作戦会議を終えた茉莉香達が戻ってきた。


茉莉香「みんな!お待たせー!」





 敵艦が迫ってきていつもよりみんなの士気が下がっている。ここぞという時に先陣を切るのは船長。誰よりも明るくまっすぐに、船長席からブリッジに向けて指示を下す。


茉莉香「行き先はトーテムステット銀河!目指すはジェニー先輩の婚約者が乗るグロリアス・クールフ号!とにかくここから逃げましょう!!」


「「「「「「「「「了解!!!!!」」」」」」」」」


 茉莉香の言葉でみんなの顔にいつもの笑顔が戻る。緊張感を保ちつつも作業に付いたみんなの調子は先ほどとは比べるまでもない。


茉莉香「先輩!“あれ”やってみようと思うんですが・・・。」

リン「もうやってるさ!」


 茉莉香の提案を待っていたかのように、電子妨害と平行してリンが仕掛けていたプログラムは“READY”の文字を既に表示させていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 敵艦は全部で八つ。そのどれもが弁天丸に照準をつけていた。万が一、令嬢であるジェニーに怪我をさせてはいけないと云う事で、直接の砲撃を躊躇していた艦隊だったが、ロバート・ドリトルは意に介さずに弁天丸の機関部を狙った砲撃を指示した。


 敵船の厄介な電子妨害を喰らいつつも艦隊は包囲網を編成。弁天丸の逃げ道を塞いだ。


 機関部を狙って動けないところへ接近しての強制ドッキングで、ジェニー令嬢を奪還する。そのための砲撃がカウントダウンに入っていた時、あろうことか、突如弁天丸の信号が3つに分かれた。



 3つ分かれた弁天丸はそれぞれバラバラに進路を取って猛加速。そのうちの一隻はまっすぐ旗艦ジャバウォッキーを目指して突っ込んできた。



 しかし、ぶつかる数キロメートル先で時空湾曲反応を感知、超高速跳躍によって眼前の弁天丸は亜空間にシフトして行った。そしていつの間にか残り二隻の弁天丸も姿を消していた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ジェニー「すっごぉい!ねぇ、今のはどうやったの?」

茉莉香「“分身の術”・・・なんちゃってぇ〜。」

リン「以前にあたし達が練習航海中で幽霊船に遭遇した事があっただろ?」


 それは当時ヨット部顧問であったケインも合わせてのオデット二世の練習航海の時。中継ステーションからずっとオデット二世にちょっかいを出していた宇宙船を茉莉香達は発見。たう星系を周回する際に真夜中で敵の計画に乗ったフリをして逆に乗っ取り返そうとした事があった。あの時は、敵の座標データが消えたり現れたりしていた事から、幽霊船かもしれないという答えがあったが、実際は別の宇宙船の情報を乗せた小型機の反応だったのだ。


リン「あの時のネタを応用して弁天丸の質量データを作成したんだ。後はそいつとトランスポンダーのダミーを囮のミサイルに積み込んで・・・。」


 レーダーで宇宙船を識別する際には、もちろんレーダー反射によってその反応を見るわけである。その際にレーダー受信を吸収し、偽の質量データとトランスポンダーを代わりに小型の物体に発信させておけば敵の目にはそこにいるはずの無い宇宙船が映る事になる。


ジェニー「なるほどねぇ・・・ヤヨイさんもアイさんも凄いわ。まさかジャバウォッキーの花咲を掠めるなんて・・・。」


ヤヨイ「転換炉の出力が安定してたので、高い加速を維持できたんです。後はアイちゃんの操舵。」

アイ「い、いえ!そんな!」




 アイは顔を赤くして、操舵輪から右手を離して左右に振った。


真希「ヤヨイすごいねぇ!もうそこまでエンジンを扱えるようになったんだ〜」

リリィ「アイちゃんも操舵上手いよねぇ〜」

アイ「あ・・あ、ありがとうございます。」



茉莉香「いよぉしみんな!グロリアス・クールフ号まで頑張って逃げるわよ!!」


「「「「「「「「「「了解!!!!」」」」」」」」」


 いつものブリッジより何人も多い答えを聞きながら、茉莉香は暗号通信が受信された時の受信音に反応した。


リン「茉莉香、保険会社のショウさんから」

茉莉香「でまーす!」


 今回の航海中はずっと連絡を取り合っているのですっかりヨット部のみんなも見慣れてしまったアフロヘアーの怪人がモニターの向こうで簡単な敬礼の仕草をした。


ショウ『やぁ!様子はどうだい?派手にレーザーを撃たれてたみたいだが?なんか豊作は見つかったのか?』





茉莉香「とりあえず今から、ジュナイ・クールフさんの船に乗り込むところです。」


 茉莉香は先ほど船長室で決まった今後の方針をショウに伝えた。


ショウ『なるほど、なかなか良い案だが本丸は叔父さんだろ?ここに、ロバート・ドリトル氏に関する有力な情報がある!』

茉莉香「え!?・・・・これですか?」


 予想外のショウの言葉を聞き返して、ショウが指し示したデータファイルを開く。


ショウ『ヒュー&ドリトル社の帳簿だ。』

茉莉香「えぇ!?」

ジェニー「相変わらずセキュリティ甘いわねー。いつも言ってるのに」

茉莉香「・・・でもこんな情報誰から・・・。」


 茉莉香は当然の疑問を口にした。ショウさんがいくら積極的だからと言ってここまで準備が良いのはさすがにおかしい。そもそも保険会社は海賊と民間の間を取り持っているハズなのに、今回に限らず今までの情報は余りにもこちらの都合に良かったのも今思えば不思議な事であった。

 そんな茉莉香の言葉に、どこか温かい親しみを込めて、穏やかに彼は言った。


ショウ『聞かぬが華。想像に任せる。』


 その言葉は答えを導き出すのに十分なヒントだった。というのはどこかで茉莉香も薄々感じていた事でもあったからだ。


チアキ「ずいぶん甘やかされてるわね。船長さん」




 皮肉たっぷりにチアキが隣で言う。言葉にしなくてもお互いに思っている事は一緒。無意識に表情が緩むのが自分でも解った。一瞬、いつもの弁天丸ブリッジの光景が頭を過ぎる。


ショウ『あぁそしてぇ!有効なデータがもうひとつ!』


 はぐらかすかのようにテンションを戻したショウが、怪しげにサングラスを光らせて勿体ぶって言った。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 再び超高速機関の出力を飛ばして通常空間に復帰する弁天丸。ジャバウォッキーの眼前で急遽飛び込んっだ荒っぽい跳躍の割には、目的地にはほぼズレなく到着した。


 派手なカラーリングで彩られた中型船グロリアス・クールフ号に接近許可も無しに強制ドッキングした弁天丸は、巫女衣装で加勢したチアキを含めたコスプレ海賊の格好で船内に突入した。


茉莉香『部長、無線は?』


リン「いつでもおっけー!うまくやれよ。」


茉莉香「はぁい!」


 弁天丸に残ったのはリンとセレニティ姉妹。突入部隊はリリィにカメラを持たせて、それを無線でリリィがキャッチしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 狭い通路を白鳳海賊団は走り抜ける。途中途中で通路からスーツ姿の男が驚く声が聞こえる。


茉莉香「誘いに乗ってくれるといいけど。」

ジェニー「有力なカードにはなるハズよ。少なくとも、交渉のテーブルに付かせる事はできる。」
 
茉莉香「えぇ。リリィ!ばっちり撮ってよ!」


 茉莉香は振り返ってカメラ片手に茉莉香を映している看護師姿のリリィを見た。


リリィ「了解(アイ・アイ・サー)!」



 その頃、たう星系を中心とする星系宙域に、「噂の女子高生船長・加藤茉莉香・謎のクルーザーへ潜入!!」という特番が通常番組を乗っ取って銀河公共チャンネルで大々的に放送されていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


〜病院船 ベン・ケーシー〜




クーリエ「これ、リアルタイム?」

ミーサ「絶賛生中継中ね。」

百眼「女子高生が電波ジャックかよ・・・。」




・・・・・・・・・


マミ「茉莉香!?」


それは海明星高級モダン喫茶ランプ館のマミのロッカーのテレビでも。



梨理香「・・・・・。」


 加藤邸のリビングのテレビモニターでもその様子が伺えた。


・・・・・・・・・



茉莉香「あれがパーティ会場ね!」

ジェニー「妙に静かね・・・。本当にここ?」

茉莉香「行けば判ります!」


 依然花嫁衣装のまま翔るジェニーだったが、もう裾を掴むのも面倒なのか、ボロボロに破けてしまっている。

 茉莉香達は通路の奥の開けた空間に飛び出した。




『来たるべき時は来た!!』


「―――!?」


 大音量に拡声された声が耳元に響いた。思わず両耳を手で塞ぐ。


茉莉香「げ・・・・。」


『今正に、大政を滅ぼし、立ち上がる時が来たのだ!!』

 茉莉香が見た光景は、一同に軍服に似た制服を着た集団の会合だった。壇上に当たったスポットライトの声の主に向かって綺麗に整列している集団は軍隊そのものに見えなくもないが、正面に掲げている横断幕に


 “第七十九会政府転覆総会 かく(はぁと)めい 〜ジュナイさんといっしょ〜”


 というびみょーなタイトルの残念な旗が掲げられていた。


ジュナイ『我々は、正義と云う名の元に、革命を実行する!かく()めいばんざーい!』



「かく()めいばんざーい!」×たくさん


 整列している群衆が一斉に合わせて両手を上げて叫ぶ。衆目の先のスポットライトに当たっていたのは、ジェニーが見せた“あの”びみょーな男その人であった。


「かくめい、ばんざ・・・・・」


 男が言い切るや否や、茉莉香と同時に突入したハズのチアキは足早にレーザーガンを引っさげてジュナイの真後ろから天井目掛けて派手に砲撃をぶちかました。




 わざと狙ったのか、天井から吊るされていたシャンデリアが落下し、派手な音を立てて床に突き刺さる。突然の暴動に怯えた群衆はあっという間に広間から散ってしまった。


 そして、ジュナイの後ろでレーザー構えた物騒な巫女は、今まで誰も聞いたことが無い声色で別人格のように怒鳴り散らした。





チアキ「かくめいだかなんだか知らないけど、目先の海賊船に気がつかない!揃いも揃って大バカモノがぁ!!全員並べおらああああああ!!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 そんな広間の惨状を弁天丸でモニターするリンとアイとセレニティ姉妹の4人。


グリュンヒルデ「チアキさん、色々と溜まっていらしたのですね・・・・。」

リン「前回海賊やらなかったからなぁ・・・。」

グリューエル「わたくしも参加したかったですわ!」



 モニターの向こうでは聞きなれた声が、聞きなれない荒ぶった声で「おらぁ!」と怒鳴り散らす様子がひたすら流れていた。心無しかアイちゃんは怯えている。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 逃げ遅れた連中はチアキの威圧であっさり降伏。その場で拘束され、カメラのテロップも“速報!!反政府組織メンバーの拘束に成功!!”に変わっていた。


ジュナイ「ちっちちちちち違う!!僕らは趣味でやってるだけだ!!かく()めいとかクーデターとかどうでもいいんだよ!だから、命だけは助けて・・・」

チアキ「五月蝿い!!」


 ガチャリとレーザーの銃口を鼻先まで寄せる海賊巫女。眼鏡が反射してギラギラしているのがすごく怖い。それに怯えるジュナイの姿を見て、茉莉香は無意識に口を開いていた。


茉莉香「確かにびみょー・・・。」


ジェニー「はぁーい!こちらジェニー・ドリトルでーす!」


 そしてカメラには、惨めに拘束されたジュナイの前にマイクを持ってリポーター気分のジェニーが現れた。


ジェニー『結婚前に婚約者に会おうと思ったら、こぉんな事になっちゃいましたぁー』


 ジェニーが横に避けてジュナイの姿にカメラがズームする。それに合わせてまたテロップが変わり、今度は“衝撃!!反政府組織の首領はあの大物政治家の長男!!”になっていた。それに気づかずにジュナイ自身は泣きじゃくって「おとーーーさーーーん」とカメラに訴えていた。



ジェニー「政治家の息子が“かくめいバンザイ\(^o^)/”だなんて、けっこうなスキャンダルですよねー・・・。以上、ジェニー・ドリトルでしたぁー!」



 ここでカメラを一旦切ろうと思ったその瞬間。大広間の正面扉が派手な機械音を出して開いた。照明がついていない暗い広間には逆光になる形で、扉の向こうの影が大きく映る。


ロバート「茶番は終わりだ。」


 ゆっくりと。弁天丸を追跡していた私設艦隊の旗艦ジャバウォッキーの艦長にして、ヒュー&ドリトル社取締役のロバート・ドリトル氏がSPを従えてやってきた。



ロバート「逆らっても無駄だ・・・。来い。」

ジェニー「嫌です。」


 ロバート氏の問いに即答するジェニー。既に腹は括ってある。


ロバート「お前が騒ぎを起こしたところで、ヒュー&ドリトルは何も変わらん・・・。」


 権力者特有の威圧感に呑まれないように、ジェニーとロバートの間に茉莉香が割って入る。茉莉香に合わせてリリィや真希達もジェニーを囲むように取り巻く。本物のレーザーガンを持っているのは茉莉香とチアキだけで、後はパフォーマンス用の見せかけ物だが、向こうはそこまで海賊を知らない。茉莉香の動きにSPが反応して銃を構えるが、ロバート氏は手でSPの動きを遮った。それを見てSPも銃を懐に止める。



ロバート「海賊はショーの営業でもしていろ。」





茉莉香「これも仕事の一環なんですよねぇ・・・。ジェニー先輩を宇宙大学にお送りする」

ロバート「――――。」


 若干ロバート氏の動きに動揺が混じる。恐らく初めて聞いた話なのだろう。


ロバート「小細工した所で状況は変わらん・・・。」


 沈黙が船内を埋める中、茉莉香は持ち込んだ端末を開いて、ショウから渡された帳簿のデータを引き出した。


ロバート「―――ん?」

茉莉香「この中に、ヒュー&ドリトル社のデータが入ってます。これによると、定期的に使途不明金がありますね?」

ロバート「それがどうした?会社の内情をとやかく言われる筋合いは無い。」


 話せばそこで終わり。向こうにはいくつも保険を持っているハズ。だから外側を軽く擦る程度ではすぐに跳ね返されてしまう。だからこそ、ショウが持ってきたもうひとつのデータをここで引き出す。


茉莉香「サイレント・ウィスパー。」

ロバート「―――――!」


チアキ「シャウト・ブルー。」

真希「ヨルムンガンド

アスタ「フェイザー・アロー」



 茉莉香達は、軍で開発されている最新式の偵察機や軍用機・武器の名前を並べる。



ジェニー「そこのボンボンの父親運輸省長官セオドワ・クールフに横流ししていた軍用機や武器名前ですわね叔父さま・・・。」


 ここで聞くには予想外の言葉を聞いてロバート氏の表情に焦りの色が見える。


ジェニー「そこからさらに、星系軍と対立する勢力に武器や戦闘機を横流ししていた。」

茉莉香「海賊が免許制であるのと同じように、武器の所有についても厳しい制限がある。言うまでも無い事ですけど。特定の政治家が軍備を扱う事は、厳禁とされています。でも、一企業が自社の警備を厚くする。という理由なら、言い訳も立ちますよね?」


ジェニー「セオドワ・クールフに軍備を横流しして、その見返りにキックバックとして現金を貰う。これって立派な犯罪ですわよ?叔父さま。」


ロバート「・・・幼稚な憶測に過ぎん。」


 依然として姿勢を崩さずにそこに立つロバート氏。しかし。


『艦対艦ミサイルヨルムンガンド、ちょっと今回はひとつ多いかもしれま・・・・』


茉莉香「残ってるんですよねぇ・・・。通信記録、武器横流しの密談・・・。」


 茉莉香は端末から取り出した音声データをそのままロバート氏の前で直接流す。恐らくクーリエが見つけたマル秘データの中身のひとつだろう。


 そこで初めてロバート氏の顔が歪んだ。一介の女子高生海賊にしてやられた事、ジェニーの手前で恥をかかされた事、そしてTVで全宇宙放送された事・・・全てが彼の苛立ちとして顔に現れたのだ。





茉莉香「ばっちりですよお?」




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 そうして。



「「「「「「「「「「「「かんぱーーーーーい!!!!」」」」」」」」」」」」」


 残ったランプ館のスイーツを並べて、大々的に打ち上げパーティが弁天丸の食堂で催された。


エイプリル「いやー、今回はスカっとしたねぇ」

ウルスラ「私達、やっぱり海賊向いてるかも」

ナタリア「アドリブ仕事もばっちりでしたし。」


チアキ「まったくみんなすぐ調子に乗るんだから・・・」


 思い思いのお菓子を口に含んだまま、今までの航海を振り返ってはしゃぐ面々を見つつ、チアキはぶつくさと愚痴を零す。


アスタ「でもさぁ?そういうチアキが一番凄かったじゃない?」

チアキ「そんな事――――」

ウルスラ「さっすがバルバルーサの娘!」

チアキ「うるっさい!」


 飲んでいたジュースのコップをだん!とテーブルに叩きつけてチアキが抗議した。


グリューエル「あの・・・チアキ様は今後、どうなさるんですか?」

グリュンヒルデ「白鳳に残るんですよね?」


 唐突に隣同士に座っていたグリューエルとグリュンヒルデがチアキに問いかける。


チアキ「いえ、ウチに戻るわよ。そろそろ親父が帰ってこいってうるさいから。」

真希「そっか・・・残念・・・。」

アイ「もっと宇宙船(ふね)の事、教えて欲しかったです。」


 名残惜しそうに真希やアイが言う。


リリィ「じゃあさ!このままチアキちゃんのお別れ会もやっちゃおっか!」

「「「「「「「「「さんせーーーー!!!!」」」」」」」


 お祭り騒ぎに再び火がついて、尚も騒がしい食堂の中。そんな騒々しさをどこか寂しげに思いながら、チアキは一人微笑んだ。





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ジェニー「色々とありがとう、船長。」

茉莉香「本当ですよぉー。こういうムチャぶりは事前に教えてくれなきゃー」

ジェニー「これで念願の宇宙大学に行ける。卒業したらたぶんまた叔父と戦わなきゃならないでしょうけど。」


 打ち上げの前に依頼の事で最後の打ち合わせをする茉莉香とジェニー。リンも窓際にもたれ掛かって二人の会話を聞いている。


リン「贈収賄と武器の横流しが逮捕容疑だが、裏に手を回して出てくるだろうからなぁ・・・。」

茉莉香「そっかぁ・・・。」


 若干落ち込む茉莉香。世間がそんなに都合良く進まないのはこれでも解っているつもりだったが、やっぱりそう簡単には行かない。


ジェニー「何だかんだでウチは親族会社だし、叔父はそのまま会社に居座るでしょうね・・・。」

茉莉香「なるほど・・・。」

ジェニー「でも、色々茉莉香さんに教わったから、戦って行けるわ。例え一人でもね。」


 決意を込めたその眼差しに自分と似た雰囲気を感じながら、茉莉香も頷いた。


リン「大丈夫だ、この先もずっとあたしが一緒にいる!ジェニーを一人で戦わせないよ!」

ジェニー「リン・・・。」


 そして、茉莉香そっちのけで二人の世界に入ってしまったリンとジェニー。


リン「ジェニー!」



 間髪いれずに赤くなった顔をお互いに寄せ合って、この船に初めて再会した時と同じように・・・。茉莉香には刺激がまだ強いみたいで・・・。


茉莉香「ごちそうさまで・・・す。」






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百眼「お、まぁた出てるぞ。“お手柄弁天丸クルー ヒュー&ドリトルに贈収賄疑惑”だと。」


 色々と疲れを残した表情で、百眼が海賊新聞を端末から引っ張り出す。一面に載っていたのは先日と同じようにコスプレ海賊で世間を騒がせた弁天丸に関するニュースだった。


ケイン「今回は派手にやったからなぁ・・・。」

百眼「まさか渡した情報直球で使うなんてなぁ・・・。」

三代目「肝が座った女ってのは怖ぇよ。」

ケイン「まったくだ・・・。」

クーリエ「そうよー・・・。」


 ベッドの上で端末をいじりながら話半分に聞いていたクーリエ。その横で窓の外を眺めていたルカが振り返りながら妙に透き通る声で言った。


ルカ「女は敵に回さない方がいい・・・・。」



ケイン「い、色々あったが、一先ずはお疲れさんだな。船長達も無事、オデット二世に乗り換えたみたいだし。」


ケインが言い終わると同時に、部屋の扉が開き、病院船としては余りにも違和感の無い白衣姿でミーサが入ってきた。


ミーサ「みんな、検査の結果出たわよ。全員陰性。」

百眼「お。」

ミーサ「これで来週には隔離解除」

三代目「体なまってんだー!やるぞー!!」


 三代目が右手をぐるっと回しながら勇ましく言った。




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マミ「へぇ。じゃあその戦闘機、サイレント・・・なんとかだっけ?持って返ってこれたんだ。」

茉莉香「うん。海賊が戦闘機を持ってる分には問題無いんだって。」


 海賊は法律の上では軍隊のひとつとして扱われる。当然、軍隊向けに開発された最新型高性能偵察機サイレント・ウィスパーも、軍隊として海賊が持つには何の問題も無い。

 昼休み。帰ってからのんびり学園生活に戻った茉莉香は、事の一件をマミに話していた。



茉莉香「名義は私だけど、ヨット部のみんなで使えるように中継ステーションに置いてきた。」

マミ「へぇ〜。」

茉莉香「マミ。ありがとね。」

マミ「何が?」

茉莉香「みんなの衣装。グリューエルに渡してくれたんでしょ?」

マミ「あぁ、あれね」


 茉莉香の専属スタイリストを自称するマミは、今回の海賊衣装を自作で作り上げるという形で、実は白鳳海賊団に関わっていた。


マミ「まっ、地味にお手伝いできればなーっと。」

茉莉香「ありがとう。」

マミ「どういたしましてー。」





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茉莉香「じゃあ来週には病院出られるんだ。」


 その夜。自宅のバルコニーから星空を眺めながら、茉莉香は病院船のミーサと通信していた。


ミーサ『えぇ。色々迷惑かけちゃってごめんなさいね。』

茉莉香「ううん。こっちものんびりできたし、全然大丈夫。」


 一応、乗組員が隔離された当初は、隔離が解けて全員退院するまで、茉莉香にはのんびり学生生活を送って貰う。という話であった。もちろん、今回のコスプレ海賊及びお手柄騒動は、本当ならミーサ達は知る由もない。知る由もないのだが、ショウさんの話や持ってくる情報は、今考えれば出先は簡単に解る。


ミーサ『なら、良かった。しっかり高校生活を満喫しなさい。』


茉莉香「わかってるって・・・。・・・、ねぇ、ミーサ。」


ミーサ『なぁに?』


茉莉香「ありがとう。」


ミーサ『あら。お礼を言われるような事、したかしら?』


 もったいぶった様子でミーサは言った。茉莉香は、この話は別に改まって言う必要な無い事だと思った。言葉にしなくても、みんな分かっている。そう信じていた事だから。



茉莉香「うん、ちょっと言いたかっただけ。じゃあ・・・。」


ミーサ『またね。』


茉莉香「うん。」


 満点に広がる星空を見上げる。宇宙で見下ろして、地上で見上げて。そうやって大地と宇宙を行き来して、これからも海賊というとても大切な流れ星になる。



梨理香「ポトフできたよー。」

茉莉香「うわー美味しそー!」

梨理香「今日は茉莉香の好きな“ちくわぶ”だよ」



とても大きく、輝いて・・・・。



茉莉香「ちくわぶ★ラブ!」






 次回は女子高生達の洗礼を受けてちらかったオデット二世と弁天丸の大掃除?


次回「四人の絆」



 お楽しみに!












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