深海 二月 日誌
二月、深海。
暴動と混乱の日々。
石油基地は少しずつ崩れていく。
この時点で生存者は昼のスタッフ、夜のスタッフ合わせて100人ほどになった。
もう、まともな会話すら、何日もしていない。
職員達は比較的安全なエリアである中央管制室で暮らしている。
幸い食料の備蓄は十分にあり、『消滅』にさえ巻き込まれなければ希望はあった。
医療スタッフも数名生き残っており、なんとか壊れかけの精神を皆ギリギリの所で保っていた。
彼女は相変わらずだ。
セラピストとして、献身的に職員に尽くしてくれている。
私も彼女のカウンセリングを受けた。
もう、いつのことだったか記憶が定かではない。
ただ、とても、充実感のようなものはあったと思う。
またスタッフが数人、今度はまとめて『消滅』した。
生き残る術はない。
ただただ、明日の自分の身を案ずるだけだ。
大丈夫、大丈夫。
『五月になれば、カルデアがこの異常に気がつく』
…それが私たちの唯一の、そして最大の希望となった。
深海 三月
生き残った職員のストレスは限界をとうに超えていた。
ふとしたきっかけで、口論から暴力沙汰に発展。さらには頭に血が上って、死者も出たという。
必然にして、治安・風紀を守るための組織と法律、という名目の暴力機構ができあがった。
治安の名の元に、少しでも怪しい素振りをする者は容赦なく粛清された。
もう、ここはダメだ。
生き残り職員達のカルト化。
ほぼ全員が、閉塞状態によって狂乱状態になった。
唯一の癒やしは彼女だ。
菩薩のような慈愛に満ちた日本人。
彼女なしでは、誰もが正気を保てなかった。
ほぼ、全員が彼女に依存していた。
噂話が流れた。
『天体室』が起動されたと。
誰かが起動させたのだ。
それはまずい。気がする。
だけど誰もそれを止めることはしない。
そもそも、『天体室』なんて、本当にあるのかもわからない。
手遅れだ。
カルデアからの救援は届かない。
もう深海に落ちて何ヶ月が経つのか。
もはや彼女にすがるしかナイ。
アレ
カノジョのナマエ・・・・ナンダッケ・・・・・・。
ダレカ。
トメテクレ。
ココハ、深海。
カイヨウ、ユデン、キチ、セラフィック・・・・ス。