【FGO】空の境界/the Garden of Order -Revival-【ある日の式とアヴェンジャー】
式「なぁ?それ、どうしたんだ?」
ある日のカルデア食堂。
いつもより遅い時間に目を覚ました「両儀式」は、いつもより遅れて食堂に顔を出した。
手慣れた感じでトーストとハムエッグをトレイに乗せ、空いている席に着こうとしたが、お気に入りのコーヒーメーカーには「故障」の紙が貼られていた。
しかし、食堂に仄かに漂うカフェインの香りに気がついていた式は、その香りの元に視線を送った。
小説、と思われる本を片手に、エドモン・ダンテス(巌窟王)が隅の方でコーヒーを啜っていた。
巌窟王「・・・。」
一瞬、式を見た彼は、すぐに視線を本に戻した。答える気は無さそうだった。
式「コーヒーメーカー、お前が壊したのか?」
男は、ページから目を離さない。元々こういう男だという事は遠目で見て知っていた式だったが、ここまで露骨に無視されるのは、癪に障った。
式「そーか。お前が犯人か。なら――――」
式は、テーブルに置かれたコーヒーカップを取り上げた。淹れたての豆の香りが鼻をくすぐる。
式「これが最後の一杯ってわけだ」
これでどうだ、と式は座って本を読み続けるエドモン・ダンテスを見下ろした。
巌窟王「・・・。俺じゃない。俺が来た時にはもう壊れていた。」
式「ん?」
式にしか聞こえないような、小さな声で男は言った。
巌窟王「それは・・・、俺が部屋から持ってきたものだ」
式「なんだ・・・。悪いな、疑っちまって・・・」
コトン、と式はカップをテーブルに戻した。確かに考えてみれば、彼のカップは食堂備え付けのものではない。彼の私物のものなのだろう。
巌窟王「飲みたいのか?」
少し離れた所に置いたトレイの元へ戻ろうと式が足を上げた時、彼が言った。
式「え――?」
巌窟王「少し待て。ちょうど替わりを淹れようと思っていた。」
意外な返答に式は内心戸惑った。こういう事が言える男だとは思っていなかった。
式「いや、いいよ。たまには紅茶とか洒落たやつも悪くないしな・・・」
そう言って、ひらひらと手を振りながら式はその場を去った。
巌窟王「そうか。」
彼は再びページに視線を落とした。
結局、そう言っていた彼は、コーヒーを新しく淹れにはいかず、しばらくそこで本を読み続けていた。
今思えば、この二人がこんなに平穏な日常を過ごすことになろうとは、あの時は思いもしなかっただろう。
それは、彼がまだカルデアに来る前。
そして、彼女がとある場所で出会う前。
あれは2016年、冬と春の間の季節・・・。