【FGO】幕間の物語 - 地底都市 出発前夜 - 【捏造】
「アガルタ」レイシフト、その前日。
「地底ねぇ...」
パラ、と本棚からとある分厚い本を手に取り、ページをめくる。
「確かに、私の時代にもあったよ。地球の内側は空洞で、別の高度な文明があるとか...」
アフタヌーンティーを口に注いで、ページに目を通しながら、新宿のアーチャーは言った。
「やはり、今近代の英霊たちに色々聞いてまわっててね、一通り聞きまわったところで、最近来たあなたもその時代の人間だったなと、ふと思ってこうして聞いてみたわけさ」
「ふむ。」
パタンと本閉じて棚に戻した。確認したい内容はそこには無かったらしい。
「私は数学者だから、地質学とかオカルトとかそういうのは専門外でね。そもそも単純な物理学的視点で見れば、そんな話は」
「”到底あり得ない”だろう?あり得ないからこっちは困ってるんだ・・・」
そんな事はわかっている、とばかりにダ・ヴィンチはため息混じりに言った。
「ふむ。私の計算では、「それ」がカルデアから観測された。そういう事だろう?」
もう一口、カップを口に注いで、チェアーに腰掛ける。そして、ダ・ヴィンチが来る前に読んでいた読書を再開した。
「話が早いね。そう、どうやら次の亜種特異点は地底のようなんだ。それも数々の逸話、伝説で語り継がれるような大空間の中で、魔神柱の反応が出た」
「魔神柱か・・・」
「何か、心当たりはあるかい?」
読んでいた本から視線を外す。彼は彼女の顔を見ずに言った。
「ハハ、ついでに聞いてみた、みたいな口ぶりだが、本音は"そっち"だろう?」
「あらら、さすがにバレちゃったか・・・。そうさ、第一の亜種特異点の首謀者であり、高名な数学者であるモ・・・おっと、真名は迂闊に言わない約束だったね。――――教授、あなたなら何か知っているんじゃないかと思ってね。」
「悪いが――。新宿の記憶はあるが、アレと今の私は別の人間だよ。それに、私が知っていることは一通り君たちには話したし、もし知っていたとしてもこのタイミングでは話せないなぁ」
「それは知っている。と捉えてしまって構わないのかい?」
「さぁてね。何しろ私は悪の天才数学者だよ。安易に相手を信頼し、情報を渡すのは、無能者のすることだと思ってる」
「おや、ウチのマスターくんに安易に信頼されてしまったからこそ、今あなたはここにいるのでは?」
「―――まぁ彼は、そういう意味では最高に無能者だな。ただ――――――」
「?」
アーチャーは読んでいた本をパタンと閉じた。長いこと話していたが、その時初めて彼女に顔を向けた。
「今回はソウダネ・・・。ある意味では新宿より辛く、残酷な結末が迎えているかもしれないネ。まぁ、その程度で挫けるようなマスターではないと思うが」
「信頼されてるねぇ、彼は。それもあなたの計算かい?」
「まぁね――。私が言えるのはここまでだ。アイツと同じ事を言うつもりはないが、根拠の少ない仮説だけで物事を語るのは嫌いでネ。」
「そりゃどうも。貴重な情報だ、参考にするよ」
「あぁ、そうだ――――――」
部屋を去ろうとしたダ・ヴィンチを、アーチャーは呼び止めた。
「彼に伝えておいてくれ。新宿では"社会のルール"が壊れていたが、恐らく今度は"世界のルール"が壊れている。とね」
「世界のルール?」
「隔絶された新宿とは違う。世界そのものが壊れているケースだ。法律が、秩序が壊れた国にいると、人間は自分だけが間違っていて他が全て正しいと思う錯覚に陥る。だがそれはマヤカシだ。だから、精一杯抵抗しないと飲み込まれる。」
「ふぅん。世界のルールね・・・。」
「それと――――――」
アーチャーは立ち上がって読んでいた本を棚に戻した。
「恐らく女難の相が出ている。だから、女絡みの揉め事はできるだけ避けるべきカナ」
「それも、計算かい?」
「いんやぁ、年寄りの勘ダヨ」
『えー、えー、こほん。カルデアマスターの藤丸立香くん、カルデアマスターの藤丸立香くん、居たらちゃちゃーっと管制室に来られたし。以上。』