亜種特異lll [ 屍山血河舞台 下総国 ] 英霊剣豪七番勝負 【第四節 第二歌 インフェルノ(序)】
カルデアのマスターの意識は、突如として亜種平行世界へと奪われた。
暗闇と魔性が忍び寄る中世の日本に、殺戮の輩に貶められた七騎の「英霊剣豪」が刃向く――
かつての夢で出会った「宮本武蔵」とともに、赤き月の悪夢を斬り祓え。
悪鬼羅刹の七騎が嘲笑う
──見よ、血染めの月が太陽を食い尽くす
彼女は既に狂っていた。
辛くなかったといえば嘘になる。
後悔していないと言えば嘘になる。
あぁ、憎い。
辛かったのは何か。
何を後悔していたのか。
はて、なんだったか。
あぁ、きっと憎しみのあまり忘れてしまったのでしょうね。
あぁ、熱い熱い。炎が、熱い。
彼女は既に狂っていた。
あぁ、ゲームでよく見た事がある。
千子村正。見た目はどうみても20代の青年だが、その言動は熟練した達人の風格を感じる。というか、厳しいおじいちゃんだな。
ごちそうさまでした。
もぐもぐするおぬいちゃんを背中に3人は鍛冶場へ場所を移した。
恐らくおぬいちゃんには聞かせたくないんだろう。
元の村正?元々は体のあった英霊だったってこと?
けっこう大事な気がするが、本人はどうでもよさそうな言い方だったので、余り深く追求してもしょうがないだろう。
魔術工房?セイバークラスだけど、陣地作成スキル持ちってことかな?
ってことはここは魔術的に結界みたいなモノになっている、とか?
神――――――。
聖杯が喚び出した抑止のサーヴァントか。
黒い武者とか幽霊とか、魔物ばっかりだった。
そうだね、こういう鍛冶場というか、蔵?みたいなところが似合う。気がする。
あぁ、このままにしてはおけない。"正義の味方じゃない"けど、元凶を突き止めてみせる。
親玉・・・・。英霊剣豪。
匹・・・・。英雄の姿をしていたが、武蔵ちゃんは既にあれを人と見てないのか。
サーヴァントなら、たった一人でもやりかねない・・・。
やっぱり放っておけない。
けど、何をするにも情報が足りない。。
どうやら村正と武蔵ちゃんの世界線は同じみたい。いや、そもそもこの日本が根本的におかしいのか?
特異点だから・・・あるいは、誰かが聖杯を使ったから?
善は急げ、とりあえず荷物をまとめて庵を出た。
あぜ道を田助を背負ってくるくる周りながら歩くおぬいちゃん。
しかし、二人共連れてきちゃったけどいいのかな。
ん?
あれ、空の様子が?
言ったそばからこれだ。誰かが監視していてタイミングでも伺っているのかと思うぐらいのタイミングだなぁ。
一度に複数体の幽霊と黒武者が出現する。
おぬいちゃんを後ろにやって、武蔵ちゃんと前に出る。
おぬいちゃんにはなるべく見えてないようにしつつ、武蔵ちゃんは容赦なく怪異を切りつけた。
黒武者はたまに珍しい勾玉を落とすことがあった。これって、カルデアで使えそう・・・。
空が戻った。ただ、気づいたことがある。
今回の月は赤くなかった。つまり、赤い月が出ない時は英霊剣豪も出てこない?
こうして、道中の戦闘を何度か繰り返し、おぬいちゃんと共に城下町を目指した。