【FGO】「魔法少女紀行 〜プリズマ☆コーズ〜」 letztes 星原と水晶の国【V】
マスターが目覚めた場所は、見知らぬ景色。
そこは魔法少女が治める魔法の国だった・・・!?
突然飛び込んできたうさん臭い魔法のステッキに導かれ出会った少女。
右も左もわからぬ不思議な世界で、
友人を探しているという少女を助けることに―――
・前回まで
異世界に迷い込んだマシュとそのマスター。同じく異世界からやってきた自称魔法少女イリヤスフィールとそのステッキマジカルルビーと共に、攫われた友人を助けることに。
イリヤの妹、クロエの体を乗っ取り、美遊を使って平行世界への侵略を目論む「最初の魔法少女(ファースト・レディ)」。
クロエを、美遊を取り戻すために、イリヤは最後の戦いを決意した。
クロの魔術を利用して無尽蔵に剣を投影して放射するレディ。その様は英雄エミヤというよりは、英雄王ギルガメッシュに近い。
あちらの方が門の口径も大きかったし、何よりレディ自身がクロの体を使いこなし切れていない。
クロの体は実践的な戦いを想定した戦闘では有効だが、その体は魔法少女ではなく魔術師に近い。したがって、魔法少女であるレディの戦い方とクロの体は真っ向から反発していることになる。
その違いに真っ先に気づいたイリヤはクロの得意技である転移と反射を逆手に利用してレディの裏をかいた。
隙を突いて打ち込んだ極大の魔力砲で、レディの体力は底をついた。
どんなに消耗していてもルビーのテンションは変わらない。
ルビーの言葉はクロの人格が戻ってきたことを意味している。
しかし、レディの人格に言いたいことがあるイリヤはクロが表に出るのを抑えるように言った。
そして美遊の拘束が解かれる。
力が入らないのか、ふわりと宙を浮いた彼女をそのまま抱きかかえる。
彼女の戸惑いがついつい新鮮で、こう、なんとも言えない・・・
・・・はっ!
(そっと美遊を下ろす)
レディは弱っていた。彼女の破滅的な言い方がより一層それを感じさせた。
美遊はレディの本質を見抜いていた。彼女に思うことがあるのは美遊も同じだったのだ。
レディはじっと口を閉じた。それでも、何を言われても自分は諦めない。そんな鉄の意思が彼女のオーラから感じ取れる。
私も、魔女に堕ちるかもしれない。
レディの問いにイリヤは頷く。恐れはあっても後悔はしない。いつか、そう決めた日のことを思い出した。
やはり。
彼女はイリヤと同じ。
友達か、世界か。
それは、かつてエインズワース家との戦いでイリヤに迫られた選択肢。
イリヤは悩んだ。苦しんだ。
だけど、決めた。
すぐそばには、世界を敵に回してでも大切な人を救うと戦った正義の味方がいた。
まっすぐな少年の背中を見て、イリヤは世界も友達も全部救うという一番辛い選択をした。
だけど、後悔はしていない。
そこがレディと決定的に違うのだ。
誰が間違っていると否定できようか。
正解なんてない。
あるのは、どちらを愛していたか。
どちらを失いたくないかの話だ。
それはどちらもよく知っている。
やれやれだわ。
そう言って、所々礼装が擦り切れた姿で彼女はレディに向かって言った。