亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第十四節 最終歌 屍山血河舞台・厭離穢土(破)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
これは、彼女の記憶。
いや、違う。
これは、彼女の『記録』。
記憶の無い、彼女の『記録』。
思い返すは、差し伸べられた、その手。
突然の化物出現で城下町は大騒ぎだった。
元は人だった怪物か・・・。
城に近い方から怪物に・・・・清姫が無事だといいけど・・・。
さっきからしっかり手を繋いでますから大丈夫ですよ!
あ、本当だ。あれは、、、
流石はおたまさん、心強い。こんな時でもしっかるしてる!
まぁ、そこそこ腕は立つもので、ここはちょっと協力していただきたいのです。
それは良かった!
取り残された人を助けてたんだね。流石はおたまさん。
え、清姫に何か?
おぬいちゃん、行ってきます。
おたまさん、本当にありがとう!
武蔵ちゃん、嬉しそうだね。
え、あ、あれ?
巌窟王!?
目にした夢の全て・・・。
それってガソリ・・・・。
(ボクはここではあなたに名乗ってないんだけどね。)
厭離穢土城!?
ええとですね。要約すると、、、
なんだそれ!説明になってない!
清姫が囚われている!?
平行世界を侵す!?多重呪詛!?
ありがとう!事態のヤバさがわかった!清姫を助けて、この時代も下総国も全部守る!
化物だらけの城下町を突破して、一行は変貌した士気城に向かった。
ひとつの巨大な生き物みたいだ・・・・。ここに妖術師と清姫が・・・・。
連戦になるかはわからないけど、残るは妖術師と英霊剣豪が二騎。
いざとなったら担ぎますとも!
敵陣を切り抜けて、士気場内に入る。
場内は、以前来て見た風景から大きく変貌していた。
まるで、SF映画のような、趣味の悪い植物の装飾がそこかしこに巡っていて、とても人のいるような場所ではなかった。
早く清姫を見つけよう。
いや、これは・・・。
ぼそりと、でも全員に聞こえる声で段蔵ちゃんは皆を呼び止めた。
―――――――――。武蔵ちゃん。
(村正さん大物すぎる)
まぁ、おぬいちゃんがさらわれた時ぐらいかな。
もちろん、そのとおり!()
村正殿・・・・確かに・・・・そうなんですけどぉ・・・・。
穢土城の起動?今はまだ未起動の状態ってこと・・・?
なるほど。それで巌窟王・・・。
この声は、竹林で聞いた英霊剣豪の一騎!
ーーーーーーかちん。
こいつが、キャスター・リンボ!
おい、武蔵ちゃん、武蔵ちゃんや。
おぉ、武蔵ちゃんの直感スキル。
あ、これは笑って殺気を放ってるやつだ。
ガギィン!
笑顔でにこっと笑った次の瞬間。キャスター・リンボの足元まで一足で近づいた武蔵ちゃんは素早く刀を振り斬った。
しかし、その一刀は見えない壁に阻まれた。
態勢を崩した武蔵ちゃんに、段蔵のクナイがまっすぐに飛ぶ。
それを小太郎は、同じクナイで全て叩き落とした。
既に、小太郎は段蔵を、三蔵ちゃんはキャスター・リンボから視線を外さないように陣形を組んでいた。
段蔵が今まで聞いたことの無いぐらい動揺して声を上げた。
段蔵が構える。
まるで、言葉と体がバラバラに動いているようだ。
キャスター・リンボは怪しげに両腕を振るって謎の言葉を唱える。
どうやら、段蔵を術で動かしているようだ。
段蔵・・・ちゃん!
それは宝具「絡繰忍法・呑牛」
高速で回転した両腕から繰り出される真空のカマイタチ。
実態の無い斬撃が、いくつも折り重なって、全てを切り刻む。
ギィン。
ま、まさか
爆発音と閃光。
そして、ものすごい衝撃で壁に体が叩きつけられる。
武蔵ちゃん!右眼が・・・・!!
直撃を受けた武蔵ちゃんは右眼から血を流していた。
爆発の中心、木と鉄の体が崩れかけている段蔵ちゃんが今にも倒れそうにそこに立っていた。
既に、その体は、ボロボロだ。
え―――――――!!
小太郎が段蔵に歩み寄る。
その間、落ちていた装飾品を紐で縛って、即席で武蔵ちゃんの右眼の眼帯を作った。これなら止血代わりにもなる。
でも、段蔵を助けられなかった・・・・・。
だから、段蔵を信じてあげたかった・・・。
おそらく、爆発には癒えない傷を付ける呪いを付けていたってことだろう。
キャスター・リンボが言葉を続ける前に、武蔵の一閃が彼の首を狙う。
ギィン、とまた結界に弾かれてしまう。
指パッチンで化物を出現させるキャスター・リンボ。
悔しいが、魔術や呪詛でこいつには勝てない。
段蔵の手から溢れる光。
それが、小太郎に移り、小太郎を優しく包む。
撤退はできない。なんとかしてキャスター・リンボを叩く。
一瞬でも、隙きを作れれば・・・。
小太郎!?その姿は・・・!
よし小太郎、援護する!そのまま突破しよう!
小太郎の忍術と武蔵ちゃんの剣撃。
特に、今まで不足していた魔力がここに来てフル充電されたからか、小太郎の動きが神がかっていた。
風に乗り、音もなく、敵を翻弄し、隙きを作る。
そして、小太郎の動きに合わせて、最短距離で敵を切り倒していく武蔵ちゃん。
まずい!武蔵ちゃんの対魔力でも、あいつの呪術は防げない!
妖術師も?こいつが、マスターである妖術師に、呪術を施した?
うるせえ!カルデアを舐めるな・・・・・!!
今ならできる。ここに来てずっと使えなかった礼装・・・。だけど、「あの時」から、魔力が少しずつ満たされていくのがわかる。
状態異常解除!
礼装「イシスの雨!!!」
ズバァン。
今度は結界ごと、武蔵の剣がキャスター・リンボを切り抜いた。
キャスター・リンボが姿を変える。
巨大な死霊。いや、死神の姿に。
勝負は一瞬。
しかし、覚醒した武蔵ちゃんはその一刀を持って、キャスター・リンボ(美しき肉食獣)を両断した。
小太郎のクナイがキャスター・リンボの額に突き刺さる。
ぐらりと、リンボの体が揺れた。
・・・・。
キャスター突破。
残るはセイバー・エンピレオ。そして、妖術師!