【FGOコミックス】Fate/Grand Order -turas realta-(3) 感想「星のように煌めき、夢のように散っていく」
えー、恒例のコミックス感想なんですが・・・。
この表紙が全てでした。帯の東出さんの言葉が深い。
FGO第一章をプレイしたことのある人ならこの表紙だけでもうこみ上げてくるものがあるのではないでしょうか?私は表紙で泣きました。
前巻まで。
特異点修復のために、中世のフランス、オルレアンにレイシフトしたマスター藤丸立香とマシュ。
そこは、幻想種であるはずのワイバーンが人々を襲う地獄と化していた。
さらにそれを指揮していたのは、邪竜ファブニールに乗った黒いジャンヌ・ダルク。
彼女を止めるべく味方を集める中で、マリー・アントワネット、エリザベート・バートリー、清姫、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、そして、もうひとりの本来のジャンヌ・ダルクと出会う。
どこかのゴーレム使いが言っていたような気がするが、ひとまず、連戦の疲れを癒やすべく休憩をとることに。
よくも悪くも空気を読まないお姫様。まさかの展開に戸惑う一行。
どこかの遠い月世界の誰かを想うエリザと、どこかの草食系ホムンクルスを想うジャンヌ。
そして、恋と言えば清姫。
燃えるような恋の話を聞かされました。
まさかのゆるい展開に思わず読んでいるこちらも緊張感が抜けます。そして、そんなやりとりを通して、「楽しかった」ことを噛みしめる立香と戸惑うマシュの心境が初々しいですね。
竜殺しの英霊、ジークフリートと出会うも彼は既に深手を負い、呪いに侵されていた。
彼を救うべくジークフリートの元へ向かうジャンヌ。
そして、ジャンヌ達を見送るマリー。彼女は、立ち寄った町に現れた敵の英霊を食い止めるために自らその場に残ったのだ。
どんな運命のいたずらか、彼女の前に立ちはだかったのは、かつて彼女の首をそのギロチンで落とした処刑人。シャルル=アンリ・サンソン。
竜の魔女によって狂化され、マリーの首を落とすことに執着する。
本来の彼とはあまりにも違う姿に葛藤しながらも、ジャンヌは戦いを止めるべく、宝具でサンソンにダメージを与える。
しかし、その後すぐに邪竜ファブニールと黒いジャンヌが現れる。
街の人々が逃げる時間を少しでも稼ぐために、かつて国に裏切られた王妃は、それでも国のためにその身を捧げて宝具を放った。
マリーの犠牲もあって、住民の避難は成功。犠牲者はマリー一人だけとなった。
消滅した事実を受け入れきれない立香。マリーと契約していて、十分に魔力を与えられれば、消滅なんかしなかったのかもしれないと、悔み続けます。
ゲームではどういてもテキストベースなので、淡々と描かれていたが、こうしてマンガとして読むと、個々のキャラの表情や言葉が如実に伝わってきます。
戦いは最終局面へ。
黒いジャンヌがいるオルレアンの城を目指す立香たち。そこには、ヴラド三世を初め、バーサーク化した英霊がそれぞれ宝具を展開する。
立ち向かうはジークフリート。
戦う覚悟を問われる中で、藤丸立香は令呪に魔力を通す。
真名解放によるバルムンクの最大出力。ヴラド三世とアタランテは同時に消滅。
しかし、戦いはまだ始まったばかり。
なんという素敵で邪悪な笑みでしょう。
マリーの宝具で重症の傷を負い、それでも使えるコマとしてジルによって無理やり動かされているサンソン。それを止めるため、ついにアマデウスがそのタクトを振りかざす。
サリエリへの皮肉をここで出すのは粋な演出ですね。
彼はそれで戦いをマシュに託し、一人ピアノを演奏します。
それは、マリーに向けた鎮魂歌。いつだって、魂が安息の地に行けるような願いの歌。
そして、それは同じく数々の人を処刑してきたサンソンにとっても救いの音だったのでしょう。
満身創痍のアマデウス。笑顔でマシュを見送ると、そのまま風の中へと消えていった。
やはり、窮地に立つ立香の反応が見どころ。
怖い、逃げたい、諦めたい、という人間なら誰でも持っている素の感情が、むき出しになっていて、彼自身の葛藤が冒険の中で何度もあるのは、ゲームだと実感し辛い部分ですかね。
そして、ここまでマリーとサンソン、アマデウスを1巻まるまる使って掘り下げてくれたのも大変うれしかったです。
正解が見えず、ゴールが果てしなく遠い中で、マリーの言葉、アマデウスの言葉、ジークフリートの言葉、ジャンヌの言葉、そしてマルタのあの表情がそこにあると想うとなんとも言えない気分になります。
それでも覚悟はしなければいけない。英霊は死者だとアマデウスが言ったように、最後は自分の力で向き合わないといけない。
戦いの覚悟を、藤丸立香は得ることができるのでしょうか。
そしてジークフリートが、ヴラドやアタランテを観て、聖杯大戦のことを思い返すような台詞があったのも必見です。