【FGO】空の境界/the Garden of Order -Revival-【屋上 明の境界 恩讐彼方】
特異点Fが確認されている島国に現れた小さな揺らぎ。
そこではサーヴァントを招き入れ、帰さないという奇妙な現象が発生していた。
レイシフトした先で出会った「直死の魔眼」を持つ少女。
少女の力を借りて調査に乗り出したマスターたちは果たして真相にたどり着く事ができるのだろうか…?
このマンションを用意した奴、その黒幕がこの先にいる。
そして、恐らくそいつとは既に会っているはずだ。
なら後は、そいつの良からぬ仕事とやらの邪魔をしにいこう。
外に出る。
風が強く吹いていた。
周りの景色をかき消すように。
大きな月と雲が流れるように。
そこにずっと男は立っていた。
男は冷たく言い放つ。決して許さない、という憎しみが込められていた。
ぼんやりと映る虚像。
そして、怪物が実体化する。
それを認めるわけにはいかない。彼女はそう言って前に出た。
式は苛立っていた。
男の言葉は「死」を、「矛盾」を、はらんでいた。
人間に絶望し、世界に絶望し、何もかも失った男が残した恨み言があの黒い影だ。
彼は何者なのか。その答えはわからない。
ただ、彼は魔術王からこのマンションを押し付けられた。
そこにメフィストがサーヴァントを誘い出して混乱させた。
一連の事件の元凶といえば、目の前の怪物だ。
あらゆる「死」を繰り返す無間の概念。
それでも彼女はただまっすぐに、きれいに線をなぞって、そして・・・。
男は屋上から呼び出してそのまま落下した。そして、式も、こちらが止めるのを待ちもせずに屋上の端まで駆け寄った。
ストップ!式!
すっと式が脚を止めた。
でもそれは、自分が命令したから、というより、彼女自身がそこで諦めたようにも見えた。
ザク。
後ろから回した腕で仕込みナイフを男の胸元に突き刺す。
結局、おまえは何者なんだ?
男は消えた。
数々の言葉を残して。
迷宮入りは避けられたね。
これが俺と式の出会い。
もう2年も昔の話だ。
それでも、あの時の戦いは今も記憶に鮮明に残っている。
「どうぞ。」
式の部屋をノックする。2回叩いて返事が返ってきた。
「なんだ?アイスの差し入れか?」
マイルームに入るなり式はそう言うものの、俺はそれとは別のものをその手に握っていた。
「いや、食堂のコーヒーメーカーが壊れちゃってたからさ。式、さっき起きたんでしょ。だから、缶コーヒー買ってきたんだけど」
「あぁーーーそういうこと。」
自分の分と式の分、そのうち片方を式に向けて差し出す。
「そこ、置いておいてくれ。」
式はベッドにゴロンと転がっている。
この部屋はベッド以外は連絡用の端末とアイスを入れている冷蔵庫しかない。
そこ、と言われてもテーブルもないので置く場所に困るんだよな。
「あれーーーー?これは?」
床に置いてある黒猫のコーヒーカップに気づいた。中を見ると飲んだ後がある。
覗きこんだ時、香りで気づいた。
「あぁ、あのマント男の」
「マント男って・・・巌窟王?あぁ、確かに、彼が淹れるコーヒーは美味しいよね」
「でも、ここに来てお前以外からコーヒーもらったのは初めてだったよ」
「どっちが美味しかった?今日は缶コーヒーだけど」
「んー。」
式はこちらを見ずに言った。恐らく、さほど彼女にとっては重要ではないのだろう。
「オレは好きだぜ。缶コーヒー」
なんとなく、缶コーヒーに負けた気がした。