【FGO】節分酒宴絵巻 鬼楽百重塔 百階の鬼
それは何処かで起きたいつかの話。
日本の片田舎から確認されたという微小特異点―――。
そこには、本来あるはずのない謎の塔が建築されていた。
建築学的にはありえない高さと形状で、目的も意味も不明なまま
そびえたつその塔には、いったいどのような秘密が隠されて
いるのだろうか?
そして、微小特異点の確認とほぼ同じタイミングで
レイシフトしたことが確認されている角の生えた二人組の企みとは?
ある日、至って普通の人間の武家で、彼女は生まれた。
生まれてすぐ、両親は驚いた。
その額の2本の突起物を。
いくら引っ張っても抜けない。
いくら削っても伸びてくる。
あれは彼女の身体の一部だった。
両親は信じられなかった。
周りは生みの親を疑った。彼らは自分を人間だと主張したが受け入れてはもらえなかった。
なんで、なんであんなものが。
あれではまるで、「角」ではないか。
あれではまるで、「鬼」ではないか。
それは、今も彼女の心の奥でずっと残っていた。
ついに到達した百階。
既に空になったいろいろな酒の器が転がっていて、相当呑んだ後だったのが伺える。
それは、気づいていた。
でも、こちらから聞かなかった。
彼女が話してくれるまで、待とうと思っていた。
ぎゅっと握った拳を胸に当て、息苦しそうに彼女はそう言った。
可能性は低いよね・・・多分・・・・・・。
彼女は、はっとして自分の手を見つめた。
かつて、大切なものを壊してしまったその手を。
酒呑童子が声を荒げた。
驚いた、彼女がこんなに語気を上げるなんて。
酒呑童子・・・・・・。
下総の国で彼女に出会った。
彼女はアーチャー・インフェルノと名乗った。
悪鬼羅刹の七剣豪の一人として、俺と武蔵ちゃんの前に立ちはだかった。
炎に包まれて消えた彼女。大切な想い人に焦がれるような叫びを聞いた。
事件後、カルデアの召喚式に彼女は応じてくれた。
今では、レクリエーションルームのTVゲームに夢中になっている。
召喚に応じて来てくれた、その彼女は・・・・・・
そう、彼女は、応えてくれたんだ。
召喚に応じてくれた、彼女だよ。
もちろん、酒呑童子たちも同じだけどね。
よし、じゃあこの少しやりすぎな酒呑童子をこらしめよう!
彼女は気づいていたのだろう。彼女の悩みを。
だから、こうして、塔を作った。
盗み聞きされないように。
真正面から話をするために。
その言葉は恐らく届いている。
だから、これは百階分の、すごい遠回りな
彼女のお節介だったって。
ごめん、頼んだ。
そう言い残して、彼女は酒呑童子を追って屋根へと登っていった。