【毎日更新】line walker ゲームプレイ日記

毎日欠かさず更新して約11年目・・・・・。FGOとホロライブ・ホロスターズ中心のブログです。

モーレツ宇宙海賊第十三話「茉莉香、招待する」



 宇宙は広い。広大な銀河をぽつんと飛ぶ宇宙船。



 銀河帝国がその勢力を増大させ、周辺の星々との併合を次々と重ねていた頃、辺境宇宙においても、独自の政権を有する星々が存在した。
鯨座級たう星系海明星は開拓惑星だった。開拓地の多分に漏れず、人口が増え世代を重ね、宗主である星系連合との対立が深まり、ついには独立戦争が勃発した。
 海明星の独立政府は、脆弱な戦力を打開するために、宇宙海賊達にあるものを発行した。


「私掠船免状」である。


 海賊達は「私掠船免状」を盾に星系連合の宇宙船を襲い、独立戦争の勝利に大きく貢献した。これは、終戦後百年余り後の物語である。





 営業中に密航してきたプリンセス、グリューエル・セレニティの依頼で彷徨える黄金の幽霊船の捜索に出た茉莉香率いる海賊船弁天丸。宇宙の難所である宇宙嵐や時空震を超えて遭遇した黄金に輝く幽霊船は、セレニティ王国最初の移民船であった。船内には、王族が王族であるが由縁の人工子宮「薔薇の泉」が最深部に存在し、王家にしか知り得ない機密情報として扱われていた。情勢不安のセレニティ国民に王家としての証明を必要とするグリューエルの妹グリュンヒルデが現れ、弁天丸の行く手を艦隊を率いて妨げる。二人の姉妹は対立し合うが、事態を先読みしていた茉莉香によって双方の間を取り、黄金の幽霊船をセレニティ王国に持ち帰り、王族の証明と国民への訴えとしてその姿を再び祖国へ送り届けた。





茉莉香「色々あったけど、もうすぐうちかぁ・・・。長かったような、短かったような・・・。」


 茉莉香にとって初めての長期航行だった今回の旅もようやく終わる。安堵したように彼女は感慨に耽る。


ミーサ「残りの春休み、どうするの?」

茉莉香「そうだなぁ・・・マミと買い物して、バイトして・・・」


 あくまで彼女はふつうの女子高生。貴重な夏休みの計画を今からぼーっと頭に浮かべていると。


クーリエ「セレニティ王宮より暗号通信!解析後、メッセージ回します」


 突如聞きなれない警報音がブリッジに鳴り響く。


茉莉香「ふぇ?セレニティから?」


 カタカタと電子パネルを操作して、独自の暗号コードで送られてきた文章を翻訳してクーリエは茉莉香の船長用ディスプレイにメールの内容を表示した。



『弁天丸船長、加藤茉莉香様へ
 今は母星に向けて帰路の途中かと思います。
 しかし、無理を承知でお願いします。
 今、セレニティ王宮は未曾有の危機に襲われています。
 助けて下さい。
 グリューエル・セレニティ』


百眼「船長!?」


 茉莉香の朗読する言葉はブリッジ全員が聞いていた。ただ事ではない状況の内容に、茉莉香も慌てて呼びかけに応える。


茉莉香「弁天丸!緊急反転!!」

ケイン「跳びますか?」

茉莉香「超光速跳躍!目的地、セレニティ星系“青の星”!!」

ルカ「航路設定、目的地セレニティ星系“青の星”」


 航法士のルカが茉莉香の指示を復唱しながら進路情報を設定する。


茉莉香「グリューエル・・・待ってて!!」









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 そして....





マミ「ほら、こーすればかわいーじゃない?」

茉莉香「うわー、どこで見つけたの。このリボン?」

マミ「ふっふっふー、アトリエマミのデビュー作ですわよ、茉莉香さん」

茉莉香「アトリエマミ・・・マミってマミ?すごーい手作り?」

マミ「“あのニュース”見ててさぁ、なんかワンポイント欲しいと思ったのよねー」






 茉莉香は自分の部屋でマミと一緒に海賊服をアレンジしていた。あれから、グリューエルの緊急のメッセージに応えて、セレニティ王宮に戻った弁天丸は・・・。


茉莉香「あぁ・・・“アレ”ねぇ・・・。慌てて駆けつけたのに、グリューエルったらさぁ・・・」


 加藤宅の一回では茉莉香の母、梨理香が惑星ネットニュースに映る自分の娘の姿を見ていた。
 ニュースを読むアナウンサーは淡々とそれを読み上げた。


『セレニティ王宮における今回の動きに大いに貢献した、宇宙海賊弁天丸船長とその乗組員(クルー)達、取り分け船長を務める加藤茉莉香さんは、たう星系海明星の・・・』





梨理香「海賊がお姫様から勲章を貰うなんてねぇ・・・。ロマンチックを通り越してるよ。」


 ディスプレイに映る弁天丸のブリッジクルーと、その先頭に立つ見慣れた海賊服を着た茉莉香を微笑ましく見つめる梨理香。というか、王宮の勲章授与にもドテラ着てたのか、クーリエ。






マミ「うおー、かっわいー。それそれ、やっぱりそーじゃないとね!」

茉莉香「何がそーなんだか、何がやっぱりなんだか解らないけど・・・いい感じかも。」

マミ「でも凄いね、茉莉香今じゃ有名人じゃない?」

茉莉香「宇宙海賊なんか、ここいら知ってる人ほとんどいなかったからねぇ・・・。宣伝にはなったのかなぁ・・・」


 スカーフの代わりにオレンジのリボンを胸元に付け、少し誇らしげに茉莉香は言った。


マミ「何言ってんの、ご当地スターだよ。明日の始業式、整理券作っとかないと」

茉莉香「ふぇ?何それ?」

マミ「知らないのー?今年の新入生さー、茉莉香目当てで入ってきた子が多いって、う・わ・さ!」

茉莉香「えー!何それ!」

マミ「いっその事、ヨット部の新歓はこの服着てやったら?みんな殺到するよ?」




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 その夜。空港で管制官の仕事をしている母がやけに最近ゆっくりしているのに気づいた茉莉香は、梨理香が転職するつもりだと言う事を聞かされる。

 今までは家庭を支えるために仕事をしていたけれど、茉莉香も一人前になったからと自分のやりたい事を探すとか。

 もちろん、自分が母親の負担になってしまっていたのはどこか心の奥で感じている茉莉香は、少しでもやりたい事をして欲しいと、そんな梨理香を応援する。



梨理香「本当にお前は立派になったねぇ・・・。それだけに余計にファイトが沸くよ。」

茉莉香「ファイト?」

梨理香「あ、いや。何でもない。明日何時に起こせばいい?」

茉莉香「だーじょうぶ、明日から2年生だしね。梨理香さんの手間を取らせないように、キチンと起きますから〜」

梨理香「ふ・・・そうかい」

茉莉香「うん!」





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「うわぁ〜!!寝坊!ねぼー!新学期早々・・・何やってんだ・・・!」




 もちろん、そんな事を前夜に言ってしまえば、寝坊するのが世の常、海賊の常、女子高生の常。

 茉莉香の忠告を素直に受けた梨理香は、注文通りに翌朝、茉莉香に声をかけず、結果寝坊した茉莉香は全速力で自転車を白凰女学院へ飛ばしていた。


「えーー!!!」


  街から離れた茉莉香の家は、自転車で飛ばしてもけっこうかかる。自分の不甲斐なさを自分で叱りつけていると、自転車に並走するように黒い高級車が横を走る。

 誰が言うでもなくウィンドウガラスが開いて中から顔を見せたのは、昨日お別れしたばかりの顔だった。



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「ちょっとごめ〜ん!どいて〜!」


 学校に着くや否やマミが言っていた噂は現実のものとなった。幸い急いでいる様子を察してか、声をかけるだけで言い寄っては来なかったが、茉莉香は教室へ向かう道中「まりかさまー!」とか「素敵・・・!」とか周囲の目線が全部自分に向いている中を走らなければならなかった。



放課後。ヨット部。


「失礼しまーす。」

「ヨッ!茉莉香様!」



 女子校の噂話なんか、中途半端なウィルスより感染力が早い。セレニティ王宮勲章授与のニュースが流れてから、海賊船弁天丸船長である事が名実共にはっきりした今、どこへ行っても茉莉香は有名人扱いであった。


茉莉香「こっちはいいの。こっちは〜」


 ヨット部の面々に茶化されながら、茉莉香はようやく自分の居場所である部室に戻った。戻ったと云えば、セレニティ王宮に戻ったハズのグリューエルとグリュンヒルデが茉莉香を待っていたかのように挨拶してきた。


茉莉香「どうしたの?グリューエル」

グリューエル「どうしたと言われましても、私は白凰学院の中等部に通う身。そしてヨット部に在籍中。部員が放課後に部室にいるのは当たり前ではないでしょうか。」


 少し前まで、大きな学校に来た事自体が初めてであったグリューエルが、得意気に笑って返す。


茉莉香「いやー、だってあなたお別れしたじゃない。セレニティの“青の星”で」

グリューエル「言いませんでしたっけ?“またお会いしましょう”って」

リン「グリューエルの留学は延長されたそうだ。グリュンヒルデも留学する事になって、まぁそういう事らしい。」


 ジェニー部長が卒業したので、後継に副部長であったリンが部長として茉莉香に説明する。


茉莉香「はぁ・・・」

グリュンヒルデ「お姉様から、この学園の素晴らしさを聞くにつれ、羨ましくなりました。宜しくお願いいたします。」


 幽霊船で対峙した時のように威圧を混じった声ではなく、グリューエルより1オクターブ高い声で幼さを残しながら、膝を折ってグリュンヒルデも挨拶をする。


 相変わらずの手回しの早さに呆れながら、自分に似た頑固な部分がグリューエルにもある事を茉莉香は改めて痛感した。




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「どうぞ、茉莉香特製チョコレートパフェ。ちょっと不格好だけど味は一緒だよ、チアキちゃんにもチアキちゃんにも好評なの」


 海賊の船長という効果は新歓には余り役に立たないらしく、グリューエル達の事もあって新入生は遠巻きに見ているだけで、ヨット部でどうこうという事は無いとか。そんな愚痴をマミと一緒にランプ館でウェイトレスしながらぼやいていたら、グリューエルがやってきた。



 チョコレートパフェを奢ったついでに、帰路を同じく川沿いを歩く二人。




茉莉香「本当無茶だよね、グリューエルは。仮にもお姫様なんだからさ、フラフラ出歩くなんて、何かあったらどうするの?」

グリューエル「すみません。でもこうやって、きちんとお礼を言いたかったんです」

「お礼?お礼を言いたいのはこっちだよ。勲章まで貰っちゃって・・・。」

「勲章では、私の感謝の意を現す事なんかできません。二人きりでお話がしたかった。」

「でも危ないよ。誰が狙ってるか解らないじゃない。」

「それは茉莉香さんも同じではないでしょうか?」

「あー、まぁ、そうだけど・・・。」

「茉莉香さんのそばにいれば安心です。私はそう信じています」

「まぁ確かに、“加藤茉莉香に対する不可侵協定”ってのがあるんだけどね。」

「誰が決めたかわからないんだけど。」



 徐々に夕陽の赤が夜の紺色に染まる。そrねい連れて、何度も行き来をした星々の輝きが空一面を覆う。




「あの時、セレニティは紛争寸前でした。星系毎の独立を目論む者、王制存続、あるいは廃位。それらが入り乱れて、最終的には保守派と改革派に別れて・・・・。私達姉妹は自分の考えで行動したつもりでしたが、愚かにもそれぞれの派閥に担ぎ上げられていたのです。」


「そんな事ないよー。グリューエル、一人で弁天丸に乗り込んできたじゃない?」

「私たちを救ったのは貴女です、茉莉香さん。貴女が黄金の幽霊船をセレニティに持ち帰ろうと言ってくれたおかげで、セレニティは大きく変わろうとしています。」

「私はただ思いついただけ。ぶちぶち説明するより、現物そのまま見せた方が良いって思ったから・・・。」

「あなたが羨ましい・・・。」

「ん?」




 ぼそっと茉莉香に聞き取れないボリュームで呟くグリューエル。ポケットから何かを取り出して手の平に乗せて茉莉香に差し出す。外灯の明かりでそれが髑髏の指輪である事が解った。




グリューエル「以前、弁天丸のセキュリティを解除した管理者用のIDリングです。」

茉莉香「管理者ID?誰の?」


「茉莉香さんのお父様、加藤ゴンザエモン船長」

「えぇー!?船長のIDリング!・・・そっかーだからグリューエル、あの時密航できたのね・・・。」

「あの時はすみませんでした。」

「これを私に?でもお父さんグリューエルに渡したんでしょ?いいの?」

「今、弁天丸の船長は茉莉香さんです。だからお返しするんです・・・いえ。」


 静かな微笑みから真剣な眼差しが茉莉香に向けられる。


グリューエル「お渡ししたいんです。受け取ってください。」


それは友だちとしてのグリューエルではなく、プリンセスとしてのグリューエルの言葉だった。


「わかったわ。」


 そうしてグリューエルがSPの迎えの車に乗り込む間際、茉莉香は何も考えずに思った事を聞いた。


「あのさ、私のお父さん、どんな人だった?」


「・・・。素敵な方でした」









「あなたも素敵ですわ、茉莉香さん」


 自分とお仕えのキャサリンしかしない車内で、グリューエルはぼそっと誰に言うでもなく呟いた。


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梨理香「ずいぶん懐かしいねぇ・・・。」

茉莉香「うん。梨理香さん見た事あるんでしょ?」

梨理香「普段は金庫に締まっておくもんだけどねー。それさえあれば、最悪一人で弁天丸を動かせるよ。」

茉莉香「あっはは・・・。そんな事態は避けたいなぁ・・・。」


梨理香「セレニティ、統一議会ができるんだねぇ・・・。」


 あの一件依頼セレニティ王宮に関するニュースはニュースチャンネルでは常連と化した。それでも徐々に話題は過ぎつつある。グリューエルが云うように紛争一歩手前だった情勢も安定した事を彼女の口から聞いた茉莉香も、それをニュースで見ている梨理香も実感していた。





梨理香「各星系の自治権の拡大、王家の権力の縮小。ご先祖様の船との対面は、星系レベルの物分りも良くしちまうのかねぇ・・・。」

茉莉香「きっとグリューエルがやったんだ・・・。」

梨理香「ふーん。本当だったら凄いね。」

茉莉香「セレニティは動き出した。だからグリューエルはここに戻ってきたんだ・・・。」



 戻ってきた。ここにも自分と同じように居場所がある。髑髏の指輪を眺めながら茉莉香は言った。


「梨理香さん、家に呼んでいいかな・・・?グリューエル。」





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「ようこそ〜!ならず者揃いのヨット部に〜!」

「リン、怖がってるわよ。」

リン「まぁ、最初のうちはそのぐらいが丁度いい。そのうち本領発揮して貰うから。」

「本性・・・だったり?」



 賑やかな笑い声が部室内を埋める。ヨット部も無事新歓の成果もあって、新入生も新たに入部するという事でなんとか幸先の良いスタートを切れたようだ。


 わいわいがやがやする中、茉莉香は昨日思いついた事を実行すべく、グリューエルを呼び止めた。



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グリューエル「茉莉香さんのご自宅に?」

茉莉香「うん。グリューエルの宮殿に比べたら、吹っ飛びそうな家なんだけどさ。家で晩御飯なんてどうかなーなんて。どう?」

グリューエル「はい!喜んで!」

茉莉香「ああ、ドレスとかそういうのはいいから。普通の服でね。グリューエルも一緒にねー?」


 目を輝かせて明らかにはしゃいでいるグリューエルを見て、こっちも嬉しくなってくる茉莉香。その反対側の柱の影で不貞腐れたように外を見ながら聞いていたグリュンヒルデにも、茉莉香は声をかけた。




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 桜に切った人参、細長いちくわぶ、たまご、大根、はんぺん、つくね、ロールキャベツ、こんにゃく・・・と、加藤家でポトフと称するこの辺では独特なメニューをグリューエル達が来る前に下ごしらえしていた。


茉莉香「梨理香さん?昆布ってどういう風に切り込み入れればいいの?」

梨理香「出汁が出やすいようにだから、決まった切り方はないよ。ただ、細かく切り刻むと取る時面倒だから・・・」

「あ。」



 紙吹雪でも作るのか。5cmぐらいの正方形に昆布を切り刻んでしまい、紙吹雪の山が既に皿に盛られていた。


「佃煮かい?まぁ、いいやそいつを鍋に入れてくれ。火加減は弱火で。」


 たんたんと料理している時、インターホンが鳴った。ディスプレイに映った金色の髪を見て茉莉香は厳重な玄関のロックを解除した。





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一方、海明星近辺宇宙。


百眼「船長がお姫様をご招待?」

ミーサ「目下加藤親子の手作り料理で乾杯中ってところかしら?」

百眼「おいおい、大丈夫なのかよ」

ミーサ「セレニティのキャサリン小隊長、いるでしょ?」

百眼「あー、あの無口な美人さんか」

ミーサ「彼女を中心に軍の精鋭が警備に当たっているそうよ。それに、船長に関しての不可侵協定が、まだ生きているハズだから。」


 大きな一仕事を終え、王宮からさぞかし報酬を受けたであろう弁天丸は、とりあえず次の仕事の依頼までまた海明星近辺で活動していた。


クーリエ「ブラスター・リリカの作る料理って、どんなのかしら?おいしいのかなー」

ルカ「興味深い問題ね。」

ケイン「けっこうイケてたよな・・・。ミーサ?」


 初めて茉莉香と出会った時に、加藤宅で食べたポトフの味を思い出しながらケインはミーサに言った。だけど、ミーサは固まったまま昔を振り返るように目を閉じて言った。


ミーサ「昔ね・・・。この船に乗り込んでいた頃の梨理香の料理は・・・思い出す度に震えが来るほど・・・不味かったの。」





シュニッツァー「確かに。先代の乗組員(クルー)達は何度も何度も死にかけた。」

三代目「ぐぅ・・・」


ミーサ「でもこの間は美味しかった。別人かと思うくらいの味だった。ちゃんと料理の形してたし、とてもあの時の梨理香と思えない・・・。そうね、あれは別人だったのかも・・・。」


 思いつめた顔から感慨に耽るように上を見上げてミーサは続ける。


「海賊ブラスター・リリカではなくて、一人の母親加藤梨理香。きっと娘のために随分尽くして来たのね・・・。でも・・・そろそろ。」


 不穏な笑みを漏らすミーサ。梨理香の転職って・・・まさか。



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「「「いただきまーす」」」「・・・ます。」

茉莉香「どう?」

グリューエル「不思議な食感です。でも、美味しい・・・。」

茉莉香「あぁ!!グリュンヒルデ、ダメー!!!!」


 茉莉香の目には、皿に少し添えるだけの練辛しをスプーン一杯に掬って口に運ぶグリュンヒルデを見て思わず叫んだ。が、間に合わず・・・。



グリュンヒルデ「うっ――――!」





「あああぁぁ!!り、梨理香さん!!水―――――――!!」



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 そうしてドタバタしながら夜はより深みを増していった。



 食事が終わって、景気づけに庭で花火をしてあげた。大空で大きく打ち上がる花火とは違い、初めて見る手持ちの花火、筒から吹き上がる色々な色の炎を茉莉香はグリュンヒルデに見せていた。




 それを微笑まく見ながら、皿を洗って後片付けをする梨理香とグリューエル。


梨理香「悪いね、手伝わせて。」

グリューエル「いいえ。弁天丸にいた頃は掃除や洗濯も致しましたから・・・。茉莉香さんが、“海賊船に乗った以上は姫でも使うから”と・・・。」

梨理香「へぇーそうかい。あの子がそんな事を。」



・・・。



「私達は“薔薇の泉”、人工子宮から生まれました。」

「あぁ、ニュースで見たよ。」

「正しき遺伝子による正しき組み合わせによって生まれた血統。それが王家にとって必要な事だと教えられてきました。」

「あんたはそれを変えようとした。」

「世の趨勢(すうせい)は変わっていきます。もう、私がどうのという話ではなくセレニティに住む全ての人が動いています。未来に向かって。」

「国はいいさ、あんたはどうするの・・・?お姫様としての柵(しがらみ)はまだあるだろうけどさ、グリューエルとしてのあんたはどうするの?」




「・・・まだ、わかりません。」


 窓の外でぼぉっと輝く花火を見つめて、その光に映る少女に憧れて・・・。


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グリューエル「楽しかった?」

グリュンヒルデ「今までに無い体験でした。これからもこの地にいると、もっと様々な事を体験できるのですね。」

グリューエル「えぇ、そうね。」

グリュンヒルデ「加藤茉莉香・・・。お姉様があの方の事を気に入った理由、なんとなく解る気がします。」

グリューエル「そう・・・。」


 二人は帰りの車内でそんな話をしていた・・・。



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「あっはっはっは!それは凄いわねー!」

茉莉香「いやほんと、面目ない。」

ミーサ「宇宙広しと言えども、皇女様に辛しを食べさせた人間は、そう滅多にいないわよ」

クーリエ「国際問題にならなくて良かったですね。」

茉莉香「あはは・・・。」


ミーサ「でも楽しそう。私も保健の先生に復帰しようかな。ケイン、あなたもどお?」

ケイン「俺はパス!女子校の教師なんてもうけっこうだよ。」

ミーサ「あら、でも随分慕われてたじゃない?ねぇ、船長」

茉莉香「そうねー。ヨット部は歓迎するんじゃないかな?きっと。」

ケイン「おいおい・・・。」


三代目「いいなぁ・・・」

ケイン「お?やってみる?おい!シュニッツァーもどうだい!?体育教師とか?」

シュニッツァー「いやいい(即答)」






茉莉香「で?今回のお仕事は?」

ミーサ「今回のお仕事は、お役所が表に出すと不味いーだけど民間に任すのはヤバいーまぁ、いつもの感じの荷物運び」


 ぽちっとミーサは、運搬予定の物資のリストを自分の端末から茉莉香の前のディスプレイに表示させた。



茉莉香「えーっと、研究用の電子部品に試作兵器、医療薬品・・・と、あれ?生態コンテナ・・・?“ネコザル”・・・?おサルさん」

ミーサ「何かの実験かしらね?でなければ動物園行きかしら?」

茉莉香「へぇ・・・。そうだ!今度の日曜、グリューエル達と動物園に行こう!」



 宇宙で。そんな事を考えながら・・・。


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梨理香「よし。」


 地上で、何かのメールをどこかへ送信する梨理香。『第二種 大型星間船舶免許試験』?


「楽しみだねぇ・・・!」



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「楽しみだなぁ・・・!」






 そんな13話「茉莉香、招待する」





次回、「茉莉香、募集する」



何を?



お楽しみに。





来週から2クール目突入!早く一週間すぎろ〜〜!