【FGO】幕間の物語~エミヤ・オルタ~「ロスト・バレット」
赤いアレが正義の味方の成れの果てなら、この俺はそのさらにその成れの果て。
正義も悪も見失った、ただ効率的に人を殺す兵器になった掃除屋。
事実として、記録しては自分が誰かはわかってる。
だが、記憶としてそれは失われていく。
客観的な記録だけが残った己の自我に価値はなく、無情に引き金を引く、ロスト・バレット。
誰かを守りたいとか
何かを救いたいとか
自分を鍛えたいだとか
そんな、曖昧な動機で、この身体は動いている。
燃える、命のあった場所。
一言で言えば、地獄。
目を覚ますとエミヤと自分だけだった。どうやってここに来たのか、記憶に無い。
ただ、この場所は、どことなく覚えがある。
周囲には、無差別に動くものを攻撃する死霊系のエネミーが徘徊していた。
襲いかかってくるエネミーに、エミヤは的確に魔力を込めた弾丸を打ち込む。
エネミーを一通り排除して、比較的障害物の少ない道路を歩く。
そういえば、前から気になっていたけど・・・・。
気まずい沈黙が続く。
疲れたようにエミヤは言った。話しながら、物陰に潜む死霊たちに銃弾を打ち込んでいった。
ほとんど霊体化しているのはそのため?
そうだ、俺はこの景色を何度も夢に見ている。
目の前でわずかに魔力が揺らぐ。感じる。敵性反応だ。
瓦礫の中をエミヤの誘導で進む。
そういえば、エミヤはもう1人の赤いアーチャーとは話をしないの?
意味の無い、と彼は言う。
だが、彼はここにいて、自分を守ってくれている。
敵対するものに銃弾を打ち込み排除してくれる。
本人がどう思っているのかは知らないが、意味がない、ことはないと思う。
不思議って何が?
ここは、聖杯がかつてあった・・・・。
真っ黒で口が悪いアイツでもいるかと。
あれ、この声・・・・。同じ・・・・。
エミヤは誰かと話している。その声は、エミヤと同じ声だ。
影が、姿を
あっちも、エミヤ!?
え
・・・・・。
エミヤは、自分の頭に自分で銃を向け、そして撃った。
銃弾は頭を貫通し、エミヤは、即死した。
これは、夢?
気づけばいつものマイルームだった。扉の横のイスにはエミヤがいる。
何も覚えていない。覚えていないけど、悲しかったことだけは覚えている。
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意味はある。
何も聞くな、何も答えない。そう言いつつも自らの素性を明かす男は、やっぱりエミヤ。
皮肉交じりの言い方や、打算的な価値観も、マスターを守るため。
自分を兵器と言いつつも、人の良さをやはり感じてしまう。
最初に同行していたエミヤは、忠告というか、心構えというか、エミヤがオルタとして存在する弱音のように聞こえました。
自分で自覚していて、不要と認識しながらも、それを捨てきれていない不器用さというか、真面目さというか、そういう部分がやっぱりちらっと見えるんですよね。
でも、マスターを夢から脱出させるためには、腫瘍である自分の頭を平気で撃ち抜く。自己の価値観が低いのは、士郎だった頃からそうですが、今回はオルタである彼の弱い部分が見えた話でした。
はああしんどい。